南域結界☆ ジェルソミーナ -215ページ目

6-3 ぷるるるるるる

 チャーカチャッチャチャ! チャーカチャッチャチャ! チャカチャッチャーン!
 無意味に景気のいいワルキューレの騎行に、一気に眠りから引き戻された。
 研究室の外。ずっと遠くから聞こえる、編曲しまくりの音楽。
 誰かの、ケータイ着信音らしい。
 威勢よすぎ。
 ドラムがうるさい。
(……ん、んんー……)
 旧校舎にいるのは自分一人なのに、おかしいなー、とゼルペンティーナも思わないでもなかったが、なにより眠気が強すぎる。
 いいや、放っておけ。そのうちどうせ止まるだろう。
 知ったこっちゃないと、睡眠に集中する。
 意識はすぐに、まどろみ始め――
 チャーカチャッチャーチャ
 チャーカチャッチャーチャ
 チャーカチャッチャーン!!
(……んんんんんんんんんっ!!!)
 めんどーなので起きたりはしないが、ブチ殺してやりたいところである。
 だいたいおかしいじゃないか。
 なんで、ワルキューレが、こっちに近付いてきてるんだ?

6-2 ぷるるるるるる

 ぷるるるるるるる……
 眠りに落ちかけた時、研究室に鳴り響く音。
 少女はまぶたを開きかけたが、引力の法則にしたがって、また深く閉ざす。
 ぷるるるるるる
 ぷるるるるるる
 ぷるるるるるるる……
 ――この学校の嫌なところは、理事長の手配りが良すぎるのと、ケータイの電波が届くことだ。辺境であるこの一帯の都市国家群、小国家の、どこにも、電波は届かないのに、この学校にだけは届く。この国の首都にだって届かないのに、ここだけは届く。それもこれもあのマリーナとゆー艶っぽい姉さんのせい――
 ぷるるるるるる
 ぷるるるるるるるるるる
 ……無視。
 というよりも、身体が一ミリも動かない。
 動けないし、動く気が、ない。
 ぷるるるるるる
 ぷるるるるるるるるるる
 ぷる……
 中途半端な感じでベルが止まった。
 それっきりあきらめたのか、ケータイのベルは、ぷるとも鳴らない。
 静寂と、至福の時が戻ってくる。
 絨毯の底に、疲労困憊の身体が溶け落ちていくようだ――
 おつかれさま……わたしぃ……
 ゼルペンティーナは、窓を打つ雪風の音を聞きながら、深い眠りに落ちていき――

6-1 ぷるるるるるる


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「くっそぉっ!!! 予想以上に挑発に乗らない子ねーっ!!」
 扉を閉めた瞬間、少女の顔つきが、研究者風に変わった。
「直接戦って、能力、測ってやろうと思ってたのにぃっ!!!」
 女の子が、くっそぉだなんて口にしちゃいけなくてよ、おほほ、とかなんとか、普段のゼルペンティーナなら言いそうなのだが、今はとてもそんな状態ではない。
 腹立ち紛れ、冷えきったロングコートをその辺に投げ出し……かけて、
 みごと、失敗。
 指が袖から抜けきれず、その弾みと重みで、少女はよろける。
 そしてそのまま引っ張られるようにして勢いよく、絨毯の上に、ぶっ倒れた。
 強い埃臭が鼻をついたが、
「……いい……」
 そのままぐったり、突っ伏す。
「……もー……。終わり……」
 ざらざらした絨毯に頬を押し当てたまま、呟く。
 膨大な魔力と、精神力を浪費したのだ。
 いくら無尽蔵の魔力を誇る、天才魔導エンジニア、ゼルペンティーナでも、<地獄の扉>を開き続けるには、相当の精神力と体力が必要になる。
 精神力の方は、まあそこそこマシなほうなんじゃないかと自負していたけれど、いかんせん、少女には体力が欠けていた。
 それも、絶望的に。
(つかれた……。もー……やめる……)
 やめる、とか言っていても、絶対後でリベンジする気まんまんなのは、自分でもよーっく分かっている。諦めが悪いからこその、ゼルペンティーナ。それだからこそ今では、不動の地位を築くことができて――
 ぷるるるるるる
 ぷるるるるるるる……