当工場は先々週ぐらいから、目下年度末の様相を呈してご入庫が満員御礼している上に、今週は新車の納車も二台ほどあり、いまだ、納車ができていないお車と、商談の完了したお車と、いまだ探し中の中古車のお車と、とありまして、今から始業の当工場ですが、電話のならない時間帯に、効率を上げてまいりたいと思います。
エアツールがまだサブい!!
次回以降、3月中はブログがちょっと手抜きになるかもしれないので、ちょっと真面目にブログを書きました。
今回の整備は、日産プリメーラ、ファンベルトが切れたとの事で、入庫となりました。
ファンベルトが切れたのが直接的な原因でもありますが、それ以前より、
エンジン始動、発信の時にゴトゴトゴゴゴゴ、と、低い音を伴っていた旨も、お伺いしましたので、
まず、切れたベルトをかけてみて、エンジン回してみようぜ!!
と本当の、現象確認をしていくことにします。
フロントタイヤを外して、下からエンジンを望みます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160128/09/craftmansgarage31/68/f8/j/t02200165_0800060013551983794.jpg?caw=800)
テンショナープーリーのがたも気になりますが、案外ごろごろ感はありませんね。
ベルトをかけてエンジンを回してみます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160128/09/craftmansgarage31/13/9d/j/t02200165_0800060013551983792.jpg?caw=800)
異音の原因がわかってきました。
動画がわかりやすいので、作って見ました。
当工場ではあまりこのトラブルに見舞われるお車がなかったので、「話には聞いていたが…」という所でしたが、うわさにはよく聞くトラブルでしたので、異常部品の判断に困ることはありませんでしたが、
ダイナモのプーリー部分に組み込まれている部品の不良で起きている振動になります。
なぜ、ダイナモの不良で、こんなことになっちゃうのか、と言う所を少し考察です。
最近の、自動車のダイナモのプーリーには、ワンウエイクラッチというのが組み込まれてまして、なんでかって言いますと、
今までは、エンジンがベルトで駆動する補機装置として、
ダイナモ、
ウオーターポンプ、
冷却ファン、
エアコンコンプレッサー
パワステポンプ、
スーパーチャージャー、
等があるわけですが、大体、これらの装置を駆動するのに、3本ぐらい、「ファンベルト」というベルトを使って駆動しておりました。
これを、
「エンジンをコンパクトにしたい、」や、
「メンテナンスの省力化、コスト削減」の切り口で、
一本のベルトで、駆動するエンジンが数多くなりました。
サーペンタイン方式といいます。
参考出展
昔のエンジンのベルトレイアウト
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160228/11/craftmansgarage31/16/0a/g/t02200179_0258021013578920697.gif?caw=800)
核装置一つか二つに、ベルトが一本すかわれています。
長所
古き良きデザイン。
構造が理解しやすい。
サバイバビリティが高い。
(一本が切れても、ほかが大丈夫なので、走行を維持できる場合がある。)
ベルトのかかる向きの配置次第で、クランクシャフトのベアリングにかかる負荷が軽減できる。
短所
古臭い。
各ベルトごとに、調節機構を設けるので、プーリーアライメントがずれたりしやすい。
ベルトを3本掛けるスペースがいるので、エンジンコンパクトにしにくい。
サーペンタイン方式のベルトレイアウト
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160228/11/craftmansgarage31/c9/1c/j/t02200178_0250020213578920696.jpg?caw=800)
長所
前衛的(!!)かっこいい(?)
調節装置が一つで済む。
省スペース。
メンテナンスが、省力化できる。
ベルト自体が長くなるので、ベルト回転数がおちるためベルト寿命が長くなるし、ベルトの張力も低く設定しやすいので、機械抵抗を減らすことができる。
クランクプーリーが簡素になるので、高次元の回転バランスが実現できる。
短所
単純なようで、複雑な面がある(のちに説明)
サバイバビリティが低い。
(ベルトが一本切れると、総ての装置が沈黙するので、切れると終わり。)
パッと見で構造が分かりにくい。
慣れていないとベルトを外してかけるときに、レイアウトが分からなくなる(苦笑)
設計が完成してしまうので追加装置に対する拡張性が少ないかもしれない。
となりまして、実用上の短所が圧倒的に少ないのですが、
短所ではないが、実現するために、必要な課題が多いい一面があり、
ベルトレイアウトが複雑になるため、ベルトを裏から、表から、押しますので、裏表どちらへの曲りにも対応できる性能の良いファンベルトが必要。昔ながらのVベルトではまず無理。
(農機具はVベルトの背押しテンショナーありますが回転数が違うので…)
ベルトとプーリーの接触面積が少ないプーリーがどうしてもできやすいので、伝達が苦しい補機が生まれやすく、ベルト泣きが起きやすい。
回す補機によって、駆動重さが違うので、順序が悪いとベルト暴れやベルト泣きが起きやすい。
ベルトレイアウトを、維持するために、「アイドラプーリ」という、べルトを支えるだけのプーリーが存在し、10万キロ以上の走行距離で、案外それが悪くなったせいで、ベルトが脱落したりすることがある。
ベルトが長いということは、ベルトが伸びる量も大きいので、調整はばの大きなテンショナーが必要。
という、成り立つうえでの、難しい面も持っています。
ただ、
コンパクト化、と、
案外、
ベルト張力を、弱く設計できる、
のは、今求められる燃費性能なんかにも大きく貢献するんじゃないのかなあ、なんて思うところもあります。
まあ、長い前降りを置いといて、も、置いとききれないから書いたのですが、
こういうベルトレイアウトの変化がありまして、その中で、発電機(ダイナモ)の、プーリーに、ワンウエイクラッチが採用される車が多くなりました。
ワンウエイクラッチというのは、自転車でおなじみの、ペダルをこぐのを休んでもチャララララr…と、タイヤが回る、あんな感じのものです。
この装置は、
「エンジンの角速度変動」というものに、対応させるためについている物なのですが、当ブログでは幾度となくこの、角速度変動というものに触れております。
エンジンは、一定速度で回っていないんですよ、という話で、各気筒の圧縮工程では、減速し、燃焼行程では、加速し、非常に小刻みに加減速しながら、最終的に回っている物なんですね。
(この振動が、内燃機関をドラマティックなものにさせますので、悪いばかりではありなせんが、)
この微妙な、速度の増減に対して、発電機を効率よく、動かすために、かつ、電気使用量の増大に伴う、発電機の回転質量の増大に対してのベルト負荷や、エンジン振動の低減として、
ダイナモがベルト速度より、早く回るその瞬間は、「オーバーラン」させる趣旨で、
ワンウエイクラッチが採用されているようです。
(註釈
元々、クランクのプーリーに、トーショナルダンパーという、こういう問題に対応させるゴム部品がついていたのですが、それでは、役不足なほどに、ダイナモの回転質量が重たいのか、それとも、燃費向上の関係で、ロングストローク化が進むと、角速度の波が大きくなるのか、そこらへんは、今なおどちらの装置も混在している現状では、エンジンの持ちうる振動、その他の要因によって、結果が「安くていい方」を、メーカーは採用しているんだろうとも思います。)
「最初はですね、ダイナモが壊れた時に、クラッチがフリーになって、ベルトが切れたりする心配が減りますよ、」
てな、趣旨かと思っていたのですが、それじゃあ、ワンウエイの力の向きが、逆向きなんですよね。
なるほど。
ただ、ここがロックして、異音が発生する場合と、ここがフリーになっちゃって、全く発電しなくなっちゃう場合と、メーカーや車種によっては、発生する不具合が違う場合もあるので、要注意です。
そんな、長い前ふりを書いたのは、実は外したダイナモの写真を撮り忘れたからかもしれません、キヨシです。
走行距離的に、プーリーのみ交換よりは、リビルト品のダイナモに交換し、
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160128/09/craftmansgarage31/54/91/j/t02200293_0800106713551983796.jpg?caw=800)
テンショナーはベアリングだけ交換。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160128/09/craftmansgarage31/85/d3/j/t02200165_0800060013551983793.jpg?caw=800)
これにて、修理完了です。
ご入庫ありがとうございました!!