こんばんは
りおです
短編のつもりが、思いのほか長文になってしまいました…。昨日、久しぶりにシンイを見てて、7話でした。
「血の匂い」がテーマだったので、そんな匂いのお話を書いてみました

”
チェヨンの匂い嗅ぎたい”そんな、
乙女?の皆様の声をお待ちしております(笑)
りおは、高校時代、放課後のリコーダーならぬ、放課後の柔道着に、お付き合いしたことがあります。
私じゃないですよ
あっ、友人の話です

ホントヨ。
本日のテーマ写真:

あの人にあげようかな
まだかな~。遅いなぁ~
ウンスは布団の上にうつ伏せて、顎を支えるように肘をつき、一人チェヨンの帰りを待っていた
今日あたり帰るだろう。そんな噂を耳にした。そのためウンスは、仕事を早々に切り上げて、夕方には屋敷に戻ってきていた
せっかくあの人が、好きな食事も用意したのに、どうしちゃったのかなぁ~?
携帯電話やメール1本で、簡単に安否や所在を知る事が出来る。ソウルにいた時は、その有り難さに、気づこうともしなかった
しかし、夕方になっても、夜になっても…チェヨンは一向に戻ってこない
結局はその夕飯も、一人で食べる事になって、ウンスは寂しくて悔し紛れに、チェヨンの分まで、一人で全部平らげたのだった
あぁ、お腹が苦しい…食べ過ぎちゃった。呆れるよね?だって、ヨンァが帰ってこないからよ。勿体ないもの
もうかれこれ、2週間も会ってない…
チェヨンは、ウダルチ数名を引き連れ、国境近くの視察のため、2週間ほど前に、ここ開京を立っていた
今日の夜には、きっと帰って来るって思っていたのにな…
違うのかな、明日なのかなぁ~?
ウンスは支えにしていた腕が疲れて、ふ~と大きくため息をついて肘を外すと、布団の上にぱふっと、左の頬をあてるように寝転んだ
あ~あ。一人で寂しいな…
あの人と1年も会えなかった事もあったのに…。たった2週間が、こんなにも長く感じるなんてね
私も甘ったれたものね
普段は狭い、狭いとあれほど文句を言っている寝台が、今はとっても広く思えちゃう
しーんと静まりかえる部屋からは、自分がつく、ため息の音しか聞こえてこない
チェヨンがそこにいない事を、余計に実感させられて、ウンスは寝台の上で、悶々と想いを巡らせていた
何度も、庭の外に視線を向けたり、戸口を覗いてみたりするものの、そこには人の影すらない
やっぱ、帰ってこないわよね
ふとした出来心で、ぽふっと、チェヨンの枕に顔を埋めてみると
鼻先をふわりと掠める様に、今か、今かと待ち焦がれる、その人の残り香を感じた
あぁ、ヨンァの匂いがする~
懐かしさすら感じる
思わず大きく深呼吸して、チェヨンがその枕に残した匂いを、くすぶる胸元に吸い込んでみた
いい匂い
私はあの人の匂い、好きなのよね
そう思うと同時に、昔、自分がチェヨンに言った、その言葉が思い返された
「血の匂いね…」
ふふっ。そんな事を言った事もあったのよね…今でも、やっぱり血の匂いは、そう消しきれるものではないけど…
私の、この手も同じだわ、医者の手。あの人とは違うけど、やっぱり鉄っぽい匂い。血の匂いが染みついている
私たちは結局、似た者同士だ…
「この花が、あなたの血の匂いを消してくれるわ」
冗談半分で言ったその言葉を、あの人はきっとすごく真に受けて…ずっと瓶に入れて、大切にしていた
くすくすっ。可愛いところあるのよね
そして、あの人の本当の匂いを、私は知ったの…血の匂いの奥に隠された、本当のあの人の香り
ふふふっ。きっと、私だけよね。あの人の匂いを知っているのは…
そう思うと、自分はチェヨンにとって特別な存在。そんな風に思えて、何だか鼻が高い、誇らしい気分になる
寂しかった胸が、少しだけ慰められ、小さく弾む
ウンスはまた布団に顔を伏せ、チェヨンの枕に思いきり顔を埋めると、もう一度、その匂いを大きく吸込んだのだった
チェヨンの姿を思い浮かべ、目をキュッと瞑り、うっとりとした気分で、鼻孔に残るその香りに酔いしれる
いい匂い。ヨンァの匂いだぁ…
早く会いたいなぁ
早く帰ってこないかなぁ
ウンスは、チェヨンのいない寂しさを紛らわせるように、何度も深呼吸をしながら、待ちくたびれた心を安らげた
「イムジャ、何をしておるのだ…」
突然どこからから、知ったはずの声が聞こえてきた
えっ?嘘…
はっと、身を起こし戸口に目をやると、あれほど待っていたはずの、夫チェヨンの帰りにウンスはぎょっとする
「やっ、ヤダ。ちょっ、あなた何で、もう帰って来たのよ」
とっさに、身を起こし、慌てふためく。そして、動揺する気持ちが、思ってもいない、おかしな言葉を誘った
「何の事です、それは」
チェヨンは、いきなり何を言うのだと、眉を寄せ、怪訝そうな視線で、ウンスを見つめ返した
「あっ。そっ、そうじゃなくて…」
嘘でしょと、何度も瞬きをし、口をぱくぱくとさせるウンス
「そもそも、そんな所で、何をやっておるのです」
やっ、やっぱり、見られてた?
「えっ?あっ…あなた、そもそも、どこから見てたのよ」
あれ程、待ちわびていた、チェヨンの帰宅のはずだった
ウンスは、見られたかもしれない…。その恥ずかしさで、泣きたい気分だった
「そもそも?俺の台詞です。そのような所に、ずっと伏せて…イムジャあなたは、いったいそこで何をしておるのだ」
やっぱり、見てた?
はぁ…そうよね。明らかに怪しいわよね。恥ずかしい…どこから見ていたんだろう…
「えっ。あはは、別に何でもないわ。ほっ、ほら眠くて、うつら、うつらとね…」
俺の帰りを首を長くして待ち、喜び飛びついてくるかと思えば、俺の枕に顔を埋めさせ、イムジャは布団に伏せておった…
その上、何だ。イムジャのこの態度は
俺に見られた事をやけに気にかけ、気まずそうな顔をし、激しく動揺しておるとは
明らかに様子がおかしい。俺に、見られて、何かまずい事でもあるというのか?
イムジャは、何か隠しておるな…
チェヨンは、慌てふためくウンスの顔色をうかがう様に、眺めまわすと、顔に戻した視線で、何をしていたのかと責めるように、ジロリと睨み付けたのだった
「たった今、戻りました」
たった今?じゃぁ、たいして見られてないのかな?
「あはっ…おっ。お帰りなさい」
まぁ、良いと。気を取り直したチェヨンが、にっこりと微笑みかける
「イムジャ、久しぶりに戻った夫を、抱きしめてはくれぬのですか?」
あっ、そうだったと。難を逃れた事に、ほっとしたウンスが微笑み返す
慣れた手つきで、差し出された鬼剣を両手で受け取ると、いつものように壁にかけて
ちょこんと、背伸びをし、愛しい夫チェヨンを、ギュッと抱きしめた
にっこりとお互い微笑みあって、そっと押し当てるような、口づけを一つ落とした
ヨンァ。匂いの主ね
本物が帰って来たわ
あら?
ウンスは鼻をクンクン、とさせて、チェヨンの匂いを嗅ぐと、いつもと違う違和感を感じる
帰宅が遅い時や、返り血を浴びた後は、ウダルチの兵舎で、水を浴びて帰って来る事が多かった
あら、ヨンァ…?
「んん?」
ウンスは不思議そうな顔をして、また鼻をクンクンとさせる
突然の、ウンスの行動を不思議に思う
「なんです?」
「えっ」
「もしや、匂いますか?」
そう。ヨンァは、今日は、汗のにおいがする…。ウンスは、何の気なく、笑ってこくこくと頷いた
そのウンスの姿を見た途端、チェヨンが、目を強く張り、黒い瞳を左右に揺らがせて…
突然、がばっと、ウンスに背を向けて、部屋を出て行こうとする
えっ。
驚いたウンスが慌てて、追いかけて、数歩進んだところでチェヨンを引き止めた
「やっ。ちょっと、ヨンァ。どこに行くつもりよ」
「ゆっ、湯あみをしてくる」
「ええ??」
「離してくれ」
チェヨンはそのまま、掴んだウンスの手を振り切るように、戸口に進もうとする
あ、まさか…
くすっ…やだ
この人ったら気にしているのね…
くすくすっ
ヨンァって、案外、気にし屋さんなのよね
あの、血の匂いがするって言った時も、多分…とっても気にしていた…
もう、馬鹿なんだから
「やだ、そんな事気にしないでよ。ねぇ、こっちを向いて。せっかく久しぶりに会えたのよ」
ウンスは掴んだ衣の裾を、後ろからキュッキュッと引っ張って、甘えた声で乞う
そんな事、気にする必要なんてないのに
「んっ?んん~」
なかなか振り向かぬチェヨンを、ねぇ、ヨンァ…と再度、つんつんと引っ張った
その甘えた懇願に敵わぬと、小さくため息をつくと、チェヨンは諦めたように、そっと振り返った
「そんなに気にするなんて…」
「急いで戻ってきたので…」
「急いでくれたの?」
「思ったより遅くなってしまい、待たせておるかと思ったのです…」
少し困惑したように、唇をキュッと噛みしめるチェヨン。その困った色を浮かべた瞳を、悪戯に覗き込むウンス
冗談半分で、その場を紛らわせようとした
「私は、あなたの事だから、どうせ、この後、汗をかくだろうから良いだろ?とか言うかと思ったわ」
そう、ウンスは軽くふざけたつもりだった
ところが、ウンスから発せられたその言葉に、チェヨンは驚き、再び、目を大きく見開いた
イムジャは、帰って来た早々、なんという事をおっしゃる
腹の中で笑いがこぼれて、それと同時に、体の芯が奥の方から、ジンと熱くなる
「イムジャ。汗がこぼれ落ちるほど…?」
「え?」
「汗がこぼれるほど、何ですか?」
「へ…?」
「今は暑い季節ではない。っが…、この後、何故、汗が出るのだと?」
「はっ?」
「汗をかくには、激しく動き回らねば…」
チェヨンは意地悪い顔をし、ニタニタと顔を突き合わせる
「あっ!!やだ」
「疲れて帰った夫を、休ませても下さらぬとは。困ったお方だ…」
「やっ、違うわよ。やだ、そういう意味じゃない!!ねぇ、違うってば!そういう事じゃなくて」
ウンスの目と鼻の先に、顔を寄せて…
「イムジャ。では、どんなつもりだと?」
「ちっ、違うのよ。ただ、わっ、私は、あなたの匂い嫌いじゃないから…」
「嫌ではないと…?ならば、何故、あのように匂いを嗅いだのです」
「だから、今日はずっと、あなたの、匂いの事ばかり考えてたから…つい、戻ったあなたの、匂いが気になっただけで」
「えっ…?」
「あっ…」
「俺の匂いの事ばかり?ずっと?考えておったと。イムジャ今、そう言ったのか?」
ギャァ
やだ、やっちゃった…
嘘でしょ
えーん、しまった…
ユ・ウンス。
私は、何て事を、口走ったのよ…
私の馬鹿…
恥ずかしい
あまりの恥ずかしさに、その場に、居てもたってもいられなくなった
今度はウンスがくるりと、チェヨンに背を向け、1歩、2歩、その場から、しれーと、逃げようとする
しかし、抵抗むなしく、数歩進んだところで、後ろから、チェヨンの大きな両腕に、がばっと羽交い絞めにされた
「どこに行くのです?」
「離してよ」
「くすっ。イムジャ、気にする事などない。こちらを向いてくれぬか。久しぶりにお会いできたのです…」
「……」
「イムジャあなたは、俺の事ばかり、考えておったのですか?」
「……」
「俺の匂いを感じて…?」」
「……」
「先ほど、俺の枕に、伏しておったのは、もしや?」
「……もう…し…らな…い…」
「なんです?今なんと?」
「ヨンァの馬鹿!もう!知らない!」
「イムジャ…」
そういって、チェヨンはウンスをそのまま、壊されてしまうかと思うほど、ギュッと強く抱きしめた
あまりに強く抱きしめられた事にびっくりして、頭から火が出そうなほど恥ずかしくて、真っ赤な顔をしたウンスは、一瞬気を抜いてしまう
抱きしめられる腕に身を任せそうになり、はっと我に返った瞬間、チェヨンに、軽々と抱きかかえられてしまっていた…
「イムジャ、汗が滴るまで…俺の匂いを感じて…」
「ちょっと!やぁ!」
「疲れておるのです。しかし妻の望みを叶えて差し上げねば。褒美はイムジャの香りを、分け与えてくれ」
にやにやと、チェヨンはいやらしく笑うと、急くように大股で歩いて、ウンスを寝台に押し上げる
そして、二人を照らしていた、部屋の明かりが落ちたのだ

その数分後の事
「ちょっ、ちょっと。やぁ、あなた、きゃぁ。どっ、どこの匂い嗅いでるのよ!!!馬鹿、止めてよ!!!やだってばぁぁぁぁ!!!!」
先ほどまで、しーんと静まりかえっていたはずの部屋。そして、たった一人で、寂しく、広く感じた寝台から…
ウンスの、助けを求めるような、泣きべそ交じりの叫び声が、響き渡ったのだった
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