「営業マンあるある」のひとつ。
経験者であればわかると思うが、外回りの営業マンとは実に大変だ。
とくに夕方から夜にかけても外を回っている営業マンは神経をピリピリさせている。
アポが夕方だったり、交渉が長引きそうだから、出先で定時を過ぎたあとそのまま直帰すると
いって早い段階でオフィスを出るのだが、実はウソで終業時間くらいには既に家で休んでいると
いう例もある。
正直な話、オレの場合それはないが、普段1~3時間の残業は当たり前の環境のなか、定時になったら、営業先にいって交渉してそのまま直帰するといってオフィスをでて、営業には行かずに帰ったことはある。
あまりに二日酔いがきつくて。
でも一応定時まではオフィスにいたのだからサボりではない。
ただ、他の人間が当たり前のように残業しているなかで、「おさきに……」と露骨にいって帰宅
するのには抵抗があったから、残っている営業を片づけにいってそのまま帰るというていに処理
しただけの話だ。
このパターンはオレの周囲でもやはり何人かがやっていた。
そして既に家でくつろいでいる時にケータイが鳴って、着信を見るとオフィスの番号が
表示されていた時こそ、神経がピーン!と尖るのだ。
これもやはり経験ある知人はみんな同じことをいっていた。
「今ちょうど、○○の交渉に向かってまして……」
とか、
「ついさきほど打ち合わせが終わって、○○社をでたところです」
とかいった芝居がどんなに上手くできる営業マンでも、うかつにすぐ電話にでてはいけない。
動揺や報告内容はごまかせても、自分の周辺環境の空気というものも声と同様に受話器から
先方に流れてしまうものなのだ。
人の往来がそれほど激しくない会社の部屋や応接間であっても、そこには静かながらの
どくとくなザワザワ感が存在しており、そういった音も受話器から伝わるもの。
静かな自分の部屋にいる時、何かを確認しようとかかってきた会社からの電話にでてしまうと
その静けさから、なんとなく、もう家にいるんじゃないか?ということがバレてしまう危険性が
あるのだ。
だからまず一回めのそのコールはスルーする。
客と交渉中、もしくは急いで移動していたため、着信に気づかなかったていにするのだ。
そしてケータイを持ち、すぐにジーパンなどに着替えて靴を履き、玄関から急いで外に出る。
その時間でもできるだけバスやトラックなど車の往来が激しい大通り付近までゆき、
‘営業でまだ外を歩いているアリバイBGM’を確保したら、そこで折り返して、
「すいません! 交渉中だったのででれませんでした! いま終わって外歩いています!」
と報告して、ごまかす。
外回りの営業マンというのはその多くがこんなヒヤヒヤ神経ピーン経験をしているのだ。
(勝手に判断w)
でも、「今○○にいる」ってごまかすためのアリバイBGMっていうのは数年前に販売されていた
こともあったのだ。
今でこそスマホやケータイがあるから、それを持って移動ができたり、誰から掛かってきたか
わかるものの、昔は出先から実家や知人の家に連絡を入れる時は公衆電話が当たり前の
時代だった。
ボックスが固定されているから、そこで話すしかない。
掛けてくる場所によって受話器の向こうから聴こえてくる音と、聴こえるはずのない音というのが
明確にわかれるのだ。
だから、電車が走る音やジェット機の爆音などが収録されていたアリバイテープが販売されていて、旅行に行くと両親に嘘をついて恋人の家にお泊りにゆく女のコとかが、公衆電話に入り、
受話器のすぐ近くで「ジェット機の爆音テープ」を再生しながら、実家に電話をし、
「ちょうど今、空港についたから旅行楽しんでくるね」
などといって使用したりする。
相手を欺くというモラル的なことはここではおいといて、そういった音のトリックとかいったような
ものというのは昭和の時代よく溢れていて、けっこうネタバレを聞いたりすると楽しめたような気がする。
上に書いたのは俗にいう‘アリバイ音’であって音源は本物だけれど、昔のラジオドラマや
テレビの音入れでは、フェイク音が豊富だった。
有名なものでいえば、たくさんの大豆を入れたザルを右へ左へ傾けて、中の大豆を流すことを
繰り返すと、ザザー、ザザーと波の音に聞こえるというアレ。
今さらながら、ちょっと前に三谷幸喜脚本の映画
「ラヂオの時間」
をBSで観た。
ドタバタ劇の中の味付けとして、守衛役?の藤村俊二がそういったさまざまな音響テクニックを
駆使して、ラジオドラマの窮地を救うシーンがちりばめられていた。
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- 現代は映像や音響について技術が発達し、機械によってあらゆる現象がリアルに簡単に
- 作りだせるかもしれない。
- それはそれで素晴らしいことだと思う。
綺麗だし、迫力もあるし、手間もかからない。
でも昭和から平成にかけて、だんだんとドラマや映画の製作裏話的なものって、減っていった
なあっていう寂しさは正直ちょっとだけある。
昔の特撮とかって、あとになってから
「あのシーンは実はこうやって撮っていました」
とか、
「あの音は実は○○の鳴き声を使ったんです」
とかいった話を聞いて、
へえ~!!って良く感心したり、驚いたりした。
そしてそういった知識を工作や学芸会のセットなどにも使用したりした。
今はそういうのがほとんどない。
「あれはCGです」
でおわり。
さっきの営業マンのサボりの話に戻るけど、ああいった些細な悪知恵?
つまりチョンボやイカサマを考える原始的な力というもの何か新しい物を生み出したり、
表現する能力を鍛えるというのも大事なんじゃないかなって思える今日このごろ。
名作に残る演出というのは、のちの作り手や表現者とかに「影響」っていう
DNAを与えるものなのだ。
音響や視覚における演出だけに限らない。
時には作品中に登場する脇役だって、その存在によっては影響を与えることになるのだ。
名作映画脇役名鑑
【だ】
『ダニエル・スパンクマイヤー』
――
ダニエル・スパンクマイヤ―はジェームズ・キャメロン監督の作品「エイリアン2」に登場する
人物。
階級は二等兵。主人公たち戦士を運ぶ降下艇の副操縦士である。
シガニ―・ウィーバー演じる主人公リプリーたちが離れた場所で戦闘中、操縦士である
コレット伍長とともに降下艇で待機。
艇内に忍び込む際にエイリアンが垂らしていた唾液に気づく(画像参照)も、
それが何かわからず艇内に戻り操縦室に戻るまでの間に潜んでいたエイリアンに殺される。
しかし、殺害されるシーンはなく、作品中に流れる時間のなかで殺されていたことを
暗黙で見ているほうに伝える手法。直接殺害描写なしでどんなふうに殺されたかを想像
させるセンセーショナルな登場人物は彼ひとりだけ。
登場カット数もセリフ数も、もっともといって良いほど少ない脇役だが、その唯一の殺害描写ナシという位置づけと、スタイリッシュで響きもいい役名は当ブログ著者に大きな影響を与えるものとなった。