生産技術マスターへの道 -88ページ目

「安全第一」は生産性を向上させるキーワード

私たちは日常生活において、「安全」と「危険」の間に存在する

「不安(不完全な安全)」な状態に置かれています。


企業の生産活動でも同じことがいえます。


この「不安」を取りのぞくのが、「安全管理」という考え方です。



「安全管理」を正しく行えば、労働災害を未然に防止し、

災害時に最善の処置が行えるようになります。



そこで今回は、

企業の信用を左右するといっても過言ではない「安全管理」について考えてみましょう。



どのような時代であっても、

企業活動の中で安全確保と労働災害の回避は、企業が担う大きな社会的責任です。



万が一にも事故・災害・公害が起きれば、企業はその責任を問われ、

今まで培ってきた信用を失墜させてしまいます。


生産現場で「安全第一」といった標語をよく目にしますが、

果たして意味は正しく理解されているでしょうか。


1906年、U.S.スチール社(米)のゲーリー社長は、

不景気のために設備が荒廃し、労働者の災害が多発している状態を見て、


「安全第一、品質第二、生産第三」を社是に掲げました。



これを徹底したところ、災害の発生件数は減少し、

同時に製品の品質や生産性も向上しました。



なぜそのようなことが実現できたのでしょうか。


それまでは、整備の行き届かない設備などにより、

労働者が落ち着いて作業できる環境ではありませんでした。


しかし、

「安全第一」の標語のもとで安全管理を行ったことで、

労働者が安心して作業できる環境が生まれ、

結果として品質も生産性も改善されたのです。



もう一つ、安全管理を考える際に、

「ハインリッヒの法則」を正しく理解することが非常に重要になります。


これは、同じ人間が同じ種類の災害を起こした場合、

330件のうち300件は無災害、29件は微小災害、

残りの1件が重大災害になるという研究結果のことです。


死亡事故が増加している職場の多くは、

「ハインリッヒの法則」に反して、

職場の危険度を知る重要な情報である無災害や微小災害が軽視されてしまっています。



例えば、危うくケガをするところだった(無災害)、

うっかり足に切り傷を負ってしまった(微小災害)などは、

危険を示すシグナルです。


これを放置して業務を継続した結果、

ついに重傷・死亡といった重大災害が起きてしまいます。



安全管理が行われていない典型的な「管理不在」の状態といえるでしょう。



労働災害の大半は、

「はさまれ・巻き込まれ」などの機械に関わる災害です。



発生件数は低下するどころか、毎年多くの労働者が負傷しているのが現状です。


災害発生時に再発防止策を行っても限界があります。

機械設備の安全性を確保し、点検・保全の態勢を整えること、

すなわちしっかりと安全管理を行うことが、災害発生の件数の現象には不可欠なのです。




安全管理の徹底をはかれる生産技術者を目指すなら…

顧客にも環境にも優しい企業が求められている理由を考えてみよう

近年、国際社会では、地球規模での環境保護が大きなテーマとなっています。


そこで今回は、

企業の活動と環境の関わり方を考えましょう。



これまでの「大量生産、大量消費、大量破」という企業活動が、

環境に弊害をもたらしていることは今や明白な事実です。



現在、企業に求められているのは、よいものをタイムリーに顧客に提供すると同時に、

地球環境に配慮した事業を展開することです。




特に製造業では、商品の生産活動そのものが環境に大きな影響を及ぼします。

製品の種類によっては、製品ライフサイクル全体(素材製造→製品製造→使用→破棄・リサイクル)を通して、

環境への負荷は大きなものとなります。


それゆえ、製品の生産・設計の責任者は、

生産時や製品ライフサイクルが環境に与える負荷を十分に考慮し、管理しなければなりません。



「ISO14001(JISQ14001)」という文字をよく見かけると思いますが、

これは1997年に制定され、全世界で最も普及している環境管理の国際規格です。



企業が環境管理を継続させていくには、ISO14001を参考にしたシステムを構築するとよいでしょう。

もちろん、ISO14001の取得は強制的なものではありません。

企業が環境管理システムを作り上げることが大切なのです。



それでは、環境管理システムがない企業はどうなるのでしょう。



例えば樹脂材料の加工は石油の枯渇につながり、

加工に必要なエネルギーは地球温暖化や酸性雨の原因ともなります。



環境管理システムがなければ、生産活動と環境とのつながりの認識が不十分のまま、

環境を壊しかねない生産活動を続けることになります。



また、環境パフォーマンスデータを把握していないケースもあります。


環境パフォーマンスデータとは、


原材料の投入量

エネルギーの使用量

化学物質やCO2の排出量

廃棄物の発生量


など、測定可能なデータのことです。



本来、これらのデータは、使用される物質ごとに把握しておくのが望ましいのです。

「測定なくして管理なし」という言葉が表すように、測定値が把握できなければ、

的確な環境管理は不可能なのです。



また、環境保護には費用がかかるため、

法規制以上の環境管理活動は経営上でマイナスになるという考え方もあります。


確かに、環境に配慮した設備の導入にはコストがかかります。


しかし、効率性を追求していくと、結果としてコストダウンとなり、環境の保護につながることも多いのです。


顧客側も、地球環境の保護は企業の使命であるという考え方が広まりつつあり、

環境管理に力を入れることは、企業のイメージアップにもなるでしょう。


前述のISO14001についても、認証を受けている企業は多いものの、

実態はすでに形骸化しており、

認証の維持が活動になってしまっているケースが見られます。
 


このような問題を避けるためにも、これからは環境管理の意味を正しく認識し、

システム構築をリードできる人材が強く求められることでしょう。




環境管理システムの構築を任されるような生産技術者を目指すなら……

顧客のニーズに沿った品質の商品を提供し続けよう

前回は、

顧客のニーズに対応した品質を提供することが、

いかに重要であるかを紹介しました。



そこで今回は、

品質管理上で起こり得る問題点と、その解決策を見てみることにしましょう。



すでに述べたように、


「より便利で性能の良い商品を適正な価格で」

「安全な商品を」


という意識の高まりにより、顧客のニーズは多様化、高度化しています。


企業はこのようなニーズに合わせるために、

新しい技術を取り込んだ製品づくりにチャレンジしなければなりません。



しかし、新しい技術を導入する際には、

どのような問題が起こるのかを事前に検討する必要があります。



特に、製品のライフサイクルが短くなりつつある現在、

生産を開始してから不具合が発覚した場合、

開発コストを回収できないままに生産終了になりかねません。


また、新しい技術の導入には、

関連企業や新規のサプライヤーとうまく連携して協働する必要が出てきます。


同時に、工場の海外移転やベテラン技術者の退職に伴って、

企業内部に「品質のエキスパート」が少なくなっています。


ベテランの技術が蓄積されないままに、作業の質が低下するような事態は避けるべきです。


それでは、

トラブルの具体例を考えてみましょう。


例えば、設計部門では、新製品の材料の特性から、

製造中に起こり得るリスクを把握していたとします。


しかし、そのリスク情報が製造部門に伝わっていなければ、

製造中に取り扱いを誤って、不良製品が出来上がってしまいます。


その場合、

上流部門に「後工程はお客様」だという意識があれば、このようなトラブルは起きません。



顧客のニーズに沿って設計仕様を変更したら、

変更した情報だけではなく、

品質そのものの情報(顧客ニーズ、仕様、想定されるリスクなど)を正確に伝える。



すなわち、

部門間での連携を十分に行うことがポイントになります。


さらに、生産が始まってすぐに不具合が発生して、製造工程を見直すというケースもよくあることです。

これは、製造工程を作り込む際に資源を投入して、

リスクを最小限に食い止める工程を設計すれば回避できるでしょう。



しかしこれらを十分に考慮して、

しっかりした製造工程を作り込んだとしても、量産後にサプライヤーから調達した部品に不具合が見つかって、

製品に問題が発生することがあります。


特に新しい技術を導入する際には、

サプライヤーからの情報に対して自社内で正しい評価が出来ないため、

後になって問題が発覚するのです。新しく取引をするサプライヤーや調達品は、

生産準備段階からしっかりマネジメントし、不具合を低減させる努力が必要です。



最後に、

海外工場への移転や若手・派遣社員が増えることを見越して、

熟練したベテランに頼るのではなく、人材の力量を考慮した製造工程を作りましょう。


力量不足の人材は十分な教育を行い、知識を蓄積し、活用できる仕組みを構築します。

これが組織全体の力量アップにつながっていくのです。



さまざまなリスクを想定して、

不具合を回避できる生産技術者を目指すには……