またまたで申し訳ないが10代バイト時代のエピソードをひとつ(笑)
ガソリンスタンドの仕事というのは見てのとおり、夏は灼熱で冬は厳寒。
とにかく暑い! そして寒い。
とある夏の日の昼間、社員ひとりと先輩ふたり、そしてオレの3人のシフトの時があった。
例によって死ぬほど暑かったのだが、お客はあまり来なかった。
社員の人は中で作業していていたので、先輩ふたりとオレの3人で外で横に並んで立って
しばらくの間、客を待機していた時間があった。
することもなく炎天下の中、じっと門番のごとく立っているだけなので、3人ともやたらと
「あぢー」と口にしていた。
その時、店が暇なのをいいことに先輩のひとりであるKさんがこんなことを提案した。
「一回 『あつい』っていったら、そのたびの他のふたりにジュース1本ずつおごるってゲーム
やらない?」
と。
よくあるゲームだ。
だけど面白いとおもった。
もうひとりの先輩のYさんもオレも賛成した。
「よし! じゃあ今から開始ね。はい、スタート」
Kさんがそういって我慢大会兼心理戦の火ぶたは切っておとされた。
ついさっきまでみんな「あぢー」とかつぶやいたり、どうでもいい話で盛り上がったりして
いたのに、ここにきて急に借りてきた江戸家猫八のようにおとなしく静かになる。
3人して鉄壁のディフェンスに入ってしまい、このままでは面白くないのでKさんが
「ちょっと話そうよ」
といい、それから本格的な心理戦に突入し、それぞれが相手にどうやって「あつい」と
いわせるかを探り出しはじめた。
Kさんがなにかとオレに話し掛けてそのワードを誘導しようとするが、「○○、今日の調子はどうだ?」などと、古典的な誘導ばかりだったので、その都度ちゃんと答えながらもワードをいって
しまうことはなかった。
Kさんは自分ととても仲良くしてくれる大好きな先輩だっただけに、自分もどうにかして
Kさんに「あつい」といわせたいと思い、いろいろ策を考えた。
チーン。頭の上でランプマークが点灯した。
だけど、すぐにそれを仕向けたらアヤシイから、数分してKさんの警戒心が少し緩んできたら、
そのシナリオを実行しようと決めた。
そして7,8分経過。
焦ってはいけない。カモフラの意味も込めてじっくり段階を追って誘導するのだ、と自分を
冷静にする。
よし、作戦開始。トラトラトラ。
さりげな~く、Kさんに話し掛ける。
オレ
「あ~、Kさん!こんな日はプールでも行きたいですよね~」
Kさん
「そうだなあ、冷たいプールで泳ぎたいなあ」
話にはちゃんと答えてくれるが、やはりちょっとオレを疑い、警戒しているのがわかる(笑)
オレは自分で描いたシナリオ通りに、ひとつひとつ焦らずセリフを続けていった。
オレ
「サマーランドとか、行きたいですね」
Kさん
「おお、そうだな。いいよなあ」
オレ
「でも、サマーランドとかって何気に料金高いですよね」
Kさん
「たしかに高いかも」
オレ
「そういえば府中(地元)の市民プールっていったことあります? オレ1回いったんですけど
けっこう安くていいんですよ。しかもかなり広くて市民プールだとかって侮れないんです!」
Kさん
「そうなのか。安くて近くて楽しめるんだったら、いってみたいよな」
オレ
「そうですね、今度みんなでいきましょうよ!……あ、でもひとつだけKさんが気になるかもしれないことがあってですね、……あのプール、スピーカーから流れてくる音楽がめちゃくちゃウルサイんですよ。しかも同じ曲ばかり何回も流してるんです。 それでいっつもいっつもかかっている曲があの曲ですよ。えーっと、なんでしたっけ? たしかプリプリの世界で一番……なんとかって
曲ありましたよね?」
真剣な顔でそう訊くと、Kさんは「ああ、ああ! はいはい!」とドヤ顔を見せた。
オレの術中に掛かった!と確信した。( ̄▽ ̄)ニヤリ。
そこで間髪入れずにオレはすごく自然体を装ってKさんにこう訊いた。
「あ、Kさん知ってます!? あれなんていう曲でしたっけ?」
Kさんは自信満々でオレに教えるようにいった。
「『世界で一番熱い夏』!…………あ゛っ!!」
気持ち良いくらいシナリオ通りにKさんに「あつい」といわせることができた。
スピーカーがうるさいとかそういうのはすべて作り話である。
ただ、いきなりプリプリのあの曲なんていうんでしたっけ?などと訊くと不自然なので
そこに誘導するまでめんどくさい段取りを設けただけである。
これにはハメられたKさんも、横でやり取りを見ていたYさんも「見事でキレイに決まったな」
と褒めてくれた。
正直この時は自分でもオレって天才かもと自惚れた(笑)
周囲から「計算できない」「勉強できない」などとバカにされたりしたけど、ホントのバカなら
こんなシナリオ書けないだろうと。
こうしてオレはKさんからジュース1本分の権利を見事に頂戴したのだった。
ただ、この戦果における嬉しさによって、気が緩んでしまったせいもあり、それからわずか
数分後、オレも普通にひとりごとで「あちー」といってしまい、結果的にはオレもKさんとYさんのジュースも買うことに。
それぞれ1,2回ずつくらい禁句をいってしまいジュースの権利がいってきてだったので
トータル的にはオレが先輩ふたりに1本ずつジュースをだした程度だった。
ただ、これも賭けゲームといえば賭けゲームである。
賭けたものが金ではなくて低価格の缶ジュースだったというだけ。
もしこれが多額の金銭だったら、違法になるのだろうか。
いや、金銭じゃなくとも缶がアルミでなくて純金でできたジュースでも違法になるかもしれない。
それともこの場合は他人が乗るボートや馬などの予想をする賭けでなくて、自分の脳みそを
駆使したゲームだから賭けというくくりにならないのだろうか。
昨年末にワイドショーで話題になって叩かれていたどこぞの麻雀市長?区長だっけ?
まあ、この際そこはどちらでもいいわ。
報道陣に問い詰められた挙句、
「賭けないで麻雀をやっている人間がどれほどいるのか?」
と、開き直ったようなことをいっていた。
はっきりいって、この市長は好きになれない。
そして他の職員が働いている昼間から外にでて麻雀をやっていたというのも職員や
世間一般のサラリーマンから見ても許せないものがあるだろう。
たとえ市長の特権として時間の拘束に決まりがないにせよ。
個人を擁護するつもりは1000%ない。
でもひとつ。
この行動をやったのが「市長」という立場にある人間だという概念を抜いていった内容だけ
考えてみたら、たしかにどうなんだろうなとは思えてくる。
オレは麻雀ができないからやっている人たちの現場をよくしらないけど、やる人の会話とか
訊いていると、みんなけっこうやってるんじゃないの(笑)
いや、オレも自分が麻雀や賭け事をやらないからといって、この場にきて優等生ぶって
「個人間の賭け事はダメだ!」なんていうつもりはない。
やりたくない人間をムリに誘ったりせず、有志同士で国家権力が腰をあげない程度の
金銭の移動くらいの遊びならばパチンコの交換所みたいな暗黙で、好きな人どうしで
勝手にやってればいいと思っている。
だけど正直、その「暗黙」と「犯罪」の境界がいまいちよくわからないのだ。
動く金額の問題なのだろうか。
それとも場所の問題なのだろうか。
金額の問題だとしたならば、いくら以上ならダメでいくら以下ならセーフとかいった数字の
境界もそこにあるのだろうか。
金額に明確な境界があるとしよう。
たとえば、5万円賭けて捕まらない人がいて、5万百円賭けて捕まる人がいるということになる。
たった100円の差で捕まった人は納得いかないだろう。
どうなんだろう。金額の問題じゃないのだろうか。
常習性や強制、あるいは悪意が争点になるのだろうか。
重ねていうが麻雀市長を擁護するつもりはさらさらない。
だけど税金で生活する「市長という立場だったからあそこまで叩かれた」という気もする。
市長という立場にあるうえ、あんな発言をしたからさらに大炎上となった。
賭けが良いか悪いかというよりも「市長」という立場でアレが大問題になったんじゃないか。
同じ賭け麻雀をやっていたとしても、これが一般企業のサラリーマンだとしたら、あそこまでつるし上げられないだろう。
上司もそれを知っていたとしても、勤務時間中だったとしたら注意しないんじゃないかと思う。
てか、一緒にやってたりして。
あの市長に対して賭け麻雀はいけませんよなんて、綺麗事をいうつもりはない。
かといって決して推進はしないが。
確実にいえることはひとこと。
「あなたは市長になるべき人間でもなかったし、発言からしてあらゆる長という職には向いていない」
個人的にはそれだけ。
もうひとつ気になる『境界』がある。
それは「友人」と「知人」の境界だ。
会う回数とか付き合いの年数とかではないと思う。
おそらく信頼度とかそういうやつ。
有名人・一般人問わず、誰かが容疑者として逮捕されると、メディアはよく本人の周辺や過去を
ほじくりかえす。
雑誌などではよく「親しい友人のコメント」だとか「長年の友人のコメント」などという表記のもと
これまでの素行などがツラツラと暴露されているが、オレが思うに当事者が本当に犯罪を犯して
いたとしても、本当に親しい人間であればメディアにたいして何から何までそんなにベラベラと
しゃべったりしない。
被害者がいる件であれば擁護まではしないまでも、せいぜいノーコメントだ。
もちろん、本当にそういった友人が存在してコメントをもらったのかというのは不透明だが、
本当に仲良ければたとえ犯罪者になっていても、復帰した時のことを考えてあまりメディアに
話さないはずだと思う。
オレの考え甘いか?
もし、自分が派手な障害事件とか大規模な詐欺事件とか起こしてニュースとかで報道されて、
メディアがオレのことをさぐろうと知り合いや同級生、同僚の元へインタビューしようと押しかけた
として、それぞれがどう答えるか想像してみると、親友と単なる知人の境界線が見えてきそうな
気がして、ちょっと面白いし、ちょっと怖い。
取材班にそれだけしつこくつきまとわれても、ノーコメントもしくは、
「無罪だと信じています」といってくれる人間は友人あるいは親友だ。
「たしかに同級生でした」とか「所属は販売促進部でした」とか、差し障りのないそのままの
ことだけは答えるのは知人だろう。
テレビカメラの前でテンションあがって関係者気取りで、なにからなにまで事件とまったく関係ない過去の失敗談とか、学校の成績とか、友人関係とか、学生時代こんなこといっていたとかペラペラしゃっべりそうなやつも頭に浮かぶ。
そういうやつは「自称友人・知人」を語る単なる目立ちたがりで知り合いを売るクズだ(笑)
友人と知人の境界もまた難しい。
と、いうことで境界についての論はここまで。
今回は賭けの話から入ったけど、文中で書いたとおりオレは賭けはやらない。
子どもの頃、コミックボンボンやコロコロコミックの最新号を買いたくても、30円、40円足りずに買えなくて我慢したりしてきたようなタイプなので、物欲もあまりなければ、等価交換でもなんでもなく誰かにお金を持ってゆかれることに違和感を感じるので。
全部が全部そうだとも思わないし、こういうと賭け好きな人から反論もがくるかもしれないが
昔からなにかとすぐ軽い感じで「賭けるか?」っていってくる人を見ると、金銭感覚が緩い家庭
で育ったのかなって疑問を思ってしまうことがある。
改めていうが、個人間の賭けが良くないだとかそういったモラル的なことや法律的なことを
いうつもりは毛頭ない。
ただ、オレが孫正義のようにカネを佃煮にするほど持て余しているなら別として、
富裕層でもなんでもないのに、時給換算にして2時間汗水流して動いて働いたぶんが
勝った負けたっていうだけで、他人にそのまま持ってゆかれるがイヤなだけ。
だから、オレはこれからも個人間の賭け事はおそらくやらない。
いくら自信のある勝負であったとしても誰かにたいして「じゃあ、賭けようか!」なんて
ことも絶対にいわないという自信がある。
これは本当だ。
なんなら、いうかいわないか1000円賭けたっていい (爆)