ゼロ戦の修理にコンビレンチは使ったか?
★2022年1月18日追記
赤トンボ(九三式中間練習機)でコンビレンチが使用されていたことが分かりました。⇒ 詳細は、こちらにて。
★2022年8月14日追記
海軍と陸軍の両方で5機種のエンジン整備工具にコンビレンチが採用されているのが分かりました。
海軍…光、神風、アツタ ⇒ 詳細は、こちら
※光は1936年に採用されていて、恐らく日本で一番最初のコンビレンチ
陸軍…ハ12(海軍呼称:神風)、ハ8(海軍呼称:光)⇒ 詳細は、こちら
※ハ12、ハ8共に海軍とは別工具
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アメリカのコンビレンチを集めていると戦時モデルが多くあることに気が付きます。
1942年~1945年の第2次世界大戦中の4年間に生産されたモデルは、メッキを廃し、表面も仕上げをせずにザラザラのままになっています。
PLOMBやCraftsman、そしてSnap-onロゴが入る前のBlue Pointが代表的です。
目を日本に転じて、ゼロ戦の修理にはどの様な工具を使ったのか昔から大いに興味がありました。
例えば、日本のコンビレンチの第1号は、戦後に事業を再開した京都機械/一重丸京だと思っているのですが、ひょっとすると戦時中から軍に納める工具を作っていた京都機械にコンビレンチがあったのでは無いかと考えていた次第です。
今は情報の時代で、どこにもでもあるんですね。
題して『あなたにもゼロ戦が修理できます』という本。
ゼロ戦エンジンの栄21型を生産していた中島飛行機が戦時中に発行したエンジンの整備要領書(376頁)の復刻版です。
結論から先に。
コンビレンチはありませんでした。
やはり、日本は昔からスパナが主流なんですね。
でも、スパナだけでは本締めは出来ないだろうと疑問に思っていたのですが、本締用にメガネもボックスもちゃんと専用工具で設定されていました。
以下、ゼロ戦工具の概要を紹介します。
手前が『内部要具』と称したゼロ戦の専用工具を入れた工具箱。
奥が『外部要具』と称した汎用工具(一般工具)入れ。
共にゼロ戦の栄21型エンジン専用です。
ゼロ戦と共にこの工具箱も転戦したのだと思います。
コンビレンチがあるとしたら、汎用工具の『外部要具』だと思いましたが、その中身は以下のようになっています。
左右にがばっと開くようになっています。
横に"榮"とエンジン名が書いてあります。
スパナ、メガネ、ボックスレンチが詰まっています。
残念ながらコンビレンチはありませんでした。
KTCの前身である京都機械は軍に工具を納めていたとのことですので、この写真の工具は多くが京都機械製だったのではないかと思います。
↑スパナの拡大写真。
↑戦後の一重丸京/京都機械のスパナ
スパナの形状がそっくりですね。
各工具の図と番号が示してあり、整備要領書に記載されている通りの番号の工具で修理できるようになっています。
現在の自動車の整備要領書と全く変わりがありません。
『内部要具』(専用工具)の工具箱で、現存している綺麗な物をネットで見つけました。
工具編の最初の頁で、『内部要具』が3種類と、『外部要具』が1つと説明されています。
『携帯に便ならしむる爲蝶番開閉式トランク型とせり』とのことです。
『内部要具』3種類の工具箱の中身です。
専用工具が一杯詰まっています。
専用工具リストを1枚だけ。
其の一の最初の頁です。
整備要領書の本文もちょっとだけ。
シリンダーとかクランクとか部品名称は英語がそのまま使われています。
定価が8,000円と高価になっていますが、DVDが無くても良ければAmazon Kindleで3,000円のリーズナブルな価格で手には入ります。
技術解説も当時のまま載っていて、宙返り時のキャブレターの作動など読んでいて興味が尽きません。
★赤トンボ(九三式中間練習機)の工具セット
赤トンボ(九三式中間練習機)の工具セットの鮮明な写真をネットで見つけました。
↓スパナ部を拡大してみました。
【2021年3月10日追記】
★99式艦上爆撃機用の機体整備工具箱
・kTC『ものづくり技術館』に99式艦上爆撃機用の機体整備工具箱が展示されていて、その中に1本だけスパナが入っています。(下の中央写真の天板左にあるスパナ)
・展示物に明記はされていませんが、これが京都機械製だと推測しています。
・桜マーク(左下)と○工(右下)、90度傾いた○マ(右上)、さらに◎に・(左上)のマークが入っています。左中央にも桜マークがもう1つあるように見えます。
・桜マークからも海軍向けの工具であることが分かります。
ゼロ戦の工具を調べた理由は、日本のコンビレンチ第1号は戦中もしくは戦前なのか、または戦後かを確認したかったためです。
結論として、やはり日本のコンビレンチ第1号は、当初の想定から変わらず、一重丸京/京都機械になります。
参考まで、アメリカの戦時モデル5種です。
PLOMB、スパナ部のWAR FINISHが戦時モデルを示しています。
PLOMBがもう一つ、航空機製造会社であるフェアチャイルド社のRangerエンジン部門向け専用に納められた戦時モデルです。
Craftsman、N4は戦時モデルだけに刻印された特有の記号です。
Snap-onのロゴが表示されるのは戦争が終わって数年経った1948年頃からですので、戦時中はBlue Pointのロゴでした。
TRUECRAFT、戦後15年経ってから大同工業(正確には大同産業)がブランドを買収しますが、戦前よりオリジナルモデルを生産していて、戦時モデルもありました。
英国の戦時モデルも。
KING DICK、サイズはやはりウィットワースになっています。
この英国の特殊サイズが原因で、アメリカと英国の兵器共用が出来なかったようです。
アメリカや英国のものは手に入るのですから、日本の戦時モデル(日本の場合はスパナ)も是非とも手に入れたいところです。




































