もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(1) (ジャンプコミッ.../椿 あす

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”このマンガ版『もしドラ』が完成した暁には、「このマンガがすごい!」を初めとする
マンガ賞の数々を総なめにすることは必定であり、もしそうならない場合には、
このブログにおいてこの作品に賞を与えなかった人々を、可能な限りとことんまで糾弾していくことを、
ここにあらかじめお約束しておきます。”岩崎夏海先日、古本屋にあったので手にとってみた。
著者である岩崎夏海が上記のように喚いていたようだが、まあそれは置いといて(笑)漫画の感想だが
アニメよりも映画よりも、そして何より、間違いなく原作よりは面白いといえる。岩崎夏海の説明文的文章に、詩的な絵を加えてやわらかく物語が進むようになっている。
そして、ドラッカーの要素が邪魔になっていない。
原作では語られなかった背景、人物設定が織り込まれていることによって、
物語として、より分かりやすくなっている。
原作での一番の批判・問題点が、主人公みなみが書店員に「マネジメント」を薦められる場面だ。これには私もあるわけないだろと思ったし、まあこれがないと話が進まないから仕方ねぇか・・・
といった感じだったのだが。
これは多くの人が感じる疑問点だったようだ(当たり前か)
岩崎夏海は語る。
ぼくは書店員について人物設定から背景、薦める理由までこと細かに考えていたにもかかわらず、
小説の中では一切描かず、単にその事実のみを記すにとどめた。
それはもちろん紙幅の関係もあるのだが、
それ以上に、そうした方が小説として面白くなるということが、分かっていたからでなのである。
(中略)ところが小説発表後、予想外のことが起こった。
なんと、そのシーンを面白い面白くない以前に、
上手に理解できない人が、少数ではあるが現れたのである。
(中略)そうしてぼくは、これをゆゆしき問題であると受け取った。本を読むのが下手ということは、
何よりその人たちにとって不利益である。非常にもったいない。あとちょっと上手くなれば、
あるいは想像力を働かすコツさえ覚えれば、
彼らももっと面白くこのシーンを読むことができたはずなのに、
それができないというのは、端的にいって可哀想である。
(中略)そこでぼくは、小説では表現しなかった人物や設定、背景やプロットというものを
コミカライズにあたって、あらためて表現することに決めたのだ。・・・・はっきり言って、か・な・り頭にきた。だったら最初から丁寧に書きゃいいんだよ!
てめえの作文みてぇな文章なんざ小説じゃねぇよ!背景なんざ見えねぇよ!
読者が可哀想だなんて、おめえに言われる筋合いはねぇんだよ!!
その前におまえの文章力が問題だってなんで分かんねんだよ!!!マンガでは、その書店員(学生)が大学で経営学の講義を受けており、
そこでもドラッカーについて触れている、という描写があるのだ。その講義においても「顧客とは何か」「事業とは何か」の説明がある。
そこで本の定義についてユニークな視点が語られる。
1年間で一番本が売れるのは12/23だという。それは天皇誕生日で祝日であることと、
クリスマスイブ前日で、プレゼントとして本を買う人が多くいるからだと。
つまり本は読むためだけのものではなく、贈り物としての一面もあるのだと。
「われわれの事業とは何か」「そこには分かりきった答えが正しいことはほとんどない」
というドラッカーの言葉の意味がひとつ語られる。
これは面白いと思った。私は本をプレゼントに贈ったことはないけれど。
前提としてその講義があって、書店員は主人公のみなみに尋ねられたとき
「マネジメント」を薦めるというわけだ。
原作よりも(まだ)入りやすい流れだと思う。
だったら買わせるんじゃなくて、プレゼントにしろよとか、色々言いたくなるが(笑)岩崎夏海が言うには原作ではあえてこの背景を外すことによって
本は面白くなるのが分かっていたのだが、何故分からないんだ。ということだが、
原作ではどう描かれているかと言うと野球部のマネージャーになって、みなみがまず初めにしたことは、
「マネージャー」という言葉の意味を調べることだった。
それがどういう意味かということさえ、彼女はよく知らなかったのだ。
そこで、家にあった広辞苑を引いてみた。すると、そこにはこうあった。
マネージャー【manager】 支配人。経営者。管理人。監督。
また、すぐ隣にはこんな言葉も載っていた。
マネージメント【management】管理。処理。経営。
これを読んで、みなみは「マネージャー」というものを「管理や経営をする人
---つまりマネージメントをする人」だと理解した。
次に、今度は近所の大型書店に出かけていった。
そこで、マネージャー、あるいはマネージメントについて、
なにか具体的に書かれている本を見つけようとしたのだ。
本屋さんまでやってきた彼女は、店員にこう尋ねた。
「何か『マネージャー』、あるいは『マネージメント』に関する本はありますか?」
するとその若い女性店員は、一旦店の奥に引っ込むと、すぐに一冊の本を手にして戻ってきた。
それを差し出しながら、彼女はこう言った。
「これなんかいかがでしょうか?
これは『マネジャー』あるいは『マネジメント』について書かれた本の中で、
最も有名なものです。世界で一番読まれた本ですね。
もう三十年以上も前に書かれたものなんですけど、今でも売れ続けているロングセラーです。
これはその要点を抜き出した『エッセンシャル版』です。
『完全版』というのもあるんですけど、始めての方にはこちらをお薦めしています。・・・これだけ。この前後には書店員は登場していないし、みなみは本を買う際のことは一切回想していない。
・・・で?この文章のどこに背景を匂わす描写があると?行間は?表現は?ここに書かれているのは「事実」だけだ。
これだけで「読者は分かっていない」と八つ当たりするのは、
著者の傲慢以外の何者でもないと思う。この他にも
「ゆうきの死は意思を持った自殺で、実はみなみへの復讐だった」とか
「決勝でみなみの貢献無しで勝てたのは、マネジメントの成果だ」とか言ってるのだが。
悪いけど、岩崎夏海の説明文的文章の中には、そういう表現・描写・行間が一切ないのだ。
読者の読解力の問題ではない。著者の筆力の問題なのだ、これは。しかし困った人間だ。
要は
「俺の書いたものは世界最高だ。何でそれを認めようとしない!」といったところだろう。
傲慢な碇シンジとしか思えない。先月だったか「ようこそ先輩」というNHKの番組の再放送で岩崎夏海が出ており、
子供たちに小説の読み方を語っていたが、最初に「まず自分を捨てろ」と述べていた。
頭を空っぽにして、先入観を持たずに読むことが大事なのだと。
それはイコール「何の疑問を持たずに、そのまま許容しろ」ということなのか?
小説じゃなくて、経典の読み方の間違いじゃないの?
つまり「信者は黙って教祖の言うことを聞け」と同義語だろう。けちをつけると止まらないのだが、岩崎夏海はblogではなく作品で勝負して欲しいし、
「もしドラ」の次に何を書くかを是非みてみたい。どっちみち次の作品で「もしドラ」以上のものを出さなければ淘汰されるだけなのだが。
まあこの漫画版が世界最高の漫画だとは、決して思わないが、
原作より面白いのは確かだと思う。前にblogで原作について書いたが「マネジメントを分かりやすく解説したビジネス本としては秀逸だが、
野球小説・野球マンガとしては非常に稚拙である」というのが私の感想だ。
仮に私だったら、以前にmixiの記事でも書いたことがあったけど、
大学での講義をメインにする。
途中で短編のように野球マンガを混ぜるとかして、ダイナミズムを少なくする。
あくまで書店員の大学生が「もしマネージャーがドラッカーを読んだら」
という妄想・発想で、論文じみたものを書いていく、という流れはどうだろう。
そして、絶対にゆうきは殺さない。
あまりにもベタな展開だし安易すぎる。人の死はドラマを盛り上げるのに最も有効だが、
逆に読者が感情移入しすぎるし、ドラマ自体の質が落ちる、とはよく言われていることだからだ。
私だったらゆうきは殺さず、決勝戦では危篤状態にする(まあこれも十分ベタだけど)。
で、決勝戦は善戦するが負ける。
だがゆうきは回復し、部員とともに大きな達成感を獲得して物語は終わる。
あくまで私だったら、の話ですが。・・・・ひょっとして。いつの間にか、私は岩崎夏海の炎上ビジネスに、まんまとひっかかってたのか?!ちなみに「妄想だけど、もし野球映画だったら」と言うことなら、町山智浩氏の妄想が最高!!
というより結局「がんばれベアーズ」や「メジャーリーグ」の方が断然面白いという話なのだが。
■町山さんのもしドラ批評聞いてみた http://anond.hatelabo.jp/20111209225856もしドラ 書店員とのやりとり 全文 http://anond.hatelabo.jp/20110813113947