伊豆のお虜(とりこ)① 千人風呂の金谷旅館 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

窓の外のずっと向こうに、今はリニューアル休業中の黒根岩風呂が見える。

画像は伊豆急が伊豆北川駅に差しかかったあたりの風景。

憎いくらいの快晴。

 

 

ということで、前回の記事における4択の正解は「静岡県」

 

「おいっ!栃木じゃねえのかよっ!」って思った皆さまには大変申し訳ないのですが

前回の記事の最後の1行は「トラップ」です(・∀・)

 

トラップといっても記事に虚偽文章は一切ありません(キッパリ)

 

報道でもやってたけど当日の静岡は本当に日光、つまり日射しがキツくて、首まわりが日焼けで

今でも痛いから、あの一行のつぶやきはそれはそれで事実。

「トリック見破ったり!」と思って喜んだ皆さまは実はその時点で既にオレの2段階トラップに

ハマっていたのですよ (゚∀゚)アヒャ

ほら、記事タイトルの二転、三転……って、その表現にもちゃんと帰結しているでしょう(笑)

 

たまには読者さんの頭脳を誘導して惑わすこういう記事も面白いのではというおチャメな意図なので、

栃木ネタが来ると思ってずっと構えてこの本編を待ってた方々はどうか怒らないでくださいね~

でも、一応謝っておきましょう。ごめんなさい(爆)

 

ということで、本当の本編へ。

 

今回はやっぱり静岡で探すことにした。

クソ暑いこともあり、車窓から海が望める移動もいいだろうと。

 

目的地は下田のひとつ手前の「蓮台寺」にある温泉宿である。

総武線、小田急線、東海道線、伊豆急と乗り継いで、約4時間かけて到着。

 

 

 

伊豆急において、伊豆北川と河津は下車したことがあり、終点の下田には学生時代に友人と

車でいったことがあるが、この蓮台寺という駅ははじめてだ。

山に囲まれていて、駅前はちょっと拓けた住宅街という印象。

 

今回の宿は駅をでてから、2,3分のところにある。

 

河内温泉『千人風呂 金谷旅館』

静岡県下田市河内114-4

HPはココ

 

 

 

江戸の末より創業百五十年の歴史がある温泉ファンには有名な宿。

ここには日本一のものが存在しているので前から気になっていたが、格式と歴史ある

旅館だけあって、平日でもさすがに2食付きだと16000円くらいする。

 

ただ、近くに一軒セブンイレブンがあるようだったし、素泊まりならば7500円半ば+各税で

大丈夫なので、この機会に一泊素泊まりでお世話になることにした。

 

敷地内には小さな庭園もあり、建物全体も魅力的な大正ロマン臭を発している。

 

オレの好きなタイプの玄関。

犬神家の一族のロケ宿でもあった井出野屋旅館と同じで、左右に引くガラス戸に宿の名前。

 

 

入ってすぐ左に帳場。

 

若旦那だろうか。

とても感じのいい若いお兄さんが丁寧に対応してくれた。

 

玄関の感じもとてもいい。

こんな屋内空間がある場所にこれただけで既に心が満たされる。

ビジネスホテルにはない目の癒やしがこういう宿にはある。

 

 

建物の各所には、女将さんが描かれた絵が飾られていて、心が和む。

 

都会に氾濫するコンピューターグラフィックスに徐々に犯されつつあった色彩感覚が

観ているだけでリセットされるようだ。

なによりキャンパス上に温度が感じられる。

 

 

 

宿の説明をひととおり聞いたあと、お兄さんに部屋に案内された。

 

宿の中も入り組んでいて迷宮みたいで惹かれる。

通路の伸び方がどことなく北温泉を思い出させる。

(奥へと続く通路の画像をとりこむ前に、スマホで削除してしまうという痛恨ミス!よって画像ナシ)

 

オレの部屋は中2階のようなところ。

下の画像の正面にある階段のカーブをまがったら、そこには廊下でなくすぐドアが出現(笑)。

 

 

宿のお兄さん曰く、「あがったらすぐドアがあるちょっと不思議な部屋なんですけどね」。

オレとしてはかなり気に入った。

まるで忍者が会議する隠し部屋のような位置。

ステキな部屋を用意してくれた宿に感謝。

 

部屋はこんな感じである。

なかなか綺麗だ。

 

 

入口入ってすぐには部屋備え付けのレトロな洗面台。

これもまた好き。

冷蔵庫があるのは素泊まり客にはありがたい。

 

 

部屋からの眺めはこちら。

 

昔は窓の外すぐに海とか山肌とかの自然があったほうがいいとか思っていたが、

ここ最近はこのような長閑な住宅街の眺望もいいと思えてきた。

群馬の湯宿温泉とかもいってみたいと思っている。

 

 

 

さっそく、到着のひとっ風呂といきたいところだが、箱根かっぱ天国素泊まりの時に唯一あった

コンビニでほとんどの弁当が品切れだった失敗を教訓として、今のうちに晩飯とお酒の調達へと

出向いた。

 

キリン淡麗 1本

氷結ロング缶 1本

セブンイレブンOB発泡酒 1本

ジョージアコーヒー 1本 (翌朝用)

それに、チキンカツ弁当1コとフィッシュバーガーを1コ、

以上を湯上りの晩餐として購入して宿に戻る。

お会計は1244円。

(翌朝のパンは家から惣菜パンを持ってきていた)

 

まずは改めて無事の到着を祝い、ひと缶あけるべし。

 

府中を離れイズクンダリへ、はるばる遠くやってきて吞む冷えた一本は格別に旨い。

 

 

猛暑なのでクールビズ。マスクの耳を切り抜いたスケキヨw

 

初めて呑んだけど、中身は「のどごし生」だな、こりは。

 

 

さて、いよいよメインの風呂へ。

風呂場は一回の奥にある。

 

これが男性脱衣所の入り口だ。

 

 

 

冒頭にも書いたこの宿に存在する日本一のモノというのは、

「日本一の総檜風呂」である千人風呂である。

 

15メートル×5メートルは日本の檜風呂では最大。

まるでプールだ。

 

オレはここに一度浸かってみたかった。

 

さっそく服を脱いで浴舎へのドアを開けたが、たぶんこの御時世いろいろと事情があるようで

浴室内は撮影禁止。

 

よって画像はパンフの写真を拝借して紹介。

 

 

広い!!

圧巻とはまさにこのことである。

 

広いだけではなく漂う風情も半端じゃない。

 

浴舎はすべて木造。

天井は大正ロマンのアーチ状で、支柱が一本もないのが解放感をさらに際立たせている。

 

浴槽の中には小さな女性のブロンズ像が3体。

伊東市の重岡さんという方の作品だそうだ。

 

中央には丸太の敷居があり、丸太の奥は深さが1メートルくらいのところもあり、歩行浴をしている

オジサンもいた。

 

一番手前にはぬるめの湯の区切られた小さな浴槽があり、そこには長く浸かっていられる。

風を浴びたくなったら、奥にゆけば露天もあり。

 

壁の向こうは女湯「万葉の湯」があるが、女湯のほうからは専用のドアを使ってこちらの千人風呂に

来ることができる。つまり混浴。

 

とにかく温泉にゆくならば露天という感覚だった若い頃では、この良さは感じられなかったかもしれない。

 

お湯に包まれるだけでなく、四方八方から木の香りのアロマを浴びているような落ち着ける空間。

 

この千人風呂は大正4年に建てられたようだ。

パンフによると、「下田に伊豆の名物となるようなお風呂が必要」という考えから、職人の手で

この巨大風呂が作られたらしい。

 

千人が入れるような大きな風呂をずっと昔に作った者もあれば、百人が上に乗っても大丈夫で潰れない

という物置を作った者たちもいる。

人の世にはいつの時代にも匠と呼ばれる集団が存在するものなのだのう。

 

この日は気温が高かったこともあり、一度に長く浸かっていられなかったが、オレは宿泊なので

こまめに数回入浴した。

 

いいお湯だった。

肌がツルツルにコーティングされたようだ。

 

日帰り客の受付は夜10時(遅い…)までなので、10時以降はほぼ貸切。

ヤッホー。

嬉しさのあまり、思わず15メートル平泳ぎ(笑)

 

うわー、チョー気持ち…………

いや、オレは彼好きじゃないから、このセリフだけは絶対いわないと決めたのでいわない(-_-)

 

夜、ほんのり暗い中でなんとなく冷たくなったような浴舎。

静寂の中聴こえるのは、注がれるお湯の音のみ。

そんな中、浴槽にひとりぽっち。

ひょっとすると、今この世界にいるのは自分だけなんじゃないかなっていう錯覚を呼ぶこの孤独感。

 

平日に老舗の宿にひとりで泊まってこそ、感じられるこの寂寥感をたまらなく愛している。

憂鬱も憎しみも、この時間だけはお湯がすべて溶かしてくれる。

だから、ひとり旅はやめられないのだ。

 

夜22時過ぎにこの日最後の入湯して〆る。

 

脱衣所前には休憩所や自販機もあるので、飲み物を切らしても大丈夫。

 

 

温泉宿での夜の最後の一缶は「氷結」に限る!!

それがオレの評決!

 

 

くぁ~~!!

たまらん!!

 

落下してゆく炭酸が喉で暴れ、レモン果汁が火照った躰を慰め、身も心もクールダウンのさらに

向こう側へと連れてゆかれる……

 

ああ、素晴らしき伊豆の夜。

ああ、素晴らしき千人風呂。

ああ、素晴らしき金谷旅館。

 

オレはもうすっかり伊豆の虜。

 

 

それではトラップなしで次回の予告をちらりとだけ。

 

この日は日本一の総檜風呂がある宿に泊まったが、翌日はアレがある温泉宿に立ち寄ります。

宿には期待していいですが、オレの文章にはあまり期待せずお待ちください。