うつし夜は夢……旧江戸川乱歩邸 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

池袋歩きの続き。

時間的には「におい展」にゆく前。

 

以前から気になっていた場所へも立ち寄った。

 

場所は立教大学内。

 

『旧 江戸川乱歩邸』

 

 

立教大学にくるのは人生2度目。

 

以前はまだ芥川賞をとる前の又吉大先生と、既に芥川賞作家となっていた町田康の

講演会に当選した時にきた。

あれからもう5年くらい経つのか。早いもんだ。

参考までに当時の記事はこちら →『なぜ読むのか?』

 

この場所についてはダラダラした前書きする必要もないだろう。

よんでそのままである。

 

簡単にひとことだけ添えるとすれば、ミステリー小説の巨匠であり江戸川乱歩は

かつて、この立教大学の周辺に住んでおり、のちにその家が立教大学に帰属されて

保存されているということである。

 

そして曜日時間限定ではあるが、この旧江戸川乱歩邸は無料で一般公開されている。

 

表札は当時のものだろうか。

乱歩の本名である「平井太郎」と書かれたものが貼られている。

 

 

 

門を入ってすこし進むと玄関がある。

 

 

ここでは物販や、乱歩にかんする資料などが展示されている。

撮影は可。

 

乱歩の作品として有名な「D坂の殺人事件」のレプリカ原稿も展示されていた。

 

 

乱歩といえば、この「D坂の殺人事件」と、デビュー作である「二銭銅貨」という声が多いが

オレは個人的に正直この2作はちょっと趣味に合わなかった。

 

技巧的な暗号解読モノとかよりも、どちらかといえばオドロオドロしい人間の闇をアピール

する作品に心惹かれたから、短編では「人間椅子」「屋根裏の散歩者」が好きだ。

長編では「化人幻戯」とか。

 

「人間椅子」は筋書きだけでなくタイトルもインパクトあっただけに、のちにそれをバンド名にする

ロックグループも登場。

ギターヴォーカルの和嶋サンという人は、高円寺にあるマジックファイブというバーに出没すると

雑誌『散歩の達人』の酒場100軒特集に書いてあった。

 

「化人幻戯」は、オレが二十歳くらいの時、ドラマ化されることになって当時楽しみにしていた

んだけれど、題名が難しすぎたのか、いざドラマ化された時はタイトルが「吸血カマキリ」という

いかにもテレビ的なタイトルに変更されていて、最初わからなかった。

 

 

 

さて、邸散策の模様へ戻ろう。

 

一般公開とはいっても、基本、家の中には入れない。

外を回る感じで見てゆく流れだ。

 

中庭まで進んで外から家を見るとこんな風景。

 

 

中には入れないが、外から応接間を見ることができる。

 

これまた、作品の中の応接間のようだ。

殺人事件が起きた直後に、明智小五郎とかがこういう応接間に家族というか

容疑者の可能性があるものを一同に集めている光景が目に浮かぶ。

 

左側の壁には乱歩の肖像画も見える。

 

 

画像は省略したが、この本邸の横のウインドウにも乱歩や、ミステリー小説の歴史などを

解説した展示あり。

 

ドグラマグラでおなじみの怪奇作家・夢野久作が乱歩に送ったとされる、ちょっと不気味な

少女の人形なども展示されていた。

 

そして敷地の一番奥に土蔵がある。

 

 

当初、乱歩はこの蔵の中で執筆をおこなおうとしたようだが、あまりに寒かったため

断念したらしい。

 

蔵は残念ながら入口のところがガラスで仕切られており、中に入ることはできないが

ガラス越しにのぞくことはできる。

 

2階建てで回廊式。

乱歩はかなり整理魔だったようで、ここに書物を貯め、手作りの棚とかもあったようだ。

 

 

乱歩の作品はずっと若いころにいくらか読んだけど、そのほとんどは細かい内容を忘れて

しまった。

 

ただ、やはり当時一部の人間や良識者がエロ・グロと批判しているのもわからないでもない

作風だとは感じた。

でも乱歩の場合は、純粋にレベルの低いイロモノということはなく、変態色がありながらも

それ以上に戦争にかんするテーマにからませたり、麻薬性すらあるような芸術的な世界観が

世間的な評価につながり、こうやって家とかも保存する価値ありという流れになっているのだと

改めて思った。

 

乱歩に興味ある人も、あまり知らない人も近くにいった時はちょっと立ち寄ってみてはどうだろうか。