南域結界☆ ジェルソミーナ -202ページ目

6-38 灰色の百鬼夜行

 だが――
(おかしい――)
 マリーナに出撃命令を受けた時から、隊長は疑問を感じ続けていた。
(なぜ、先触れの「騒ぎ」で王が目覚める? 騒ぎを怖れるのであれば、飛び立つ瞬間を狙えというのではなく、地下に潜む状態を一掃しろ、と言うべきではないのか? あれではむしろ王の目覚めよりも――先触れが「飛び去ること」を怖れている、という感じだ。
 それに副長たちの報告を突き合わせれば、今回の先触れは、異世界の裂け目をこじあけて来たものではない。つまり、こちら側の世界の……闇。
 ……考えすぎでなければ、誰かが何かの都合に合わせて、「あらかじめ配備」しておいた先触れ、という考え方もできる)
 ――気にくわん――
 隠し事の多いその命令が、隊長にはなにより、気にくわなかった。
 ようするに自分たちは、全く信用されていないのだ。
 本来、学院一の技の使い手で構成されるべきゼロチームだが、実際は、学校を卒業したOBたちがその構成員の大半を占める。
 ここでさらに実力を磨き、長老会の推薦を受けて、さらにレベルの高いチームへ入り、さらに難易度の高い戦場へ出かけていくのが彼らの夢だ。
(偽りの情報が多いのは気にくわないが……)
 彼もまた、長老会へ選考書類を送った直後の身だ。不平は言わない。
 むしろこの難局を、軽い手際でかわしてみせよう。

6-37 灰色の百鬼夜行

 今回の作戦の目的は、学院の地下から飛び出そうとしている、「先触れ」の封じ込めだ。
 依頼者は、マリーナ理事長。
 マリーナの話が正しければ、「先触れ」の大群は今、城の地下から溢れだし、空へ飛び立とうとしている瞬間だ。
 先触れが飛び出せば、その騒ぎのために、地下に眠る「王」が目覚めてしまう。
 ――王の目覚め――
 ――旧王国時代の、最後の王――
 公国と学院との関係を、現状通り、穏やかに、平和的に保つためにも、絶対に、王は目覚めさせてはならない。そのためにも、「先触れは決して、空へ逃がしてはならない」というのが、マリーナの依頼だ。
『A4、配備完了』
『A5、及びA6。包囲網を完了しました』
「よし。A1、念のため引き続き、プレッシャーは学院全体へかけておけ」
『了解』

6-36 灰色の百鬼夜行


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 「先触れ」にしては様子がおかしい。
 そんな通信が入ったのは、ゼロチームが現場に配置を終えてすぐ。
 澪が到着する前のことだった。
「――先触れではない……!?」
『いや、いつもの先触れじゃないと言ったんだ』
 隊長の問いに、先触れの誘導を担当する異能の構成員が、城の地下から、口早に答える。
『大気圧による高プレッシャーをかけてみたが、こっちの術に、思ったような反応を見せない。これは、いつもの先触れじゃない気がする』
「僕も同感です」
 副隊長も静かな声で続ける。
「空間が破れる際の、いつも僕が感じる、あの嫌な感触がありません。大量の闇がうごめく、気配はするのですが」
「A3。話は聞いていたな? そっちから見てどうだ」
 耳につけた通信機に尋ねると、すぐさま返事があって、
「そうか。……副長、煙幕を張れ! プレッシャーに誘導されない可能性が高い。学校と校庭、その周辺域に煙幕を張り、そこから外に「先触れ」が漏れないようにしろ。迎撃網を拡大する!」