第24回「透明なボタン?」-タッチパネルの鍵を握るインジウム
あれれ?銀行のATMを操作している時に、思ってもいなかった画面になってしまったことはないでしょうか?洋服の袖などがタッチパネルに触れて反応してしまった結果と思われますが、最近、銀行のATMはすっかりタッチパネルになっていますね。今回はそんなタッチパネルのお話しです。
タッチパネルの一番のメリットは複雑なメニューを一つの画面で表現してボタンの数を減らせることです。例えば銀行のATMだと、振込、入金、出金など様々な機能がありますが、それぞれにボタンを用意していては数が多すぎてどれを押していいのか分からなくなってしまいます。その点、タッチパネルで画面上に表示したボタンを押して操作が進むようにすれば、複数のボタンを設けずにすみます。画面がボタンを兼ねるところがポイントですね。
ATMの中にはボタンが全くなく、タッチパネルだけでの操作となっているものもありますが、一方でボタンが独立して付いているものもあります。例えばコンビニに設置されているATMは場所の制約からタッチパネルが操作者の正面に向いていることが多く、暗証番号等の入力操作が盗み見されがちです。そのため、暗証番号等の入力は独立したボタンで行うものが設置されているのだそうです。
また、ゆうちょ銀行では全国全てのATMにボタンが設置してあるそうですが、これはパネル操作に不慣れな方のためだけでなく視覚障害者への配慮とのこと。確かに暗証番号を人に伝えないと操作ができないのでは困りますね。セブン銀行も全ATMでインターホンのボタン操作で取引ができるようになっているとのことです[1]。
さて、タッチパネルは最近、様々なガジェットにも搭載されていますね。例えば任天堂のDSというゲーム機は画面をペン状のスタイラスで操作します。また、日本でも7月に発売が開始されたAppleのiPhoneという携帯電話は、ガラスのスクリーンを指でなぞって操作します。
これらのタッチパネルですが、その実現にはITOという材料が鍵を握っていることをご存知でしょうか。一般にアイティーオーと発音されますが、英語でのIndium Tin Oxide の略称です。日本語でいうと酸化インジウムスズとなります。
一般に電気を通す材料は金属で不透明です。これに対してITOは電気を通すのに透明なのです。このような材料は珍しく、タッチパネルや液晶ディスプレイ、太陽電池等、光と電気が関与するデバイスで重宝されています。
ITOを構成するインジウムという金属材料はいわゆるレアメタルです。鉄、銅やアルミニウムのように昔から大量に使われてきた金属をコモンメタルと呼ぶのに対し、流通量・使用量が少なく希少な金属のことをレアメタルといいます。インジウムは亜鉛を精錬する際に副産物として得られますが、需要の急増に対して供給が安定的とはいえず、近年、その供給動向に注目が集まりつつあります。
インジウムは以前は日本にある鉱山が世界で最大の供給源でした。亜鉛・鉛を採掘していた北海道の豊羽鉱山がその鉱山ですが、2006年に操業が休止され採掘されなくなりました[2]。まだ埋蔵量はあるようですが、地熱温度の上昇により採掘に使うダイナマイトが仕掛けられる場所が限られてきて、操業を継続しうる鉱量を確保できなくなったことが閉山の原因だそうです。
日本からの供給が止まった後は中国が世界最大のインジウム輸出国となり、日本が最大の輸入国となっています。日本は液晶ディスプレイやタッチパネルで世界的にも大きなシェアを占めていますが、今後、中国が政策的にインジウムの輸出価格を切り上げたりすると、これらの生産にも世界的に影響が出る可能性があるのだとか。これはもう、産業の行方を左右する資源問題ですね。
タッチパネルのITO膜は透明なので目をこらしても見えないのですが、そんな目には見えない薄い膜が、実はタッチパネルの重要な鍵を握っているのですね。
<関連リンク等>
[1]セブン銀行「視覚障がいを持つお客さま向けATMサービスを開始」
http://www.sevenbank.co.jp/about/news/2007/112201.html
[2]新日鉱ホールディングス他「豊羽鉱山株式会社の操業休止について」
http://www.shinnikko-hd.co.jp/newsreleases/2004/20050210_3.pdf
○ 関連キーワード:透明導電膜、In
タッチパネルの一番のメリットは複雑なメニューを一つの画面で表現してボタンの数を減らせることです。例えば銀行のATMだと、振込、入金、出金など様々な機能がありますが、それぞれにボタンを用意していては数が多すぎてどれを押していいのか分からなくなってしまいます。その点、タッチパネルで画面上に表示したボタンを押して操作が進むようにすれば、複数のボタンを設けずにすみます。画面がボタンを兼ねるところがポイントですね。
ATMの中にはボタンが全くなく、タッチパネルだけでの操作となっているものもありますが、一方でボタンが独立して付いているものもあります。例えばコンビニに設置されているATMは場所の制約からタッチパネルが操作者の正面に向いていることが多く、暗証番号等の入力操作が盗み見されがちです。そのため、暗証番号等の入力は独立したボタンで行うものが設置されているのだそうです。
また、ゆうちょ銀行では全国全てのATMにボタンが設置してあるそうですが、これはパネル操作に不慣れな方のためだけでなく視覚障害者への配慮とのこと。確かに暗証番号を人に伝えないと操作ができないのでは困りますね。セブン銀行も全ATMでインターホンのボタン操作で取引ができるようになっているとのことです[1]。
さて、タッチパネルは最近、様々なガジェットにも搭載されていますね。例えば任天堂のDSというゲーム機は画面をペン状のスタイラスで操作します。また、日本でも7月に発売が開始されたAppleのiPhoneという携帯電話は、ガラスのスクリーンを指でなぞって操作します。
これらのタッチパネルですが、その実現にはITOという材料が鍵を握っていることをご存知でしょうか。一般にアイティーオーと発音されますが、英語でのIndium Tin Oxide の略称です。日本語でいうと酸化インジウムスズとなります。
一般に電気を通す材料は金属で不透明です。これに対してITOは電気を通すのに透明なのです。このような材料は珍しく、タッチパネルや液晶ディスプレイ、太陽電池等、光と電気が関与するデバイスで重宝されています。
ITOを構成するインジウムという金属材料はいわゆるレアメタルです。鉄、銅やアルミニウムのように昔から大量に使われてきた金属をコモンメタルと呼ぶのに対し、流通量・使用量が少なく希少な金属のことをレアメタルといいます。インジウムは亜鉛を精錬する際に副産物として得られますが、需要の急増に対して供給が安定的とはいえず、近年、その供給動向に注目が集まりつつあります。
インジウムは以前は日本にある鉱山が世界で最大の供給源でした。亜鉛・鉛を採掘していた北海道の豊羽鉱山がその鉱山ですが、2006年に操業が休止され採掘されなくなりました[2]。まだ埋蔵量はあるようですが、地熱温度の上昇により採掘に使うダイナマイトが仕掛けられる場所が限られてきて、操業を継続しうる鉱量を確保できなくなったことが閉山の原因だそうです。
日本からの供給が止まった後は中国が世界最大のインジウム輸出国となり、日本が最大の輸入国となっています。日本は液晶ディスプレイやタッチパネルで世界的にも大きなシェアを占めていますが、今後、中国が政策的にインジウムの輸出価格を切り上げたりすると、これらの生産にも世界的に影響が出る可能性があるのだとか。これはもう、産業の行方を左右する資源問題ですね。
タッチパネルのITO膜は透明なので目をこらしても見えないのですが、そんな目には見えない薄い膜が、実はタッチパネルの重要な鍵を握っているのですね。
<関連リンク等>
[1]セブン銀行「視覚障がいを持つお客さま向けATMサービスを開始」
http://www.sevenbank.co.jp/about/news/2007/112201.html
[2]新日鉱ホールディングス他「豊羽鉱山株式会社の操業休止について」
http://www.shinnikko-hd.co.jp/newsreleases/2004/20050210_3.pdf
○ 関連キーワード:透明導電膜、In