南域結界☆ ジェルソミーナ -207ページ目

6-26 狂信者(デヴオ)たち

 腰から崩れ落ちそうなほど、ほっとする――
 と同時に、少年は、少女の輝くばかりの可憐さに声を失った。
 初めて見るハカマ姿は愛らしく、白いキモノの肩に、和紙で結んだ髪がかかっている。
 二つに分けて、お下げ髪にしているのだ。
 雪明かりの中、東洋の衣装を着て、澪は力いっぱい嬉しい気持ちを表現しながら、
「こーゆー出会いかた2回目だねー。えーと、えとえと。どっかで見たような光景をまた繰り返すやつ!」
 デジャヴという単語は出てこないけれど、にこにこ。
 城はまだ激しく揺れ、不吉な唸り声をあげているのに、とっても脳天気だ。
「3回目だよ?」
「そーおー?」
「そう。昼休みにも、団らん室の所で俺を……って、そんなことよりっ!」
 危うく澪のペースに乗せられそうになって、澪の手を取り、
「何やってるの、こんな真夜中に!! もう3時まわってるよ!?」
「じょぎんぐしてたのー」
 えっへん。なおもマイペースに無い胸を反らす澪。
「ええ!? 早く寝ないと!!」

6-25 狂信者(デヴオ)たち

 午前3時。
 学校全体が跳びあがった。
 爆弾が炸裂するような轟音。大地が震え、夜空へ雪が全て弾け飛ぶ。
 窓ガラスが割れ、校舎の三角屋根から、折れた十字架が地上へ突き刺さる。
 とても立っていられない揺れの中、一瞬、人工物の光がひらめいた。
 懐中電灯の光だ。
 誰かが揺れる校舎の中から、這這の体で逃げ出そうとしているのだ。
 そして雪明かりの玄関に、滅茶苦茶な動きの光が現れ、
「助かったー!」
 転がるようにして、少年が、玄関のドアから表に飛びだした。
 凛々しい眉に意志の強そうな口元、好男子だが軽薄そーな印象の少年だ。
 ぜはぜは肩で息をつきながら、足元おぼつかなく、校舎から離れかけ、
「うわあ!」
 弾みに落ちた懐中電灯を、少年は慌てて、ポケットに突っ込む。
 瞬時に向こうが身を引いたので、ぶつからずに済んだのだ。
「ああああっ、えーと、これは……っ」
「わー。アーヴくんだー」
 言い訳に焦りながら振り返ると、澪だった。

6-24 狂信者(デヴオ)たち

  
>  
 
(闇の王よ目覚めたまえ。我らの王よ目覚めたまえ。
 我らの王は謀反にあった。狡猾な味方の裏切りにあった。
 そして未だに、眠りから覚めぬ。
 王よ、邪なる闇よ。
 偉大なる宇宙の、ほのぐらい光よ。
 今ひとたび、あの王国を。
 あの理想の国を)
 
 闇の底から、噴き上がるものがある。
 黒い炎。
 陰惨な炎影。
 邪なる闇の、摺り足する気配。
 邪なる闇を、たたえる呟き。
 毎夜毎夜、煮えたぎる大釜に、投げ込まれる材料。
 流産で捨てられた胎児の肝、こうもりの毛に犬のべろ、やもりの脚をこまかく砕き、肉団子は大釜に投げ込まれる。
 大釜の上に吊された青い巨大な肉団子は、まるで、この地球にそっくりだ。
 祈りを捧げながら、大釜の周りを回る。
 奇形の背骨、乱れた長い髪、こそげ落ちた眼球、骨と皮だけの身体。
 黒いフードを目深にかぶった、狂信者(デヴオ)たち。
 暗く暗く、くぐもった声で彼らは祈る。
 大釜から炎が、立ち上がる。
 外宇宙の神々の、ほのぐらい炎。