こんにちは!
Sヨンはきっと亭主関白ですね、そんな想像をすると楽しくなります。

けど、ウンスは家のなかに大人しくおさまってるような人ではないですよね。ヨンの苦悩が目に浮かぶようです(*^^*)



テーマ写真:もたれかかる




イムジャはめっぽう寒さに弱い
高麗の凍てつく様な冬の寒さは、天界でお育ちになったあの方にはどうやら堪えるようだ

いくらこの高麗が寒いと言っても、布団に包まりのそりと動くあの方の子供っぽい姿に、天界ではいかがお過ごしだったのか…とおもわず笑いがこぼれる

「イムジャ…また貴方はそのようなかっこをなさって…」

ここ最近はよく見慣れた姿であるものの、やはり何度見てもおかしくなる

チェヨンは腹のそこからこみ上げる笑いを、気を引き締めぐっとおさえる

目を細めてわざと呆れたような表情を作り、ウンスをからかうように苦笑いをして見せた

そんなチェヨンの帰宅にウンスが、パッと明るい表情を見せる。顔をあげチェヨンを見上げこう言った

「あぁ、ヨンァお帰りなさい。遅かったわね。もう私、寒くて寒くて…。
この布団1枚じゃダメみたい。でも布団2枚は羽織ることができないし。私、この冬を越せるかしら。」

そして、眉間にしわを寄せながらプルプルっと震えて見せる

チェヨンはまたその大袈裟なウンスの姿に、隠しきれない笑いをこらえながら尋ねた

「イムジャ天界ではいかがされてたのです?いくらこの部屋が寒いといっても、外の寒さはたいして変わりなかろう?そんなにここの寒さがお辛いですか?」

「うーん、そうねぇ…多分…外の寒さは同じかな。あっ、でもね、この私たちが住んでた天界の場所は、この時代よりもきっともっと暖かくなってるのよね。
だからね、どうだったかしら?ここより天界のが外も暖かかったような気がするわ…」

ウンスは、つまり地球温暖化ね…っとチェヨンに聞こえるか聞こえないかのような小さな声でそっとつぶやく

「少なくとも室内の寒さは天と地の差よ。天界ではね、暖かい空気(くうき)が部屋をおおってるし。床からも暖かな熱が発せられてるもの。オンドルみたいなっ、ね分かる?」

ふと、先日、庭に来てた小鳥たちが頭に浮かび、思い出し笑いをする

「そうそう、天界ではダウンジャケットといってね、鳥の羽を中に入れた暖かな羽織物があるのよ。ふわふわの羽が入っているのね。
あ~、ここにダウンジャケットがあったらなぁ、外出ももっとしやすいのに。天界ではね仕事帰りにショッピングに出かけたり、夜はバーで遅くまでお酒を飲み明かしたりしたのよ」遠く恋い焦がれるような表情で語る

チェヨンはウンスのその表情と、その言葉が妙にひっかかる

「その暖かなものがあれば、色々なところを出歩きたいと?どこぞで酒を飲まれたり……?夜分に一人で…?」

訝しげにチェヨンが尋ねる

「勿論よ。だって、せっかくの休日に家の中にこんな時間まで、一人閉じこもっていてもつまらないじゃない。婚礼の準備とか何だかんだ慌ただしかったでしょ?まだ全然ここ高麗の町を見て回ってないし、色々な所に遊びにいきたいわよ!」わくわくしたように楽しげな目をするウンス

嫌な予感がよぎる
ウンスがあちこち出歩く事を想像すると、どうも納得がいかず面白くない。上下の唇をぎゅっとつぶす

-そんな余計なものはイムジャには必要ない。そのようなものがあれば、貴女はまた危なっかしげに、ふわふわとあちこちでとんでもないことを仕出かすであろう…

ところ構わず突拍子もないことをして人々を驚かせる、無邪気にはしゃぐ、そして親しげに愛想をふりまく、その美貌で羨望の眼差しをあびる…さらには、色々な男たちがいやらし眼差しで見つめる…そして欲を抱えてイムジャに近寄る。想像をしたくもないそんな光景がすぐ目に浮かんだ

駄目だ
チェヨンは思う
そんな自由を許したら俺は気が気でなくなってしまう

屋敷にそのまま囲いこんでしまいたいような、ウンスを隠してしまいたいような欲望が心の奥底でこみあげる

イムジャはここで俺を待っていてくださればよいのです…

そう、心の中で不満げにつぶやき、ウンスに気づかれないよう今度はそっと下唇を噛み締めた

「あ、でもね…その暖かくなっているっていうのはあまりいい事とも限らなくて、空気が悪くなって起こる現象なのよ」

そのまま、チェヨンを気にすることなく、珍しくまじめそうな表情で話を戻す

チェヨンもそんなウンスにつられて、気を取り直し再び話を聞き入る


-先程もイムジャはくうきと言っていた。くうき?どういう意味であろう

「では…ここのが…その”くうき”は、天界より良いのですね? それは一体いずこにあるのですか?」
チェヨンは至極まじめに聞き返した

それが妙にウンスのツボにはまり、クスクスっと笑いが漏れる

「そうね、どこにあるのかしら…あなたと私と共に…あるかしら…?」
意味ありげに目をくるりと大きくし、にこっと首をかしげウンスはもう一度笑い直した


チェヨンはウンスの天界の話を聞くのが嫌いではなかった

分からない言葉も多く理解できないことが多かったが、天界の話をすることで少しでもウンスの気持ちが穏やかでいられるのでないかと思っていたからだ

そんな時、ウンスがありのままの自然体でいられるようにと、けしてチェヨンはこと細かに問いただすことはしなかった

チェヨンにとっては分からない事だらけの話だろうに、いつも微笑みを浮かべ楽しそうにウンスの話を聞いてくれる

そして時々、要点をついた質問をして話をうまく引き出してくれる

そんなその男性(ヒト)の優しさに溢れる思いを感じるようで、チェヨンといる居心地よさでウンスの心はいつも和らいだのだった


-イムジャが天界の話をされるときはどこか懐かしげな表情をされる…

最初のころはそんなウンスの姿に胸が痛み、この地にイムジャをとどめてしまった事を本当に良かったのだろうか…

胸が詰まるような痛みを感じる事があった

しかし、4年の歳月を経て再会した今、ウンスの覚悟を誰よりチェヨン自身が良く理解していた

故郷を懐かしむこの姿もイムジャなのだ。そうならば、そのすべてを受け止めよう。チェヨンは決意したのだった

-この地でイムジャが天界の話を出来る相手もそうおるまい

チェヨンは心の中でつぶやく
俺にその話をすることで、少しでも居心地よく…俺のそばにおってくださればよいのだ

絆はより深まりをみせ、今はチェヨンもそう思えるまでになっていた

胸に温かい何かを感じ、微笑みかけるようにウンスを見つめた…



天界に帰りたいかと問う俺に、イムジャは笑ってこういってくださった
”ヨンァ、私の帰る場所はここなのよ。だからもうやめて……”

イムジャはそれ以上何も言わなかったが、きっと自らを責めるのはやめて…そう言いたかったのではなかろうか

それから俺は決めたのだ。イムジャの居場所はここなのだ。俺はその場所を全身で護っていこうと

ウンスと再会した時の強い決意と、熱い想いがいま再びチェヨンの胸をよぎった


「ねぇ、ヨンァ、ずっとあなたを待っていたのよ。もう、本当に寒くて…私の後ろに来てくれる?」
ウンスが甘やかにささやく。

チェヨンはそれを期待してたかのように、少し偉そうに「では…」と言い座りなおした

ウンスが振り返る
後ろに座ったチェヨンと視線が絡み合う。
包みこんでいた布団を両手でおろし、邪魔なものを取り払うかのようにパサッと放り投げる

そして、ウンスを後ろから包み込むようにそっと抱きしめた…

大きな両の手のひらでウンスの左右の手をそれぞれ包み込み、肩に顎を乗せる

そして、そのままウンスの首もとにもたれ掛かり熱を分けあう

「暖かい…。貴方まるでぬくぬくしたカイロだわ」
チェヨンから注ぎ込まれる暖かさに身を委ねつつウンスはまどろむ

相変わらず天界語は難しい。カイロという意味は良く分からない
そして、ぬくぬくという、何故か心地よい響きのする言葉。意味はわからずとも、きっとそれは暖かな良きものなのだとチェヨンの心が温かくなった

ウンスは不思議に思う

「でも、それにしても何であなたの家には暖房器具のような物が全くないのかしら…。寒くて…ほんと早く帰ってこないかなって毎日待ち遠しいのよ。これであなたが早く帰ってきてくれないと私、本当に凍えちゃうかもしれないわ…」

ウンスがチェヨンに寄りかかりながら両手をこすり合わせる。そして、ハァ…っと白くなった息を吐きそうつぶやいた

冷たい空気が白く漂う

そんなウンスに、チェヨンは多少の罪悪感を覚える。イムジャ、致し方ないのだ。すまない…

やましい気持ちがあるチェヨン
若干、気まずい思いを抱えつつ、そう心で詫びたのだった

「俺がイムジャを芯まで温めて差し上げますので…」
甘い声でウンスの耳元でささやく

「あら、私のぬくぬくカイロはいい働きをするのね…」

ウンスは恥ずかしそうにはにかむ

「イムジャ…今宵はもう、寒いとは言えぬかもしれません…よろしいですね?」

上目遣いにチェヨンを見つめ返し、その眸でニコリと返事をする

ウンスの冷えた体を暖める。寒さを感じないほどに、チェヨンのアツい熱を分かち合う。二人の甘い夜はこれから始まるのだった…


Question!! 
なぜチェヨンは罪悪感を感じているのでしょうか(ー_ー)!!
感の良い方はもうわかったかしら?

本編へ続く!



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