クレイン・テクノロジー|技術をもっと、分かりやすく。|畑谷成郎 -19ページ目

第07回「無臭を嗅ぎとる」-半導体ガスセンサによる可燃性ガスの検知

給湯や暖房など日々の生活にガスは欠かせません。ガスが原因の事故はガス器具・設備の改善等により約20年で大幅に減少しましたが[1]、今回は、その減少に寄与しているガス漏れ警報器についてです。

人間が空気中の化学物質の存在を感知するのは嗅覚によってですが、配管で供給される都市ガスも、ボンベで供給されるLPガスも、主成分の可燃性ガス[2,3] は人間にとって無臭であり、嗅覚でその存在を知ることはできません。

では、ガス特有の「ガス臭さ」は何なのでしょうか。これは可燃性ガスの漏洩に気づくことができるよう、省令[4]の定めによってガス事業者が無臭のガスに添加した付臭剤のニオイなのです。

付臭剤の種類はガス会社によって多少違いますが、東京ガスの場合「ターシャリーブチルメルカプタン」や「ジメチルサルファイド」という化学物質を添加し玉ネギの腐ったような、あるいはニンニクのような臭いを付けています[5]。

人間が嗅覚では感じることのできない可燃性ガスですが、ガス漏れ警報器はどうやって検知しているのでしょう?ガス漏れ警報器の多くは金属酸化物半導体ガスセンサを使っています。可燃性ガスのセンサに使われる代表的な金属酸化物は酸化スズです。

空気中で400℃程度に加熱した酸化スズの表面には酸素が吸着しますが、吸着した酸素は、酸化スズの電気伝導に必要な電子を捕まえてしまい、電気が流れにくい状態になります。

この吸着酸素に可燃性ガスが接触すると、可燃性ガスと吸着酸素が結合し、酸化スズの表面から吸着酸素が取り除かれます。トラップされていた電子がこのことで解放され動けるようになると、酸化スズに電気が流れやすくなります。

この電気の流れやすさの変化(電気抵抗の変化)を検出することで、可燃性ガスの存在とその濃度を突きとめる、というのが金属酸化物半導体ガスセンサの原理です[6,7]。

このような原理に基づくため、半導体ガスセンサは付臭の有無に関わらず可燃性ガスを検知できます。温泉設備等で発生する無臭のメタンガスは爆発事故の原因にもなり危険ですが、付臭されておらず人間の鼻では嗅ぎとれないメタンガスも、半導体ガスセンサならば検知することができるのです。

<関連リンク等>
[1]原子力安全・保安院「ガスによる事故発生状況」
http://www.nisa.meti.go.jp/9_citygas/jiko.html
[2]東京ガス「都市ガスの成分」
http://home.tokyo-gas.co.jp/userguide/userguide_06.html
[3]LPガス安全委員会「LPガスってどんなエネルギー?」
http://www.lpg.or.jp/about_lpg/about_lpg01.html
[4]ガス工作物の技術上の基準を定める省令 第二十二条
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12F03801000111.html
[5]東京ガス「きょうからガス博士/都市ガスができるまで」
http://www.tokyo-gas.co.jp/ghakase/dr10/dr10.html
[6]宮山勝「セラミックスのガスセンサ特性」
http://www.hst.titech.ac.jp/~meb/Ceramics/gassensor/gassensor.html
[7]フィガロ技研「ガスセンサーとは?」
http://www.figaro.co.jp/tec2.html
○ 関連キーワード:液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、一酸化炭素