南域結界☆ ジェルソミーナ -192ページ目

6-61 紅の令嬢


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 ……なるほどねえー。
 眉間しわを作りながら、渾身の力で、少女はネジを締め上げる。
「地下で『彼らの王』が復活しかかっているって、あやかしや魔物たちは、気付いたわけだ。だから、王を取り戻すために、百鬼夜行になって、大群、城へ押し寄せてたのねー!」
 話しながらも、手は止まらない。
「<彼らの王>ではないですわあー」
 珍しくマリーナは、不満そうだ。
 紅茶ポットにお湯を注ぎ、
「<わたくしたち>の、王様ですのよ?」
「みんなそーゆーこと、言うのよねー」
 つかれたー。と、息を吐き、ティーナは引き続き、輝くガラス管になにやら怪しげな気体をポンプで押し込んだ。
 あぐらを組んだ足元、薄絨毯の上には、機械が所狭しと並べられている。
 電圧計のようなもの、黒光りする無機質な箱、鉄さびの浮いた天秤に、とぐろを巻くゴムの管。しきりに液体が落ち続けるフラスコ管と、年季の入った工具類。油の染み込んだ、安タオル。

6-60 王の封印

「もう、やっちまいましょ。許可は降りてるんでしょ?」
 周囲の教師たちが、苛立たしそうに舌打ちする。
 尋問の教師もよほど腹に据えかねたのか、床に椅子ごと倒れ伏したアーヴの方を振り返りもせずに、
「ああ! 更正の余地もないらしい! 残念だが、始末させてもらおう」
 とんでもないことを言い出した。
「手術台の用意。よく切れるメスを持ってこい。脳を改造する」
「せ、せんせいっ?」
「安心しろ! 我々の言うことを聞く、良い子になってもらうだけだ! あれほどの大罪をしでかしておきながら、命が助かるだけでも奇跡だと思え?」
「ちょ……っ!」
「理事長の命令だ。お心遣いに、感謝しろ!」
 ――理事長の、命令――!?
「俺、タバコ吸っただけだろ? なんで、脳の改造まで!?」
「王の封印を解いておきながら……。しらじらしい!!」
 どんなに頑張っても、椅子に縛りつけられたアーヴのロープは固く、切れない。
「わざわざカギまで盗み出し、地下へ封印を解きにいくとは!! 正直、お前がここまでやる悪党だとは思ってもみなかったよ!」
 そう言って教師は、よく光るメスを、手に取った。

6-59 王の封印

 なぜ地下へ降りたのか? と聞かれても、まさか、
「澪ちゃんと、『いーこと』しようと思って降りました!!」
 とは――答えられない。
 しかも、未遂に終わってしまった辺りが、なんともアーヴ的に淋しい。
 タバコの吸い殻を落としてきてしまったのは、少女の愛らしい相貌に思わず見とれてしまったからだ。
 そうだ俺、禁煙しよう。可愛い子ちゃんには、煙草は毒だもんなあ……
「……せんせ……」
「あー? やっと答える気になったか……?」
 やれやれ、と、教師は膝を打ち、
「こんな騒ぎを引き起こしてるんだからなあ……このままじゃお前、退学……」
「俺、女の子たちを守るために! 禁煙します!!」
「その前に、未成年だろーがっ!!」
 教師の右フックが飛ぶ。
「ふざけんな!!」