形あるものいつかは必ず壊れるという儚すぎる自然の摂理については前回のブログに書いた。
最終的にはビールの話になってしまうのだが、永遠に続くものなど、この世に存在しないということは間違いない。先日の我が家の冷蔵庫の話もしかりだ。
22年間連れ添った、いや、連れ添いすぎてしまった我が家の冷蔵庫の冷凍機能が使えなくなり、やがて冷蔵機能も全て壊れて買い替えを余儀なくされるという記事を書いてから、まだひと月も経っていない。
私の両親は糖尿病だった。正確には父は過去形、母は現在進行形である。過去形にしているのは、すでに他界したという意味だ。私は糖尿病家系のサラブレッドなのである。なので食事には結構気をつかっている。白米は家でほとんど食べない。頭の中でざっと昨年1年間の統計をとってみると、家で白飯を食べたのは2日か3日くらいではないだろうか。それも子供たちが残してもったいないからという理由でである。
その他、炭水化物全般を極力取らないようにしているし、もちろん甘いものも控えている。しかし食べるときは食べる。チートデーと名付けて大酒飲み友達や会社の仲間との飲み会はリミッターを取り除いて、これでもか!というくらい無限大に飲み、食べるのだ。
話が逸れたが、私は食べない家での白米なのだが私以外の家族は三食きちんと食べるので米は毎日炊く。在宅勤務の時は私が米を研いで家族が帰る時間に合わせて炊飯器のタイマーをセットしたりもする。そんなある日、PCで仕事の資料を作ったりしながら集中していると、なにやら聞きなれない音がしてきた。
「プシーーーーッ!」
ムムッ!な、なんだこれは?音のする方に目を向けると、決められた時間に炊き上がるように先ほどセットした炊飯器が運転を開始しているのだが、フタの隙間からもの凄い水蒸気が上がっているのである。我が家の炊飯器は圧力式のやつなのでおそらくフタのパッキンか何かに寿命が来たのだろう。音と共に蒸気を拭き上げる姿。やれやれなのだ。フタの裏についているゴムパッキンをのばしてみたり、よーく掃除したりしたが気休めにもならず、その後ご飯を炊くときは毎回激怒した機関車トーマスのような爆音を立てて炊飯完了という流れになってしまった。
今年の夏はなんだか変な夏だった。例年と比べると夏の始まりに曇りの日が多く、気温が低い日が続いたのでラッキーなどと思っていたのだが7月の終わりになると酷暑続きとなった。ほぼ40度の日が続くようになると、リビングで在宅勤務していると絶対にエアコンをつけなくてはならない。つけないと確実に死んでしまうであろう日中帯の昼下がり、我が家のエアコンは冷蔵庫と同様超ベテラン選手であった。運転を開始すると「ブォーン」という唸りと共に「カタカタカタ」と振動でカバーが小刻みに揺れ始める。それがうるさいので養生テープでカバーをとめてみるのだが、しばらくするとまたうるさくなってくる骨董品なのだ。
そして致命的なことが起きた。ある日、カタカタカタといつもの音をたてながら運転しているエアコンの方から「ポタ・ポタ・ポタ」と聞きなれない音がし始めたのである。ムムッ!なんだ?音がしている方を恐る恐る見ると、リビングの床が濡れているではないか。おお!雨漏りか!?こんなに天気がいいのに!などと無理やり違う方に気持ちを逸らせてみるのだが何の足しにもならないことは、なんとなくわかっている。上を見上げるとエアコンの端の方から一定間隔で水滴が落ちてくるのである。クソーッ!お前もか!
幸い我が家は狭いマンションなので、ドアを開けて各部屋に付いているエアコンのどれかをつければそれなりに家全体が冷える。そのようにして誤魔化していたが、これからは季節が移り変わり寒い冬を迎えるとなるとそうはいかないだろう。ちゃんとリビング用にエアコンを構える必要があることを悟った。
そして8月の終わりから9月にかけてもなんだか気候がおかしい。とにかく雨が多いのだ。快晴の日は数えるくらいで、ほとんど曇りか雨が続いている。そうなるとどうなるかというと、洗濯物が乾かなくなるのは自然の成り行き。そういう我が家は5年ほど前に洗濯機を買い替えた。
買い替えた理由は単純に前の洗濯機が壊れたからなのだが、洗濯機は毎日使うモノであり、空白期間を作ることは許されない。まして我が家は子供が2人いて部活動などをやっているのでただでさえ洗濯物が多い。なので壊れている間はコインランドリーに行って洗濯すれば良いなどと悠長なことは言っていられないのだ。
急いで近所の家電量販店を数軒回ったが、どこも納品には1週間かかるというではないか。私はそこで考えた。アマゾンのプライム会員なので思い切って大型家電も買っちゃおう!サイトを見ると2日後に配送されるというではないか。すぐにポチって明後日に配送、設置、引き取り完了して5年間の保証がついた。なんて素晴らしいのだ!アマゾン最高!私は世の中の進歩に驚くと共に心から喜んだ。その当時は。
悪天候が続く今日この頃、洗濯物が部屋干しになってしまうのが煩わしいので、タオルなどは乾燥機にかけてしまう方が便利だし清潔である。在宅勤務時の私は掃除洗濯家事オヤジに生まれ変わるので、家族の衣類を分類して部屋干し組と乾燥機組とに分けて洗うことにしている。部屋干し組の洗濯が終わったら、タオル類をドラムにブッこんで、洗いから乾燥まで一気通貫コースのボタンをピピッと押すと、あとは楽ちん仕上がりを待つだけである。
その後、部屋干し組を部屋の中に干し終わったら仕事に取り掛かるのが在宅勤務時のルーティンである。リモート会議などでPCと向き合っていると突然「ピピピピピピッ」という聞いたことのないビープ音が鳴って家の中が静かになった。私はすぐに立ち上がり、音がした方に向かうと、乾燥が完了するにはあまりに早すぎる時間帯に洗濯機が止まっていることに気づいた。しかも液晶画面には見たことのないエラーコードが出ているではないか。嫌な予感だ。
とりあえず電源を一度切って入れなおし、乾燥モードを開始させるといつも通りの音がし始めて運転を開始した。ホッとしながらも一抹の不安を感じながら仕事を再開したのだが、私は明らかな異常に気づいていた。洗濯機を再起動させる前にドアを開けてドラムの中を見てみたのだが全くと言っていいほど温かくなっていなかったのである。洗濯物が冷たいまま湿っているだけなのだ。エラーコードも調べてみたがヒートポンプの異常を示すものだった。
そして恐れていたことが起きた。再起動した洗濯機がまた同じビープ音を鳴らして止まったのである。同じエラーコードも出ているし、ドラムの中も冷えたままだ。とりあえず業者に出張修理を依頼して、タオルは部屋の中に干した。保証は延長して5年にしていたのだが、1年ほど過ぎている。なんというタイミングなのだ、クソーッ!
3日後にやって来た修理業者に状況とエラーコードを伝えると、私と同年代と思われるその作業員は手際よく電源ボタンなどをいろいろ押してチェックを始めた。ものの5分もかからなかっただろう。
「あらーっ、お客さん、ヒートポンプがダメですね。交換だと8万円くらいです」
とどめを刺された。事前に調べておいた最悪パターンの修理費用とぴったり、トシちゃん、じゃなかった、マッチしたからである。本日3回目のクソーッ!
こんなこともあろうかと、生成AIにいろいろ相談済みだった私。修理費用がいくらだったら修理する、いくらだったら買い替える、という基準を設けていたのだが、あっさり買い替えパターンとなってしまったのである。クソーッ!!(4回目)
修理の作業員が帰ると半ギレの頭の中で考えた。あー!もうすぐ購入だ。もちろんネットショップで。私はこれまた事前に調べておいた最悪の買い替えパターンの場合に購入するであろう機種を選定済みなのである。そしてすぐにポチった。2日後に到着する予定なので楽しみである。
その日、仕事が終わるとすぐに近所の家電量販店に向かった。こうなりゃヤケだ。全部買い替えてやる!私は鼻息を荒げ白眼を剥きながらスキップで目的の店に向かった。たのもー!
まずはエアコンだ。東京都はゼロエコミッションキャンペーンと銘打って古い家電を新しいエコなモノに買い替えるように補助金を出している。先日買い換えた冷蔵庫もそれを使ってかなり割引になった。エアコンもその補助金が使える条件を満たしているので店員に相談して、かなりお得になるような価格にしてもらった。
「ああ、そうだ!炊飯器もだった!」
私はこれ見よがしにその店員に告げると炊飯器コーナーに向かう。店はどうも半期に一度の安売りをやっているようで在庫処分のお値打ち価格の機種が結構並んでいるのが分かった。古い炊飯器は日立製を2世代使ったので今回は老舗の象印かタイガーにしようと決めていた。同じ圧力式のもので良さそうなお値打ち品があったので即決。店員に指定するとともにもうひと声お値引きよろしく!と告げた。
「お代官様もワルですねー」
そんな表情でニヤけた店員は、任してくれ!と言わんばかりにレジの方に素早く走って行った。私もそれについていこうと歩き始めた途端にすぐに足を止めた。非常に重要で、かなり見覚えのあるモノが目に入ったからである。それは何かというと、さっきネットで注文した洗濯機と同じものが売られていたのである。しかもネットの金額より1万円安いではないか。私がその洗濯機の前に釘付けになっていると洗濯機コーナー専門の店員が近寄って来た。
店「お客さん、何かお探しですかー?」
すぐに返した。
C「いや、これ安いですねー。実はさっきコレと同じのをネットで買ったんですよ」
私はそう言って店員にスマホの画面に出した商品ページを見せた。
店「ああ、お客さん、これ似てますけどメーカーが違いますね」
おお、私は勘違いをしていたのである。
店「お客さんが買ったのは古い機種なのでウチにはもう在庫がないですねー。ちなみにお客さんが買ったやつの一つ新しい機種がコレです」
店員はそう言って近くにある洗濯機を指さした。おお!そうか。私がネットで買ったやつは型落ちだったのだな。そういえば24年モデルと書かれているではないか。だから安いのか。目の前にある最新型の洗濯機を見ながら納得していると、店員が続けた。
店「実は10月にまたコレの新しい機種が出るので今、在庫処分でお値打ち価格なんですよー!」
価格を見るとネットで買った金額より5万円ほど高かった。
C「いや、ちょっと高いですね。もう少し安くならないですかね?」
私はダメもとで言ってみた。
店「ちょっと待ってくださいね。ネットの金額はいくらだったんですか?」
C「設置引き取り5年保証込でこの金額です」
店員にスマホの注文画面を出して見せながらそう言った。
店「お客さん、ここまでだったら下げられます」
店員が弾いた電卓の液晶画面に出た金額はネットの価格より1万円高い金額だった。しかし現在の最新型で6年保証付き、設置引き取りも込みなので悪くはない。
C「もうちょっと頑張れないですかねー?今日はエアコンと炊飯器も買ったからなー」
私は急遽、悪代官ぶりを存分に出したネゴシエーターCornに生まれ変わる。
店「分かりましたお客さん、ではネットの価格と合わせます。それならどうですか?」
C「ありがとうございます。交渉成立としましょう!」
私もおおいに納得した。
店「あっ!お客さん、洗濯機のドアの向きですが右開きで大丈夫ですか?在庫はそれしかないんですよ」
おいおい、ここへ来てなんだよ。我が家の洗濯機置き場は狭く、構造上左開きのドア限定なのである。
C「いや、ダメです。ドアの向きはそれじゃダメです。でも、この展示品は左に開くじゃないですか。コレ売ってくださいよ。」
店「ちょっと待ってくださいね」
店員はそう言ってレジの方に駆けて行った。上司に相談するのだろう。
店「お客さん、これで大丈夫です」
息を切らせて戻ってくると、30代前半に見えるオタク系の店員がそう言った。
C「でもなー、展示品だからなー」
私は後ろに手を組んで下を向き、足はサッカーボールをゆっくりけるような、困った仕草でそう言った。
店「分かりました、あと1000円下げます」
いいね、話が分かるオタクだ!
店「展示品ですが傷はないと思います、、、」
店員が言い終える前に私が遮る
C「ありますねー」
全く気にならない小さな傷を見つけてそう言った。
店「分かりました、あと1000円下げます」
ガシッ!
私はオタクと固い握手を交わし、商談は成立したのであった。
レジ横にある商談用の椅子に座り、百年間のローンを組んで会計を済ませた。すぐに振り返ると満面の笑顔でヨダレを垂らし、白目を剥きながら超高速スキップで帰宅した。そして青ざめた。
あ、ネットショップのキャンセルをしていないではないか。急いでスマホを手に取り注文画面を見ると、一層青ざめた。商品はすでに発送済みのステイタスになっており、キャンセルする画面がどこを探しても出てこないのである。注文画面からいろいろと探しまくって、やっとたどり着いた画面を見て再び青ざめる。
「今回の注文にキャンセルできる商品は存在しません」
そこには冷たいメッセージのみが現れるだけだった。ど、どうしよう。この際だ、2台置くか!いや、アホか!そんなことできるほど我が家は広くない。いや、その前にそんなお金などどこにもない!焦る気持ちを押さえて頭をフル回転させる。とりあえず2台買って1台はすぐにメルカリかリサイクルショップに売るか。いやいや、メルカリでどうやって発送するのだ?リサイクルショップなんかかなり足元を見られて買いたたかれ大損するに決まっているだろう。誰か知り合いに買ってもらうか?
あーでもない、こーでもないと一人冷や汗をかきながら困り果てていると妻がやって来た。
「電話して断ればいいでしょ。返品できないお店なんてないと思うよ」
彼女は冷静にそう言った。なるほど、確かにそうだ。私は早合点しすぎる傾向が強いようである。洗濯機の到着予定は明後日、明日朝一番でキャンセルの電話すればよいだろう。
翌朝、ネットショップに連絡すると配送会社に連絡するように言われたのでタライ回し先の電話番号を教えてもらう。そして、そこに電話して都合の良い嘘八百の事情を話すと心よくキャンセル対応をしてくれた。返金もバッチリである。やれやれなのだ。
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その日の夜
チートデーとして設定し、祝杯。





