陸軍の整備工具に関しては、工具現物が入手できておらず、また工具会社の情報も無く、今のところ發動機説明書だけが唯一の情報です。

したがい、まずは私個人のデーターベースとして各發動機説明書の整備工具部分を解説抜きで掲載します。

なお、海軍/瑞星と陸軍/ハ101(火星)の工具部番が、共にJM-xxxxです。

工具会社が共通なのだろうと推察しています。

これ以外には、陸軍と海軍の工具に類似性や関連性は確認できていません。

 

海軍のように情報を多く入手できてから『陸軍/整備工具のすべて』にタイトルを変更させたいと思っています。

少なくとも、工具現物を1本は手に入れて、製造会社が2社くらいは分かってから。

 

.陸軍 發動機説明書

・国会図書館に陸軍發動機のマニュアルが5冊所蔵。

『xx式xx馬力發動機説明書』という名称で、整備工具がイラスト入りで解説されています。

発行は、陸軍航空本部。

5冊ともにアメリカからの里帰りです。

・防衛研にも6冊が所蔵されていますが、2冊が重複しています。(閲覧は市ヶ谷の防衛庁/防衛研究所でのみ)

・アジ歴(アジア歴史資料センター)にも2冊があります。

ちなみに、アジ歴の2冊に関しては一般公開されていますので、誰でも閲覧が可能です。

・ハ109/二式戦二型(鍾馗)は、個人所有の資料を使わせて貰っています。

この資料は、『陸軍航空審査部』の発行で、名称も『發動機 取扱ノ参与』になっていて、他と異なります。

・確認できるイラスト入りの工具解説資料は、全11機種になります。

 

ちなみに、陸軍發動機の正式呼称であるxx式xx馬力は、例えば同じ一〇〇式で似た馬力でも機種が異なったり、同じエンジンでも新しい型になると年度が進んでxx式が変わったり、最初は全く理解不能でした。

以下のWeb情報より理解することが出来ました。

⇒『 xx式xx馬力』と『ハxx』の関係表は、こちら (WarBirdsさんWeb)

日本陸海軍機入門も非常に参考になりました。

 

☆国会図書館デジタル、『發動機説明書』での5冊検索結果画面。

閲覧は、こちらから(国会図書館IDが必要)

☆アジ歴2冊の閲覧は、こちらこちら

 

 ① 九五式150馬力(ハ12)  Wiki

海軍呼称『神風』、搭載機:九五式三型練習機、東京瓦斯電気、7気筒

☆コンビレンチ3種

海軍エンジン3機種でコンビレンチを見つけましたが、陸軍にも1機種ありました。

3種類が設定されていて、スパナ部オフセット角度が3種類共に異なります。

メガネ部は、他のメガネレンチと同じように6P。

↑④…16x16、⑤…20x21、⑩…タペット調整用

 

海軍の光エンジン(1936年2月発刊)のを日本で一番最初のコンビレンチに認定しましたが、これも同じ1936年ながら12月の発刊。

マニュアル発刊と工具リリースの時期は完全一致はしていないでしょうが、海軍"光"を一番最初、そしてこの陸軍"神風"を2番目とします。(ほぼ同時期でしょうが)

日本のコンビレンチブランドの117番目として登録したいのですが、表面に何と刻印されているのか分からず、登録できません。

スパナ表面の中央に表示されているロゴや文字をブランドと規定し、そのブランドを管理する会社または団体が日本の場合に、日本のコンビレンチとして番号を振って数えています。

さて、陸軍たる日本の団体が管理する"ハ12"というブランド名は、スパナの表面に刻印されているのでしょうか?

私が手に入れた海軍の2種には、"天"(天風)と"榮"とエンジン名が刻印されています。

陸軍工具の現物、または写真を1機種でも良いので、手に入れたいところです。

(陸軍は工具セットをイラストで説明していますが、海軍は全て実物の写真を使っていますので、3種目の"光"もエンジン名が刻印されていることが分かりました)

陸軍は工具へ機種名表示をさせていたのかを、まずは知りたいところです。

それまで、117番目の登録はペンディングにします。

戦時物に興味を持たれている方から見ると機種名をブランドと呼んだりして変なことをしているなと思われるでしょうが、私にとってはハンドツールについて創世記から現在までを追い掛けている中での日本の戦時工具ですので、ご容赦を。

 

↓コンビレンチも含めて、スパナが多様。

 

海軍では1940年頃から内部要具と外部要具の2種類が設定されていましたが、陸軍は全機種で最初から工場用と野外用の2種類に分けていました。

☆工場用工具

☆野外用工具(野外用はイラスト無し)

 

 ② 九八式450馬力(ハ13甲)  Wiki

海軍呼称『天風』、搭載機:九八式直接協同偵察機等、東京瓦斯電気、9気筒

☆工場用工具

 

 

☆野外用工具

 

 

 ③ 九四式550馬力(ハ8)  Wiki

海軍呼称『光』、搭載機:九三式双発軽爆撃機、中島飛行機、9気筒

 

☆コンビレンチ

神風に続き陸軍でコンビレンチを採用している2機種目になります。

 

 

 

 

 ④ 九七式650馬力(ハ1乙)  Wiki

海軍呼称『寿』、搭載機:九七式戦闘機、中島飛行機、9気筒

海軍編で解説の通り、昭和機械工具製作所は創業の1938年4月から中島飛行機の専門工具工場となっています。

工具の納入先が海軍なのか陸軍なのか情報がありませんが、海軍向けには京都機械が多くの機種を担当している一方で、昭和機械工具は東京の4工場だけでは間に合わず諏訪にも工場を増設したことより、陸軍向けに多くを納めていたと推定しています。

工場をいくつも増設して対応していることから、例えば一式戦/隼用の榮エンジン工具を担当していたのでは無いかと考えています。

創業時(1938年4月)から中島飛行機の専門工具工場だったことから考えると、陸軍で最初に採用された可能性が高いのは、創業翌月の1938年5月に説明書が発刊された『ハ8』です。

また、同じ月に次の④『ハ1乙』の説明書も発刊されていて、中島飛行機製ですので、同じく昭和機器工具が担当している可能性が高いと思います。

 

☆工場用工具

 

 

☆野外用工具(イラスト無し)

 

 ⑤ 九九式950馬力(ハ25)   Wiki

海軍呼称『榮』、搭載機:一式戦闘機一型/隼、中島飛行機、14気筒

 

 

☆工場用具

 

 

 

☆野外用具

 

 

 ⑥ 九七式850馬力(ハ5乙)   Wiki

海軍対象なし、搭載機:九七式重型爆撃機、中島飛行機、14気筒

上の④『ハ1乙』で説明の通り、昭和機械工具製作所が製造している可能性が高いと考えています。

 

 

 

 ⑦ 一○○式一二五〇馬力(ハ41)  Wiki

海軍対象なし、搭載機:二式戦一型(鍾馗)、中島飛行機、14気筒

【追加予定】

 

 ⑧ 二式1,450馬力(ハ101)  Wiki

海軍対象なし、搭載機:二式戦二型(鍾馗)、中島飛行機、14気筒

工場用の工具が分解用と修理用に分かれているなど、設定されている工具数が多くなっています。

また、野外用の工具箱が、海軍が1940年頃から採用している外部要具箱に似ています。

☆工場分解用

 

 

 

 

 

 

 

 

☆工場修理用

 

 

 

 

 

 

☆野外用

 

 

 

 

 

 

野外用工具の工具箱が、海軍の榮と譽エンジン用の工具箱に似ています。

外観形状がそっくりなことに加え、各面が取り外し可能な布製で、上フック穴が6カ所、下フック穴が3カ所まで同じです。

↓海軍『榮』用の外部要具箱

 

 ⑨ 九九式九〇〇馬力(ハ26)  Wiki

海軍呼称『瑞星』、搭載機:九七式二型司令部偵察機、三菱重工、14気筒

【追加予定】

 

 ⑩ 一○○式一四五〇馬力(ハ101)  Wiki

海軍呼称『火星』、搭載機:一式陸上攻撃機、三菱重工、14気筒

  

何故かこの機種だけ横書きの文字方向が逆になっています。(右から左)

☆工場用工具…全6面

☆野外用工具(イラスト無し)

 

 ⑪ 九五式800馬力(ハ9-2甲) Wiki

海軍対象なし、搭載機:九五式戦闘機、川崎航空機、液冷V12

 

スパナが多種多様。

☆工場用工具

 

☆野外用工具(イラスト無し)

 

この回、終わり