南域結界☆ ジェルソミーナ -17ページ目

2 漆黒の門番

   一章 漆黒の門番



「あいつ、何と言った。わたしに何と言った……?」

 石畳に膝をつき。宰相は、震える唇で、呟いた。
「あの、わたしに逆らうあの木偶(でく)は。わたしを侮蔑する、あの木偶は。わたしを見下し、わたしを嘲笑い、わたしを……ことごとく否定する、『あの、木偶』は! ……昨夜、何と言った? この、わたしに……」

 淡雪が、帝都の空に、舞っている。
 雪が、彼の背中に、溶けていく。
 城はまだ――早朝の夢に沈んでいる。
 彼は、目を見開き、暗い空に、額を上げると首を振り、

「いや、違う! やめろ!」
 泣き声ともつかぬ、悲鳴を上げた。
「……そんなことを……。そんな言葉を。間違っても言うな……!」
 震える爪が、いっそう石の割れ目に、深く突き刺さる。

「お前は『敵』ではないのか! わたしを否定するためだけにあるのではないのか! そうでなければ……では、一体お前は、何なんだ! 何のために……!」

 ずきん、と体の中央に痛みがはしった。
 強く苦しい、しかし暖かで、甘い痛みだった。
 彼はとっさにひらめいたその「答え」を、ほぼ反射的に、脳裡から抹消した。
「やめろ!」

 声に驚き、雪の破片が、輪を描いて消える。
「そうだイリニアだ。イリニアとの戦いが始まったんだ。イリニア戦だ、丁度いい!」
 彼は叫んだ。
 昨夜のことも、なにもかもを忘れるために、無我夢中で何度も叫んだ。

 パストラル皇帝ゲスタラードのもとに、イリニア帝国からの『宣戦布告文』が届けられた、翌日の早朝のことである。
 雪の舞う空に、まだ春の暖かさはない。
 ロード城は不気味なほど、安らかな眠りについている。

 例え今、どこかの大地が、混戦状態に陥っていても……
 国境から、はるか離れたこの都が、戦争を実感するには、まだまだ相当の時間が必要であった。


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1 漆黒の門番

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       養父シルビアは、娘に言った。
     『 軍人だけにはなるんじゃない。
      ヤツらは俺たち、ドロボウよりもタチが悪い、
      根性が腐ってやがるんだ 』
       幼いミーナはうなずいた。
     ―――――――――――――――――


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>★登場人物

★登場人物

イリニア暦 6042年 3月

ジェルソミーナ・レシング ♀ (22)
 :生真面目そうでかなりぬけてる、魔術師成り損ね・技師........「結界師」。
 恋人(リュイ)にもらった、青いリボンが、宝物。
 魔法道具(羽筒)によって召還される。

マーカス・キーツ ♂ (30)
 :悪政を敷く帝国宰相。
 人を「魅了」する力を瞳に持ち、その力で世界滅亡を企てる。
 が……思いがけない存在の出現に、苦しみ続ける。

ジュンクリフ ♂ (22)
 :優秀だが、お気楽な色男。フィーネをちょっと、気にしている。
 マイエル特殊部隊の、参謀・顧問。中尉。

皇女 エオリオ ♀ (24)
 :皇帝ゲスタラードの娘。
 婚約中とはいうものの、まだまだ遊び足りない、お姫さま。
 上に、3人の兄がいる。

フィーネ ♀ (21)
 :エオリオの世話役。総司令官ガービンの、一人娘。
 ジュンクリフに、心惹かれている様子……?

レイリ ? (?)
 :「マチルダの姉」 を名乗る、謎の少女。

シトラビンス准佐 (27)
 :おっとりのんびりした、諜報部のお姉さん。


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