先日、国立新美術館で開催されている
「森英恵展」へ行ってきました。
この記事では、会場の雰囲気や
作品の素晴らしさを感じてもらいつつ、
意外な気づきについて綴ってみます。
会場で展示を見ている時は、葛飾北斎。
この記事を書いている途中には、
大谷翔平選手、そして藤井風さんの
名前が浮かんできたのです。
分野はまったく違うのに、
どこか共通するものを感じたのでした。
一言で言えば、
日本の素晴らしさを海外に
伝えた人たちであること。
そしてその方たちに共通する
在り方も感じられた
華やかで美しいだけでない、
奥深い展示でした。
展示会場には、森英恵さんが手掛けた
数々の作品が並んでいました。
繊細な刺繍、美しい色彩、優雅なシルエット。
どの作品からも、日本ならではの
美意識と職人技が感じられました。
展示のパネルによると、
アメリカの視察で、日本文化が
理解されていないことに憤慨した、
とありました。
ファッションや洋服の本場は西洋。
ある意味、日本はそこから少し遅れた
立場だったのだと思います。
そこで森さんが考えたのは、
アイデンティティである日本を
どう表現するか?だったそう。
そこで日本の文様や美術を学び直したり、
和服地の産地を訪ねたとのことでした。
西陣織の帯地のドレス
これはエレガントなファッションで
良く使われる素材を
和柄で仕立たドレスです。
着物をアレンジしたような
デザインもありますね。
繊細な柄もありつつ、
大胆な柄も、また日本の特徴でしょう。
欧米の方にとって、森さんのファッションは
オリエンタルな不思議な魅力に
映ったのだと思います。
そして著名な方が彼女の顧客に。
顧客には、大統領夫人や女優の方の
名前もありました。
このドレスは今から50年以上も前に、
豪華客船のディナーで
顧客が着用したドレス。
このエピソードを知り、
私は葛飾北斎のことを思い出しました。
かつてモネやゴッホをはじめとする
多くの芸術家たちは、
日本の浮世絵に魅了されました。
旧帝国ホテルを設計した
フランク・ロイド・ライトも
熱心な浮世絵収集家です。
北斎が浮世絵を通して日本の美を世界へ届けたように、
森英恵さんもファッションという形で
日本の美意識を世界へ届けた人、
そんなイメージが私の中に強く残りました。
世界の著名人たちが彼女の服を纏い、
日本の美しさや繊細さに触れていく。
それが日本への憧れとなり、
一般の方にも広く伝わる。
藍染のような素朴さも
日本の一つの側面ですよね。
そして展示を見進めるうちに、
私は改めて森英恵さんは、
ファッションの枠を超え、
日本の美しさや価値観を
世界へ発信した文化人であり、
プロデューサーだと思いました。
特に印象的だったのは、
その活動の幅広さ。
私は学生時代に洋裁を学んでいたこともあり、
ファッション番組や雑誌の「流行通信」に
注目してました。
その流行通信に森英恵さんが関わっていたと知り、
メディアを立ち上げようという発想に
大きな驚きでした。
また服を作るだけではなく、
新しい価値観やライフスタイルそのものを発信。
蝶柄の食器やタオルなどの
日常雑貨を目にした方もいることでしょう。
蝶柄の洗濯機があったのには、
「家電まで蝶柄なのね」と斬新さを感じました。
また、展示を見終えて
私の中に最も強く残ったのは、
彼女の地道さと、ひたむきさです。
これは映画衣装です。
顧客の服を仕立てながら、
月に5~6本の映画の衣装を提供したというのだから、
人間技とは思えません。
当時は睡眠時間が4時間だったそうです。
洋裁の工程を一応は知っているので、
ただただ驚くばかりです。
更に驚いたのは、洋裁学校に通っていたのが、
お子さんの出産を挟んだ時期だったそうです。
仕事も絶対に忙しいはずなのに、
母として、やさしい眼差しで
子供と接するお写真もありました。
森さんだけ、1日が48時間位あったのは?
と不思議に思った位です。
パネルでこれらを知り、
森さんには体力・気力・技術に
恵まれていたのは間違いないでしょう。
これは、仕上がりはとても綺麗で、
顧客の要望をくみ取っていたとの
記述から、そう確信しました。
カツカツの状態では、
縫い目や仕上がりも劣るだろうし、
痒いところに手が届くような配慮だって、
ムズカシイはずです。
そんなことを感じたら、ふと
「これって、大谷翔平選手や藤井風さんに
似ているかも。」と思ったのです。
好きなことに没頭した結果、
既存の価値観とは異なる、
圧倒的な存在感と影響を及ぼしていた、と。
そして海外のファンは、
彼らを通して日本に興味を持ったり、
憧れたりしている。
才能はもちろん、
肉体的にも恵まれている。
大きく逞しい体と、美しい容姿。
でも、彼らがスゴイのは、
有名になる何年も前から、
地道に地味なことを続けている。
そして礼儀正しくて、とても謙虚である。
これが森英恵さんとも
一致しているような気がしました。
(ご家族のインタビューで、
森英恵さんが、いかに謙虚で
ご自分を律していたのか、
また普通の暮らしを
大切にしていたかを知りました。)
もちろん森英恵さんには、
卓越した才能や感性、
先見性があったと思います。
けれど、それだけではあれほど大きな
存在にはなれなかった気がします。
1つ1つを丁寧に積み重ねて、
ステップアップしていった。
それが、新宿の洋品店「ひよしや」さんから、
東洋人初のオートクチュールデザイナーへ。
どんなに高い山も、
着実な積み重ねなのだと、
今回もつくずく思いました。
(スゴイ方を観察していると、
ほぼ毎回、同じことを思うのです)
人を偉大にするのは、才能だけでない。
人としての誠実さや一貫性。
そこに人としてのチャーミングさや
ユーモアがあったら、
最強なのだろうな…
とファッション展とはかけ離れた
着地点に落ち着いたのは、
私自身、意外でした。
そして96歳まで生きらた凛々しい生き様が
本当に素敵でした。
考えてみたら、葛飾北斎も90歳まで生きたのだとか。
北斎さんは、晩年になって、
「これからもっと技術が高まる」的なお話をしていたそう。
きっと、お二人とも、少年、少女のようなの
瑞々しい感性と目の輝きで過ごされたのでしょうね。
体力も才能も、彼らのようにはいかない私。
でも、その心意気や日々の過ごし方は、
わずかでも見習うことはできるかな?
そうありたいな、と思った日でした。
藍染のような素朴なデザインの服もありました。
なんだかホッコリしますね。
【展示会メモ】
私は会場をかなり寒く感じました。
訪れたのが、季節の変わり目だったこともあり、
羽織るものを持っていくと安心かもしれません。
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