前回から続く。

 

 

新潟に向かったオジサン二人は高速道路の高崎インター出口付近ででタイヤがバーストしてしまうアクシデントに見舞われた。幸い大事には至らず、レッカー車によって救出され、その日は高崎市内に宿泊することになった。

 

深夜にいきなり高崎観光客と化した我々はもちろん夜の街に繰り出し、大当たりの居酒屋を見つけるのである。素晴らしい宴を開いた後はホテルに帰り、部屋で飲み直しの会まできっちりこなした後、深い眠りにつくのであった。

 

 

翌日、私はホテルに泊まるといつもベッドのギュッとした布団に入らず、そのまま布団の上で寝てしまうのだが今回もそのように寝たまま目が覚めた。時計は7時過ぎ。朝食付きで9時が営業終了だったので、まずは風呂に入ることにした。

 

湯船にお湯をためて浸かることにする。起き抜けの寝ぼけた頭なので心臓に刺激を与えないようにゆっくりとお湯につかったのだが、左のヒジに突然激痛が走った。見てみると赤くなったすりむき傷がある。天を仰いで昨夜の記憶をさかのぼる。おぉ、思い出した。昨夜、酔っぱらったまま寝ぼけてトイレに行ったときにバランスを崩して風呂桶に尻もちをつく姿勢で転んだのだった。その時にヒジをすりむいたのだろう。オジサンの酔っぱらいはこれだからいけない。

 

ヒジの痛みに耐えつつ、しかし朝風呂は気持ちの良いモノ。群馬県高崎市で思いがけず小原庄助さん気分を満喫することになったのだった。

 

 

朝食はよくあるバイキングスタイルだ。私は普段朝食を取らないのだが、お腹が減っていないから食べないわけではなく、健康維持の一環でお昼まで我慢しているのだ。今回はそのような我慢は一切せずに食べたいものを好きなだけ食べる。お皿にどんどんと料理をのせすべて完食した後、おかわりしようと思ったがやめておいた。勢いにまかせて食べると時間が経つにつれて腹が膨れ、後悔するに決まっているからだ。

 

部屋に帰り、チェックアウトの準備をしているとT川氏が私の部屋をノックして入ってきた。見ると顔が青くなっている。昨日いろいろとメモした旅ノートを貸してほしいと言ってきたので手渡した。するとT川氏はすぐに自分の部屋に戻っていった。


あとから理由を聞いたところ、私用の携帯電話が行方不明になっていたそうだ。幸いすぐに見つかるのだが、電話をなくすというのは致命的なダメージをくらう。焦るのも当然だ。

 

チェックアウトの時間は10時だったのでそれまでに、バーストしたタイヤの修理手配をすることになった。T川氏が事前に計画していた内容を保険会社に伝えて、その通りにしてもらった。

 

まずはオートバックスに電話してタイヤの在庫を確認、交換の予約も取れた。バーストロッカーズ(レッカー車)とはオートバックスで待ち合わせをする。私たちはタクシーで20分ほど離れたオートバックスを目指す。このような段取りで決まった。

 

 

チェックアウト時に見たホテルのロビーにかけてあった絵。まるで我々の思いがけない旅のことを表しているようだ。

 

 

無事にオートバックスでバーストロッカーズのメンバーの方と合流した。昼間に見るそのタイヤは思った以上に迫力がある。

 

 

かろうじてタイヤのウォールで立っている。

 

 

断裂。バーストの地獄絵図。生きてて良かった。

 

このあとレッカー車の優しい先輩と別れてタイヤ交換の待ち時間となった。

 

 

なかなか作業完了放送で呼ばれないのでドギマギしたが、タイヤ交換は無事に終了した。ピカピカタイヤがまぶしい。

 

 

よっしゃ!いよいよ再出発。アンコールが鳴りやまないライブハウス高崎に別れを告げて、いざバーストロッカーズは雨上がりのハイウェイを疾走するのである!

 

 

おぉ!あれはなんだ!?

 

 

あーっ!昨日、まさしくここでバーストした地点ではないか!

新品タイヤを履いたT川氏の車は絶好調で高速道路を駆け抜けた。3車線から2車線に変わり、伊香保、赤城山と過ぎてゆく。


そして順調に長い長い関越トンネルを抜けると、、、

 

 

なんと!そこは雪国だった。川端康成の小説そのものの体験。小雪がちらつく別世界が待っていたのであった。

 

 

ガーラ越後湯沢。

 

 

米どころの広い田んぼには3月でも真っ白な雪がまだまだ多く積もったままだった。

 

 

東京から来た我々には嘘のような景色が続く。延々と北国を進んでいった先、今回の目的地である聖篭新発田インターで高速道路を降りた。

 

 

北海道のような一本道を進むと。

 

 

見たかった日本海が広がった。美しく、そして強風にあおられた荒波がまぶしかった。来てよかったネ。

 

 

とりあえず宿に入る。歴史を感じさせる旅館だった。

 

 

小さな部屋は旅館というより民宿のようだった。風呂トイレナシだが、大浴場がついていた。難点はタバコ臭いこと。

 

 

目的を果たす前に街を散策する。ここは新発田市。自衛隊の博物館があった。きれいな建物である。

 

 

遠くに新発田城が見える。

 

 

そして今回の目的地、目指す店はここなのである。

 

 

入り口がカッコいい。我らサラリーマンにはちょっと入るのをためらわせるような構えである。

 

 

気にせず進む。

 

 

どんどん入る。ここは以前ブログに書いた想い出の店である。私が今まで飲んできたビールの中で一番美味しかった(美味しい)ビールを出してくれる店なのである!力強く!

 

 

今回の旅の目的はこの店で最高のビールと酒、料理を堪能すること。このことだけのためにやって来た。悲しいことに私が愛したこのお店が2023年3月いっぱいで閉まってしまうというお話を聞いたのだ。私はいてもたってもいられずT川氏を誘って飛んできたのである。

 

悲しいことなのだが、板前さんと女将さんもそろそろゆっくりしたくなる年齢に差し掛かったとのことで、思い切って今月いっぱいで卒業することを決めたそうだ。事前に予約しておいたので、私たちが店に入ると、あのいつもの優しい女将さんの素敵な笑顔が出迎えてくれた。

 

 

そして何も頼まないまま、corn史上最強のビールが目の前に現れるのである!!!見てくれこの完璧な生ビールを!

 

 

涙をこらえて乾杯ッ!

 

 

お通しに出てきたのはバイ貝とフキの煮つけ。corn史上最強に旨い!

 

 

食べるのがもったいない肴オールスターズ。海の幸、山の幸、全てにおいて旨すぎる。見た目の通り上品なのだが全部の料理が酒に合う筋を一本持っている。酒飲みの舌を知り尽くしている。素晴らしい!

 

 

カニ、カニ、カニ。ここは天国カニ?間違いない!天国だ!

 

 

超スーパーウルトラマッハストロングべりべり美味しい脂ののったハラスの塩焼き。嚙もうと思ったら溶けてしまう。あっさりとした塩味が後味で残る。超絶品だった。

 

 

銘酒、北雪。ビールも日本酒も何でも飲みます。飲ませてください!最強です!

 

 

日本酒が出たタイミングで刺し盛りがスーッと出てきた。やはりここは天国以外の何物でもない。

 

 

カッコいいお鍋の中身は・・・

 

 

まだまだ肌寒い北国の板さんが作る我ら酒飲みのために鍋。美味しいに決まっている!

 

 

 

銘酒、加賀の井、純米大吟醸。今日は贅沢させてもらいます!うーまいっ!

 

 

白魚の踊り食い。贅沢の極み。

 

 

村上牛のステーキ。トロけた、、、犯罪級の旨さ。

 

 

最後は〆の細巻き風おにぎり。もう言うことなんて何一つありません。私が愛したこのお店は間違いなくこの世のまほろば。天国であると再認識した。

 

こんな最高のお店が閉まってしまうなんて、、、悲しすぎる。板さんと女将さんに昔話など聞かせてもらう。私が初めてこの店を訪れた時の話もしてくれた。子供のこともきちんと覚えてくれている。そんな子供たちが今年で高校と中学に進学することを話すと驚いた表情を見せるとともに、わがことのように喜んでくれた。嬉しい。

 

この店を開いて20年。その前の店を合わせると27年間この美味しい料理と美味しいお酒を出してきたそうだ。いろいろな苦労話などを聞かせてもらっていると心からお疲れ様でした、という言葉と一緒に涙も溢れ出てきた。

 

本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございます。

至福とはこのことを言うのだ。感動の宴を過ごした我らは余韻に浸りつつ店を出た。

 

その後はもちろんもう一軒行くのだ。

 

 

ラストオーダーまであと30分しかなかった。

 

 

とりあえず一杯いでやめて、ホテルに戻ることにした。途中もちろんコンビニに飲み直しのビールを買いに寄る。

 

 

格好良い神社の前を通って宿へと戻った。酔い覚ましに大浴場で熱い湯につかり今夜の素敵なまほろば体験を語り合った。

 

部屋に入り軽く飲みなおしの乾杯をしたら、さすがにすぐ眠くなった。

 

楽しすぎて最高の時間はあっという間に終わるということをよく知っているが、北国の素敵で切ない夜はまさしくそのような夜となって私たちの目の前を疾風のごとく過ぎて行ったのであった。

 

 

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【この日のビール】

中ジョッキ:6杯

ロング缶:2本

日本酒:0.5合

米焼酎:1杯

 

いやぁ、この日も満足な日となったのだ。

 

ビールをこよなく愛する皆さま。

続きはまた次回。

 

今宵は華金。

 

やはり今日も乾杯なのだ。

ムフフフフ。