南域結界☆ ジェルソミーナ -194ページ目

6-56 王の封印

「こういう大変なことがあった時は、もっと早く言いなさいよ、マリーナ!!」
 ずっと年長の彼女に向かって苦言を述べる。と、マリーナは薄く微笑んだ。
 その、はっきりしない表情に、少女は一瞬、いぶかしげな顔をしたが――
 気を取り直し、作業用の薄絨毯を足元に広げる。
 とにかくここに腰を落ち着けて、王を封印できるものを作ろう!
 研究所に戻っている時間は無いし、気力なんかはさらに無いのだ。

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 冷たい白壁。
 蛍光灯が、点滅を繰り返している。
 ――取調室。
 ではなく、真夜中の、職員室。
 閑散とした部屋の中央には、体育教師や数学教師、実技教師に囲まれて、椅子の上、うなだれている少年の姿があった。
 赤みがかった紅茶色の髪。
 どんな女性も振り返る、凛々しい顔立ち。
 いつも溌剌とした輝きに満ちている瞳には、さすがに疲れが宿っていた。
「お前、地下へ降りただろ」
 何度、そう聞かれたことか。
 アーヴはその度に答える。
「……知らねーよ」

6-55 王の封印

 痛い。
 頭が痛い。
 しぶるマリーナから、少年の名前を聞き出しても、頭痛は治まらなかった。
「公国は、確実に攻めてくるわよ!? 王の封印が解けたことを知ったら」
 王国時代の話に、公国は異常なまでに、神経質(ナーバス)なのだ。
「封印が解けたっていうことは、あとは、目覚めるだけって状態じゃない。いやそれだけじゃないわ、そんなことよりも……ヤツは!! あああ! もう一度……棺桶に突っ込むわけにはいかないのっ!?」
「ティーナさん……よっぽど、お嫌いですのね」
「――あたりまえでしょ!!??」
 とんでもない剣幕で吼える。
 魂が抜け落ちそうなほど、最悪な気分で、少女は結んだ髪を振りほどいた。
 もう研究所に帰って、眠って、何もかも無かったことにしたい気分だ!
「私は、再度、封印しなおす手だてを、考えるわ!」
 いっそ異世界に突っ込んで、フリーズドライにでもしたほうが、後々、面倒がなくていいんじゃないのかしら!?

6-54 王の封印

「王の封印を、解いた!?」
 しぃっ声が大きいですわ。そうマリーナは制止したが、ティーナは声を荒げたまま、
「王って……。まさか、とは思うけど! あの、シュプロン王!?」
「ですから……」
 理事長は、戸惑うように瞳を深々と落とし、
「……あまり……話したくはなかったのですわ……」

 シュプロン王は、今からざっと、100年以上も昔の王だ。
 王国時代、最後の王。
 ワケあって、当時の天体魔術やら、闇科学をフル稼働させ――
 王は、「永遠に眠ったまま」にされた。
 正確には違うが、コールドスリープ(冷凍睡眠)のようなもの。

「……マリーナ。あんた、ここの墓守でしょ? 王の棺と、王の眠りを守るのが、理事長、つまりは墓守である、あんたの役目だったはず」
「私も……うかつだったんですわ……」
「それで――その、封印を解いた少年、とかっていうのは……?」