おもひでほろほろ①四万・御夢想の湯 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

当初は先々週出向く予定だったのだけれど、宿の手配の問題で1週間ほどずれてしまったが

人生四度目の四万温泉へ休養に。


普通列車の乗り継ぎとバスで4時間弱かけて群馬まで。


これまでは中之条駅からバスに乗り、山口というバス停で降りていたが今回は一気に

終点である四万温泉まで行った。



3年ぶりのおちあい通り。



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四万といえば旅雑誌で必ず紹介されているスマートボールの柳屋さんの戸には

「都合によりしばらく休業します」の張り紙が。


これまで入店したこともないのにこんなこというのもなんだけど、お店の人が体調でも

くずされたのではなければいいなと思った。


それから少し前に観た映画「沈まぬ太陽」のなかで、香川照之が告発資料のようなものを

この通りにあるポストから投函していたが、それらしきポストは見当たらなかった。

オレが見落としただけか、それともポストそのものが大道具だったのか。


しかし、なんだろう?

6年前のおもひでもあるせいか、この四万温泉郷におりたって歩いているとなぜか

毎回涙がこみあげてくる。


しみじみしながら温泉街を抜ける。

今までは温泉郷の入り口あたりか、あるいはバス終点あたりの宿に泊まり、散策も

その周辺だったが、今回の目的は温泉郷のなかのさらに深いところにあるので

観光客が集まる地域から、ひとり離れて先へと進んでゆく。


予告編の最後につけた画像は「熊除け鈴」。

これが山道(車道)の途中に2,3カ所ある。



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一番初めに四万に来て、このへんまで足をのばした際に発見して何かなと思った。


熊は音に驚くので、遭遇したら柱に備え付けてあるハンマーでこの鐘のようなものを鳴らして

熊を遠ざける物のようだ。


最初に見た時、地域らしくて面白いなと思った。


太宰治賞に応募して落選した執筆3作目は、この四万温泉を舞台に出逢った男女の

純愛小説だったのだけれど、その男女が再び四万で再会する約束をした際に待ち合わせ場所にしたのがこの「熊除け鈴」という設定にさせていただいた。

自分で創った作品とはいえ、なんだか改めてその場所にくるとは感慨深いものがある。


歩いてゆけばゆくほど静かになってゆく。


これまで3度も四万に来ているが未踏の地区だから映る景色が新鮮だ。


賑わう温泉街から、20分ほど歩くと四万のもっとも深い「ひなたみ」地区へと入る。


オレのすごく好きなテイストの風景がそこにある。



ひなたみ追加

この先を左に行けば旅館のあつまりがあり、右には神社につづく階段が。

オレの目的地のひとつは真ん中に道の先にある。



傾斜をあがり、そこから降りるとそこは四万の最奥。


右側にあるのは「日向見薬師堂」

国の重要文化財。

いくつかある今回の旅の目的地のひとつ。



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温泉街から本当に離れた山奥にあるが、ここを見たり撮影したりするために来ている

人の姿もみれた。


日本の原風景が感じられる建造物。

こういった堂は夏の空気がよく似合う。


薬師堂のすぐそばにあるのが数年前にできたばかりの共同浴場

『御夢想の湯』


これがふたつめの目的地だ。



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これがなんと無料で利用できる。

東京では信じられないふところの広さ。


画像に向かって左の扉が男湯。右の扉が女湯。


扉を開けてみたら既に先客さんがいたので、暑いけど外で少し待ってから入場。



入って左にゆくとすぐに脱衣所があり、そこから階段ですぐ下に風呂がある。

狭い空間なので、脱衣所の棚は4つのみ。

風呂も小さめではある。



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とはいえ、これだけしっかりしていてキレイな共同浴場が無料というのは本当に素晴らしい。

マナーはしっかり守って入るべし。


服を脱いで階段をおり、かけ湯クンをしてからさっそく片足を湯にさしこむ。


アツい!


オレ個人の感覚で判断すれば、これはちょっとゆっくり浸かれない熱さである。

画像にも映っているように水で埋める用と思われる蛇口とホースがあるのだけれど

使うことがちょっとためらわれた。


オレは正直熱いとしか思えないのだけれど、地元の人や常連さんからすればこのくらいの

温度が妥当というか、「通」なのかもしれないのだ。


それを初めてきた部外者のオレが勝手に水で埋めてしまってもいいものだろうか。

あとから来た常連さんが足を入れた瞬間「ぬるい!」といったらどうしようかと悩み、

しょうがないからチョロチョロってだけ埋めて我慢して浸かった。


その後、すぐに常連さんらしき60代くらいのオジサンが入ってきて、服を脱ぎ降りてきた。

片足を湯に入れた瞬間にオジサンが「あつぅっ!!」と叫び、オレに「これ、熱くないですか!?」

と声を掛けてきた。


なんだ。やっぱり激アツだったんじゃないか(笑)


思わずオレも「やっぱりコレ、熱いですよね!」と返す。


結局同意の上でさらに水を投入。


温泉て、熱いの好きな人からダメな人まで様々だからそのへんが難しい。


だけど、そういうシチュエーションがあるからこそ旅先で同じ空間になった人との

こういった会話も生まれるから楽しい。


そうだ。

オレは気付いた。


オレは孤独が好きだが、決して「コミュニケーション」が嫌いなわけじゃない。

「コミュニケーション」が嫌いなんじゃなくて「コミュニケーション能力」という言葉が嫌いなのだ。

そんな言葉はブタにでも食わせてしまえばいい。ブタでさえ不味くて食えねえか(笑)


しばしの間、見知らぬオジサンと同じ釜の飯を食うならぬ、同じ湯舟の湯を浴びてから

お先にあがった。



そのあとも車でくる入浴客が途切れない。

やはりかなりがある共同浴場のようだ。


うーん、しかし外も相変わらず猛暑だ。

せっかく汗を流したのに、また汗が噴き出てくる。



チェックインの時間も近づいてきたので、宿へ向かうことに。



続く