いい灯 旅立ち③湯西川温泉かまくら祭り ~隠れ里、灯に染めて~ | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

続き。

 

だいたいの風呂に浸かったあとは部屋で夕食を待つ。

テレビはあるけどオリンピックなんて見ずに窓際の椅子に座って

太陽が沈んだ湯西川の風景をじっと見て過ごす。

 

人の姿も消え、まるで静止した絵のような景色の中で唯一動いている

川の流れを見つめる。不思議と飽きないものだ。

 

 

やがて夕食が部屋に運ばれてきた。部屋食はありがたい。

 

 

手前の蕎麦はサービス。なのでお米は別で奥にある。

 

蕎麦の左側にあるしゃもじみたいなのは「味噌べら」というこのあたりの料理。

木の実と山鳥の骨などをすりつぶして味噌と混ぜ合わせた深山の珍味だという。

珍味というよりも完全な美味。

とても美味い。東京の居酒屋のメニューであればいいのにとさえ思った。

 

さて、食事がすんだ18時半過ぎくらいには外へでかけないといけない。

今回、湯西川に再訪したメインの理由は温泉よりも開催されているお祭りなのだ。

 

湯西川事情に詳しい人は、今回のシリーズのタイトルを見た時、すぐにピンときた

ことかと思われる。

そのお祭りというのがコレ。

「湯西川温泉 かまくら祭り」

 

 

前回泊まった宿のおじさんが、「今度は2月か3月に是非きてください」といったのは

このお祭りがあるからである。

当時も下調べした際、ここでこういうお祭りが2月~3月にかけてやっているという

ことはしっていたが、その時は祭りがやっていなくてもすぐ湯西川へゆきたいという

思いが強かったため、違う季節に訪問となった。

次回来るならば、その時はこの期間に合わせてと決めていた。

 

なので今回の2月の訪問は、当時の宿のオジサンとの「約束の日」であり、そして

「約束の灯」でもあった。

 

金井旅館の女将さんから、「湯西川の夜はかなり寒いから、しっかり着こんででかけて

くださいね」と温かいお言葉をいただき、防寒対策ばっちりで宿をでる。

それでもかなりの冷え込みだ。

 

ゆきたい会場は2か所。

先に遠いほうからゆくことに。宿から歩いて10分くらいの川辺だ。

 

前回なんとなく夜散策した時はオレ以外誰もいなかった。

今回は祭り期間ということもあり、途中パラパラと人がいたが、時々視界に誰も

いなくなったりする。

 

 

山奥の街の夜は死んだように静かで人影がないほうがいい。

つげ義春のペン画のようなわびしさと風情がまた、たまらない。

 

街の人ごみ、肩がぶつかって独りぼっち

誰もいない山奥の温泉地、風がビュビュンと独りぼっち

どっちだろう? 泣きたくなる場所は?

ふたつ○をつけて、ちょっぴりオトナさ~

と微妙に替え歌にして口ずさむ馬渡松子の曲

ドラゴンボールネタが増えてきたから、ここらでちょっと幽遊白書ネタに

方向転換してるw

 

足元の地面の表面が凍りつきながらも、会場に向かう人の靴底や車のタイヤに

こすられた状態で粉状になっており、歩くたびに靴底がシャリシャリと鳴いている。

 

そんな中、最初の会場に到着。

 

ご覧の通り、ここの風景は「日本夜景遺産」に認定されている。

 

雪ダルマがドローン禁止を伝えている。

まあねえ、たしかに空中のドローンが落下してミニかまくらに突っ込んだらある意味、

プチ自爆テロみたいな風景になるからのう(笑)

 

ではお待ちかねの風景を。

まずは数歩だけさがったところからのひきめ風景。

 

 

美しい……。

 

では、もうちょっと近寄ってみよう。

 

 

どこまでも続くオレンジ色の灯り……

なんと癒される光景だろうか。

 

できることならば、このミニかまくらの間を歩いて、ずっと向こうまで歩いてゆきたい

くらいだが、残念ながらここではここから眺めるだけしかできない。

 

無数の炎の揺らぎは、まるでミニかまくらのひとつひとつに生命が吹き込まれていて、

なにかをささやきあっているようにすら映る。

 

 

雪と火が招くジャパニーズ・ファンタジー。

雪の蕾(つぼみ)の中に、揺らめく炎の華が咲く……

 

 

時間や体力だけでなく、生きたいという気力さえも容赦なく搾取してゆくこの日本社会。

それでもここで必死に燃える炎たちは、「日本に生まれてよかった」といった

気持ちを呼び戻してくれる。

 

風景のすばらしさに肌も寒さを忘れ、東京に戻ったらもうしばらく見れないだろう

この景色をずっと見ていた。

 

じっくり見つめたことで、その灯の一部はもうオレの瞳の中に移り(映り)そこで燃え続けるだろうと

判断し、時間もあることなので次の会場へと向かった。

 

もうひとつの会場は、ここにくる途中にあった「平家の里」という有名な資料館。

前回こなかったこともあり、ここもいってみようと考えていた。

夜はナイトチケットということで300円で入場できる。

 

 

平家というオカタイ言葉とは反対に、場内は雪と光の祭典。

下の画像、わかりずらいかもしれないが、中央に光の河がある。

 

 

資料館だけに昼間は人形の展示などもみられるが、夜はそれぞれの展示小屋など閉じている

ようだ。

 

 

こちらにもミニかまくらがあり、光を放っている。

 

 

そして人が入れる特大かまくらも。

 

 

こちらの会場のかまくらでは、予約すれば中で鍋などの食事ができる。

 

そういえばオレはかまくらという冷たい建造物の中に入った経験がなかった。

せっかくなので、まだ人が来ていないかまくらの中にちょっとだけ入ってみた。

 

 

なるほど。

こんな感じか。

たしかに、雪の壁に囲まれた空間で温かいものを食べるというのもオツかもしれない。

 

せっかく来たので園内を2周ほどしてから退場。

 

来た道を引き返す。

宿につくちょっと前あたりから集落に入り、夜の川沿いの風を浴びながら宿に戻ることに

した。

 

ずっと先に青く光っている灯りは、本家伴久が対岸の氷柱を演出しているライトだ。

あちらも一度くらい泊まってみたいものだ。

 

 

宿についたら、体がまるで冷凍マグロのようにキンキンに冷えていた。

失われた体温を取り戻しにふたたび露天と内風呂へ。

 

肌がいい具合に熱を喰らったらあがる。そして部屋で氷結のプルタブを開けた。

 

一面に、そしてずっと先までつながるかまくらの「灯」を見ることができたのは本当によかった。

心がすさんで、あらゆる感情を失ってゆくことがあっても美しいものを見て感動するという感情だけは

ずっと失わないでいたい。

 

湯西川の水の流れる音を子守歌に、そんなことを考えながら眠りについた。

 

次回ラスト。

※ラストは、あまりシマらない記事になります(笑)