2 漆黒の門番
一章 漆黒の門番
「あいつ、何と言った。わたしに何と言った……?」
石畳に膝をつき。宰相は、震える唇で、呟いた。
「あの、わたしに逆らうあの木偶(でく)は。わたしを侮蔑する、あの木偶は。わたしを見下し、わたしを嘲笑い、わたしを……ことごとく否定する、『あの、木偶』は! ……昨夜、何と言った? この、わたしに……」
淡雪が、帝都の空に、舞っている。
雪が、彼の背中に、溶けていく。
城はまだ――早朝の夢に沈んでいる。
彼は、目を見開き、暗い空に、額を上げると首を振り、
「いや、違う! やめろ!」
泣き声ともつかぬ、悲鳴を上げた。
「……そんなことを……。そんな言葉を。間違っても言うな……!」
震える爪が、いっそう石の割れ目に、深く突き刺さる。
「お前は『敵』ではないのか! わたしを否定するためだけにあるのではないのか! そうでなければ……では、一体お前は、何なんだ! 何のために……!」
ずきん、と体の中央に痛みがはしった。
強く苦しい、しかし暖かで、甘い痛みだった。
彼はとっさにひらめいたその「答え」を、ほぼ反射的に、脳裡から抹消した。
「やめろ!」
声に驚き、雪の破片が、輪を描いて消える。
「そうだイリニアだ。イリニアとの戦いが始まったんだ。イリニア戦だ、丁度いい!」
彼は叫んだ。
昨夜のことも、なにもかもを忘れるために、無我夢中で何度も叫んだ。
パストラル皇帝ゲスタラードのもとに、イリニア帝国からの『宣戦布告文』が届けられた、翌日の早朝のことである。
雪の舞う空に、まだ春の暖かさはない。
ロード城は不気味なほど、安らかな眠りについている。
例え今、どこかの大地が、混戦状態に陥っていても……
国境から、はるか離れたこの都が、戦争を実感するには、まだまだ相当の時間が必要であった。
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「あいつ、何と言った。わたしに何と言った……?」
石畳に膝をつき。宰相は、震える唇で、呟いた。
「あの、わたしに逆らうあの木偶(でく)は。わたしを侮蔑する、あの木偶は。わたしを見下し、わたしを嘲笑い、わたしを……ことごとく否定する、『あの、木偶』は! ……昨夜、何と言った? この、わたしに……」
淡雪が、帝都の空に、舞っている。
雪が、彼の背中に、溶けていく。
城はまだ――早朝の夢に沈んでいる。
彼は、目を見開き、暗い空に、額を上げると首を振り、
「いや、違う! やめろ!」
泣き声ともつかぬ、悲鳴を上げた。
「……そんなことを……。そんな言葉を。間違っても言うな……!」
震える爪が、いっそう石の割れ目に、深く突き刺さる。
「お前は『敵』ではないのか! わたしを否定するためだけにあるのではないのか! そうでなければ……では、一体お前は、何なんだ! 何のために……!」
ずきん、と体の中央に痛みがはしった。
強く苦しい、しかし暖かで、甘い痛みだった。
彼はとっさにひらめいたその「答え」を、ほぼ反射的に、脳裡から抹消した。
「やめろ!」
声に驚き、雪の破片が、輪を描いて消える。
「そうだイリニアだ。イリニアとの戦いが始まったんだ。イリニア戦だ、丁度いい!」
彼は叫んだ。
昨夜のことも、なにもかもを忘れるために、無我夢中で何度も叫んだ。
パストラル皇帝ゲスタラードのもとに、イリニア帝国からの『宣戦布告文』が届けられた、翌日の早朝のことである。
雪の舞う空に、まだ春の暖かさはない。
ロード城は不気味なほど、安らかな眠りについている。
例え今、どこかの大地が、混戦状態に陥っていても……
国境から、はるか離れたこの都が、戦争を実感するには、まだまだ相当の時間が必要であった。
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★登場人物
イリニア暦 6042年 3月
・ジェルソミーナ・レシング ♀ (22)
:生真面目そうでかなりぬけてる、魔術師成り損ね・技師........「結界師」。
恋人(リュイ)にもらった、青いリボンが、宝物。
魔法道具(羽筒)によって召還される。
・マーカス・キーツ ♂ (30)
:悪政を敷く帝国宰相。
人を「魅了」する力を瞳に持ち、その力で世界滅亡を企てる。
が……思いがけない存在の出現に、苦しみ続ける。
・ジュンクリフ ♂ (22)
:優秀だが、お気楽な色男。フィーネをちょっと、気にしている。
マイエル特殊部隊の、参謀・顧問。中尉。
・皇女 エオリオ ♀ (24)
:皇帝ゲスタラードの娘。
婚約中とはいうものの、まだまだ遊び足りない、お姫さま。
上に、3人の兄がいる。
・フィーネ ♀ (21)
:エオリオの世話役。総司令官ガービンの、一人娘。
ジュンクリフに、心惹かれている様子……?
・レイリ ? (?)
:「マチルダの姉」 を名乗る、謎の少女。
・シトラビンス准佐 (27)
:おっとりのんびりした、諜報部のお姉さん。
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・ジェルソミーナ・レシング ♀ (22)
:生真面目そうでかなりぬけてる、魔術師成り損ね・技師........「結界師」。
恋人(リュイ)にもらった、青いリボンが、宝物。
魔法道具(羽筒)によって召還される。
・マーカス・キーツ ♂ (30)
:悪政を敷く帝国宰相。
人を「魅了」する力を瞳に持ち、その力で世界滅亡を企てる。
が……思いがけない存在の出現に、苦しみ続ける。
・ジュンクリフ ♂ (22)
:優秀だが、お気楽な色男。フィーネをちょっと、気にしている。
マイエル特殊部隊の、参謀・顧問。中尉。
・皇女 エオリオ ♀ (24)
:皇帝ゲスタラードの娘。
婚約中とはいうものの、まだまだ遊び足りない、お姫さま。
上に、3人の兄がいる。
・フィーネ ♀ (21)
:エオリオの世話役。総司令官ガービンの、一人娘。
ジュンクリフに、心惹かれている様子……?
・レイリ ? (?)
:「マチルダの姉」 を名乗る、謎の少女。
・シトラビンス准佐 (27)
:おっとりのんびりした、諜報部のお姉さん。
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