青空 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。



日本全国にある高等学校の部活。
部活においては昔からの奇妙な風習のようなものが存在することもあると思う。

だいたいが上達に向けた伝統とかでなく、先輩とかから引き継がれてきた儀式のような
ものだろう。

過去にも何度か書いたと思うが、オレは高校に入った時、柔道部に入部した。

その柔道部にも昔からの恒例の儀式があり、入部してから1週間ほど経過した時に、
オレを含む新入部員の1年生6,7名はそれを越えてゆかないといけなかった。


その儀式は「声出し」というものだった。

柔道部部員たるもの、試合中や応援において大きな声を出せないといけない。

だからその度胸を鍛えるために、柔道場で大声で歌うのだ。

2年生と3年生が柔道場の角に集まってすわり、新入部員はその対角線上にある道場の角に
道着姿で立って、もっとも遠いところに座っている先輩方まで聞こえるように大声で歌を
歌う。
選曲は自由。

いっけん大声と度胸の鍛錬に聞こえるが、おそらく小林まことの人気漫画「柔道部物語」
をマネした上級生が楽しみたいだけのイベントだろう(笑)


もう、20年以上昔の話なので、自分以外の新入部員全員が何を歌ったかはさすがに記憶
していないが、オレは知っている曲が少なかったので長渕の「とんぼ」を長渕っぽく
歌った。
純粋に先輩に受けた。


あともうひとり、オレとクラスも同じだったY君というのがいて、その子は永井真理子の
「ミラクルガール」を喉笛が切断するくらいの大声でシャウトしていたのがとても印象深い。

オレは観ていなかったのだけれど、当時浦沢直樹の漫画「YAWARA」がアニメ放送されていて
それに使われていたのがこの曲だったから、柔道つながりで先輩にアピールした選曲だったと思う。


歌うことはそれほど苦痛ではなかったので、なんなくこなし、また同じ新入部員たちの
熱唱もそこそこ楽しめた。


「いやー!○○の『とんぼ』よかったよ!」

「あ、ホントですか! ありがとうございます!」

「ウケたけど、あれ声出しというより、モノマネ大会になってるな!」

「あれ? ××は何歌ったんだっけ?」

「ちょっと、先輩! 聴いてなかったんすか!! 勘弁してくださいよ」

「Yのミラクルガールも良かったよ、うん!」

「ありがとうございます! あ、でもオレ実は永井真理子ってあまり好きじゃないんですよ」

「え? なんで? 神津カンナに似てるから?」

「……あ、似てるかもですね」


儀式後は新入生・上級生問わずこのようなやりとりでワイワイ盛り上がり、あれはあれで
良い青春の思い出だった。
※ちなみに上のやりとりは実際にあったやりとりである。


そうそう、それとあとひとつ、同じ新入部員のAクンが歌った歌も憶えている。

ブルーハーツの『青空』だ。

ブルーハーツというバンドの存在は知っていたけど、オレも周囲にいた先輩や同級生も
『青空』という歌をその時A君が歌ったことで初めて知った。

A君は幼い頃から柔道を習っていたので黒帯であり、新入部員唯一の経験者だった。
だけど、ちょっと控えめな性格であり、そこで出した声も小さめで先輩から
「もっと声だせー!」といわれたりしていた。

小さめの声だったので周囲にいた部員ともに歌詞が聞き取れなかったのだけれど
言葉が印象的だったのもあるのか、

「運転手さん、そのバスに僕も乗っけてくれないか」

という部分だけはオレも周囲もしっかり聴こえ、また印象深いなぁと感じた記憶がある。


初めて聴き、また存在を知った『青空』だったが、あとになってそれがブルーハーツの曲の
なかでも名曲であるうちのひとつだったと改めて知ることになる。

上に貼りつけた動画はオレが大学生だったころにNHKの番組でブルーハーツが歌っていた
時の映像。

リアルタイムでも観ていて今でも明確に憶えている。


甲本ヒロト独特の動きがNHKで観られるというのはかなり貴重だったが、ブルーハーツを
あまり知らない大人たちは局に問い合わせをしたという。


オレも当時は実家にいて、ブルーハーツと、その歌の良さを親に知ってもらいたいと思い
一緒に観ていたのだが、ヒロトなりの真剣なスタイルに親は眉をしかめていた。


大学で仲良かった友人にも同じく大のブルーハーツファンがいて、そいつもオレと
同じ考えで家族に声を掛け、同番組を観ていたというのだが、そちらはうちの家庭よりも
かなりの親子バトルになったらしい。


足や腕をクニクニさせながら、顔をゆがめて歌うヒロトの姿を観て
親と弟が友人にむかって

「なんだ、こいつ? 頭オカシイんじゃねえか?」
「にいちゃん、こんなのばかり聴いてるからおかしくなるんだよ!」

などといってきたとか。


翌日、大学の講義が終わったあと流れ込んだ国分寺駅前の白木屋で呑んでいる時
その件について

「オレの家族だから、ブルーハーツの曲聴いて『いい歌だね』とかいってくれるかと思った
のによ……」

と愚痴をこぼしながら日本酒をすすっていた。


番組内のインタビューの時間で聞き手だった山本晋也カントクがヒロトに

「歌っている時、激しく動いたりいろんな表情するのはどういう意味なの?」
と訊いていた。

「あれがボクなりの一生懸命なんです」

ヒロトはそう答えていた。

十分な理由だと思った。

ああ、素晴らしきキ○ガイあつかいされた日々……




話は変わるが、バンドといえば最近気になるバンドがいる。
とはいってもひと昔前のバンドだろうけど。

そのバンドのことだけで記事まるまる一本はキツイので、せっかくだからここで
ついでに書いてしまう。


『サヴェージ・ガーデン』というバンド。

オレは洋楽に弱いんだけれど有名なバンドなのかな。
周囲の洋楽好き数人に聞いてみても、誰も知らないって。




このテの音楽ジャンル自体はとくに好きでもなければ興味もないんだけれど、
この『I Want You』って曲はイントロもサビも、その他全部カッコよくて好きだな。