6-21 たぷん。
(あの、おにいさんのこと、考えちゃだめ……)
うっかりすると湯煙の中、いつまでも考えてしまう。
あの青年を眺めたのは、数分たらずのことだったのに――
(それから……ティーナちゃん!)
気持ちを吹っ切るためにすがりついたのは、あろうことか、180度真逆の方向性をもった美少女のことだった。攻撃的で、破壊神。
溢れんばかりの怒りでもって、澪をしつこく攻めてくる女の子。
(番頭さんは褒めてくれたんだけどな……「よく挑発に乗りませんでしたね」って。「全力を出させて、実力を試すんですよ」「異能を解析する研究者で、異能と機械と融合させる魔導技師、それがあの人の本当の顔」「それがあの人のやり方なんです」って。でも……)
「……ティーナちゃん」
小さく呟く。
(挑発でもいいや……お友達になりたかったな……)
大佐は、「ノマドは友達を作らない。だから友達になるのは難しい」と言ったけれど。
明日は、仲良くなれるかな?
うっかりすると湯煙の中、いつまでも考えてしまう。
あの青年を眺めたのは、数分たらずのことだったのに――
(それから……ティーナちゃん!)
気持ちを吹っ切るためにすがりついたのは、あろうことか、180度真逆の方向性をもった美少女のことだった。攻撃的で、破壊神。
溢れんばかりの怒りでもって、澪をしつこく攻めてくる女の子。
(番頭さんは褒めてくれたんだけどな……「よく挑発に乗りませんでしたね」って。「全力を出させて、実力を試すんですよ」「異能を解析する研究者で、異能と機械と融合させる魔導技師、それがあの人の本当の顔」「それがあの人のやり方なんです」って。でも……)
「……ティーナちゃん」
小さく呟く。
(挑発でもいいや……お友達になりたかったな……)
大佐は、「ノマドは友達を作らない。だから友達になるのは難しい」と言ったけれど。
明日は、仲良くなれるかな?
6-20 たぷん。
今日は、学校登校の、初日。
最初に出会ったのは番頭さん。
それから、ティーナちゃん。クロちゃん。アーヴくん――
そうそう。
アーヴくんは、学校の地下を案内してくれたんだっけ。そこには大きな鳥カゴがあって、それから――そう。あの部屋の向こう……
(……あれ、誰だったんだろう……)
棺の中の主。
なにかを深く、思いつめたような――
雰囲気のある、キレイなおにーさんだったな……。
ぼんやり思い出しただけだったのに、澪の胸が、キュン、と痛くなった。
心なしか、ガラス戸に映った自分の顔が赤い。
(うー……)
なんとなく恥ずかしくなって、澪はお湯の中に顔をうずめる。
ごぼごぼごぼ。
(マリーナ理事長や大佐なら、あの人のこと、知ってたかもしれないのに……)
はじめて覚えた不思議な感覚をごまかすように、他のことを考えてみる。
(あ……でも。だめだめ!)
澪はお湯の中で首を振る。
アーヴくんと、地下のことは言わないって約束しているんだから。
最初に出会ったのは番頭さん。
それから、ティーナちゃん。クロちゃん。アーヴくん――
そうそう。
アーヴくんは、学校の地下を案内してくれたんだっけ。そこには大きな鳥カゴがあって、それから――そう。あの部屋の向こう……
(……あれ、誰だったんだろう……)
棺の中の主。
なにかを深く、思いつめたような――
雰囲気のある、キレイなおにーさんだったな……。
ぼんやり思い出しただけだったのに、澪の胸が、キュン、と痛くなった。
心なしか、ガラス戸に映った自分の顔が赤い。
(うー……)
なんとなく恥ずかしくなって、澪はお湯の中に顔をうずめる。
ごぼごぼごぼ。
(マリーナ理事長や大佐なら、あの人のこと、知ってたかもしれないのに……)
はじめて覚えた不思議な感覚をごまかすように、他のことを考えてみる。
(あ……でも。だめだめ!)
澪はお湯の中で首を振る。
アーヴくんと、地下のことは言わないって約束しているんだから。
6-19 たぷん。
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たぷん……
ローズマリーのお湯の香り。
湯煙が、浴室を満たしている。
天井は鉄骨と、ガラスのドーム。
そこかしこにツタが生い茂り、石膏の女神像が、ランプの燭台を頭上へ高く掲げている。
まるで植物園の温室――
その中心に作られた、小さなプールほどある円形のバスタブに、澪はいた。
マリーナの好みらしく、バスタブは広く、深い。
(今日は……たくさんのことがあったなあ……)
……たぷん。
お湯が、揺れる。
その音に、澪はうっすらと、意識を戻した。
長い髪は全て頭上へ、結い上げている。
白い頸筋も、桜色に染まっている。
絹のような肌を伝う、水滴。
もう、夜も遅い。
寄宿舎の門限は過ぎているし、荷物を入れるにもみんなに挨拶をするにも遅すぎるから、今夜は理事長の住む別棟に、泊めてもらうことになったのだ。