春駒@秋津 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

その時代に生きていたわけじゃないので、「遊郭」という場所の雰囲気を当然知らない。

その時代に生きていたとしても、足を踏み入れているかは不明だ。


ただ、今まで観たことのあるドラマや映画のなかで描写されている遊郭の風景はだいたい

同じであった。


登場人物が歩いている通路の両側にほったて小屋、あるいは狭い小部屋が軒を連ね、

たくさんの格子戸の内側から、着物姿の遊女たちがみんなして、


「ちょっと! おにいさん! おいでおいで!!」


といった感じで手招きの誘惑をしてくる風景だ。


「遊郭」

そこにはきっと、様々な癒しのコンテンツが存在するに違いない。

ハラミ、ロース、カルビに上ミノなどの肉の競演による癒しが。


すまん。それは「遊郭」じゃなくて「牛角」だった……(-_-)




上野はアメ横ガード下や、浅草はホッピー通り。関西ならば駅のホームにまで焼きモノの

匂いが流れてくるような鶴橋――


ここ最近、呑んべえ街というのはオレの認識している限りの「遊郭」に似ているなァと

感じはじめた。


合わせ鏡のように長く通りの先まで連なる多種多様な店たち。


それらの軒先から流れてくる焼き鳥の美味そうな匂いや白煙は、道ゆく者をなんとしても

自分の店に引き寄せようとする遊女たちの誘惑の手招きに近いものがある。


ただひとつ特殊なのは、その手招きの対象が殿方に限らず姫君にも有効だということ。

尾崎豊の「KISS」という歌に

♪夜の街に天使を装うアルコールの慰安婦♪

という歌詞がある。


酒という存在は、オトコもオンナもどちらも癒したり慰めてくれる「第3の性別」といえる

かもしれないな、うん。


そして飲み屋街というのは性別を越えた「胃袋の遊郭」かもしれない。


うーむ、酒と酒場のある空間というのは、なんて文学なのだろう。



そんなオレが最近改めて気になっている文学的遊郭が、過去にも一度書いた

新秋津駅⇔秋津駅

のエリアである。


前回一度、サラリーマンという居酒屋には入って記事にも書いた。


秋津にはまだまだ有名かつ人気の飲み屋がたくさんあるのだが、もっとも人気のある

立ち呑み店はいつも早い時間から混んでいるうえに、常連食が濃いのでハードルの高さは

ハンパじゃない。


よって、今回は第2希望の店を訪問。

秋津では老舗で評判の焼き鳥屋で、こちらも前から狙っていた(笑)



『春駒』

東京都東村山市秋津町5-7-25

詳しくはココ



春1


早い段階で満席になるから、今まで数回機会を逃していた。

今回はふたりで入店できた。



店内はL字カウンターに、小さいこあがりがある。


こあがりは外側の壁のすぐ裏にあるので、道路から中を覗いても見えず、カウンターだけの

店に見える。

今回中に入って、はじめてこあがりがあるのを知った。


L字の短い横棒部分にある2席に座った。



春2




まずは生ビール。


お通しは「冷や奴」だ。



春4



この店は串が大きく美味く、そして安いと評判。


肉類の串はナンコツだけが120円であとはほぼ100円。



春3


一番左が「ナンコツ」


かたさといい、ゴツゴツ具合といい噛み応えがあって、とても美味い。



春5


右3本は「ハツ」「シロ」「レバー」


いずれも塩で。すべて100円。安い。



店の様子を観察すると、どうやらご家族経営といった感じ。


串は優しいおばあちゃんが丁寧に焼いて出してくれた。


同時に辛味噌も「ご自由に」といって差し出してくれる。

そのままでも串は十分美味しいが、辛味噌をつけてもナイス。


ひとつ大変そうだなァって思ったのは、この店のL字カウンターなのだが、通常ならば

お客さんの座っている側とカウンター内を行き来するために、どこか一カ所が上にパカって

開くものだが、それがないようだ。


そして、ビールサーバーが入口入ってすぐ横にある。

つまり、カウンターの外側(客側)だ。


だから、生ビールの注文をうけてお客に提供する際は、上のカウンター画像の奥にある

通用口から一度外にでて、店の道路を通って、入口からまた入り、そこでビールを注いでいた。


生生しい野暮さがチェーン店ぽくなくて味があるが、お店にオヤッサンは大変そうだ。




いろんな人のブログを見てまわって知ったメニューを一品注文。

「揚げ納豆」


油揚げの袋の中に納豆が入っている。

ヘルシーな酒の肴。これも美味い。



春6


店内の空気も時間が経てば経つほど、肌によくなじんでくる。


もしかしたら有線だろうか。

なにより昭和の懐メロがひっきりなしにかかっているのが、レトロで嬉しい。



ふと意識した時にかかっていた曲はピンキーとキラーズの「恋の季節」。

いいじゃないか。その選曲。


水前寺清子がチータと呼ばれているのは「チビのタミコ(本名)」でチータだったのは

しっているが、今陽子がどうしてピンキーなのかはいまだにワカラナイ。

知っておられる方、教えてください。

ちなみにチータが正解なのか、チーターが正解なのかもオレの中でビミョーである。



その次にかかった曲はオーソドックスに山口百恵の「いい日旅立ち」だった。


レトロ酒場は舌だけでなく、耳でも味わうことができるのが特典だ。


肉以外も口にしたいので「しいたけ焼き」

価格は肉より60円高いけど美味くておすすめ。

隣りのお客も頼んでいた。



春7



「レモンハイ」「モツ煮こみ」



春8


すべての料理が丁寧で、味付けがしっかりされている。



接客態度もかなり感じいいし、様子を見る限りではひとりでゆっくり呑んでいるお客さんに

対してはその時間を邪魔することもない。


ワイワイガヤガヤうるさくもなく、かといってガンコおやじの店のように神経を使うこともまったく

ない。


是非またひとりでも来たくなるような素晴らしい店だった。



飲み屋街というと23区ばかりがクローズアップされがちだが、秋津はまさに酒の隠れ里。

23区の人も一度来る価値があるエリアだと個人的には思う。