アメリカのウルトラマン | 会社を辞めてXXを season 2

会社を辞めてXXを season 2

自分の原点に戻るべく57歳にして東京の商社を辞めて農業分野への転職を決意。年齢フィルターに苦戦しながらも農園への転職に成功するも1年でリストラに。再び彷徨いはじめた自分探しの備忘録。

 

 

 

 

みなさん、こんにちは。


(記事を誤って削除してしまったので再掲です。皆さんから頂いた「いいね」が消えてしまいました。(T_T)ごめんなさい)

前回の続きである。後輩くんとの引き継ぎの一週間はあっという間に過ぎてしまった。この間、彼は得意な料理を振舞ってくれたのだが、かなり残業が多く私もレンタルハウスに戻るとヘトヘトで彼が作る料理を食べた後は自分の部屋の寝袋に倒れ込むほどだった。

後輩くんもこの一ヶ月、遅くまで残業しており疲労が蓄積していた。風呂に入ったきり出てこないことが一度あって心配になり見にいくと湯船で眠りコケていたのだ。危うく溺死するところだった。

レンタルハウスは平屋で、玄関横にはアメリカらしくガレージがあった。リビングは広くテレビとソファがあり、その隣はキッチンとダイニングテーブルがあった。そして奥には個室が2つあって我々はそこをねぐらにしていた。さらに奥には風呂とトイレがあった。いつでも撤収できるように家具類はキャンプ道具で、すべてコストコでそろえたのだった。

コストコはレンタルハウスから20分くらいのところにあってコーポレートカードで入ることができた。日本にはまだ進出しておらず、たいへん珍しいスーパーだと思った。ここで一週間分くらいの食料を買い、巨大なGEの冷蔵庫に詰めるのだ。

諸兄もご存知の通りコストコはパッケージが大きい。パンひとつ買ってもほぼ一週間分あるのだ。買い物終わりには名物のホットドックとコーラで小腹を満たす。

このときのコーラのサイズは1リットルの牛乳パックぐらいある紙コップでアメリカンサイズはデカイなぁと感じたものだ。あとは売っている牛乳のデカさだ。

1リットルではない。1ガロンなので約3.7リットルなのだ。少ないボトルもあるが割高だ。低脂肪の牛乳を水の代わりに飲んでいた。季節はちょうどハロウィンを控えて、かぼちゃ一色だった。

後輩くんは生活に必要な場所をいろいろと案内してくれた。食料スーパー、ガソリンスタンド、コインランドリー、さまざまだ。当時はタバコを吸っていたのだが郊外のストアで買おうとすると免許証を見せろといわれるのだ。

ようは未成年を疑っているのだ。私は当時40歳くらいだったが日本人は若く見られがちだ。酒を買う時もそうだ。免許証はつねにクルマに置かず、持ち歩くことになった。私はこの出張の機会からヒゲを伸ばすようになった。パスポートよりよっぽど成人の証になる。

一週間の最終日の休みは後輩くんと近くのアウトレットと水族館を見に行った。このとき気付いたのだがこの西海岸の地はリゾート地でドデカいキャンピングカーをけん引して走っているトラックが多く走っていた。トラックもまたデカい。なので後ろが良く見えるようにバックミラーがおもいっきり外へ飛び出している。

そして広大な駐車場にけん引したまま置けるオートキャンプ場があちこちにあるのだ。そのどれもが電源と水道が用意されていてリタイアしたと思われるご夫婦が愛犬をかわいがりながら料理を作っていた。アメリカ人のリタイア人生ってこんなふうに全米をキャンピングカーで渡り歩くのかとうらやましく思った。

さて、後輩くんは帰国し、私はひとりきりで生産管理に立ち会わなければならなくなった。製造は不定期で開始時間もまちまちだった。その日、製造を始めるかどうかは会社に電話して留守電を聞いて判断する。

製造スタッフは何時に、クオリティーコントロールは何時に、出荷担当は何時にみたいに録音を聴くのだ。これまでは後輩くんが私に今日は何時ですよと教えてくれた。しかし今から私がその時間を確かめなくてはならない。

電話をかけてみるとスゴい剣幕で工場長が早口でネイティブな英語でしゃべっている。

!!! きっ、聞き取れねぇッ (゚д゚lll) !!!

これはいかん。まったく聞き取れない。直接工場長と話すことはあったが、日本人向けのゆっくりした聞き取りやすい英語だった。

ところが留守録は録音時間が決まっているので詰め込んで早口でしゃべるのだ。まったくの現地スタッフ向けでサッパリだった。しかたがないので初日は適当に工場に赴いてやり過ごすことにした。

工場につくとちょうど生産を開始したところだった。親しくなった現地の検品スタッフがいて助かった。その後、何日も、何度も留守録を聴きかえして何か聞き取れないか反復練習の日々だった。

そしてある日ストンと耳に入ってくるコトバがあり、ああ、そう言っていたのかと合点がいくことがあった。やっと耳がネイティブの発音に慣れてきたのだ。先にご紹介した通り部門の順番に出社時間を言っていたのだ。

自分の発音もおかしかったようだ。当時吸っていたタバコの銘柄マールボロ・ウルトラライトがこの地でも買えた。価格は日本円にすると7~800円でほぼ倍だったが吸いたい欲望は抑えられない。

空港の免税店で買った在庫も切れていた。そこでコンビニのにーちゃんに「マールボロ・ウルトラライトをくれ」というと首をかしげるのだ。

えっ、伝わらないようだ。しかたなく指をさして教えるとやっとわかってくれた。その後何度か発音を工夫したがうまく伝わらない。何度か工夫した結果、もしかしてと思い「マールボロ・アートラライト」というと一発で通じた。

小さい頃、ウルトラマンシリーズを見て育った世代には想像もつかなかった。アメリカではアートラマンなのだった。最後まで読んでいただきありがとうございます。

Live long and Prosper. ||//_
(記事を誤って削除してしまったので再掲です)