- 都市伝説セピア (文春文庫)/文藝春秋
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年も改まったこともあるので、今回は「ホッ」とするようなカップルのエピソードひとつ。
とある大型デパートの屋上にあるテラスで一組のカップルがコーヒーを飲みながら
話をしていた。それは別れ話だった。
男の方は「別れたい」
女の方は「別れたくない」と言い張るような雰囲気で、話は平行線のまま時間が過ぎた。
やがて、男のほうはこのまま話を続けていてもきりがないと判断し「さようなら」と言って強引に
ケリをつけ立ち上がり、彼女を置いてその場を去った。
彼女のほうはショックが大きかったのか、席に座ったまま手で顔を覆い泣いて動けないままでいた。
男のほうはそんな彼女を気にもせず、エレベータ―に向かった。
屋上に到着したエレベーターに乗り込んだ男は一階まで下りた。
一階に到着した男は、早く家に帰ってこの時間を忘れようとデパートの出入り口へと足を
急がせた。
男がデパートの出入り口から一歩外に出た瞬間、ポケットに入れていた携帯電話がメール受信音を鳴らした。
男は足を止めてポケットから携帯電話を取り出し、受信したメールを開いた。
液晶に表示されていた送信者名には、さっきふったばかりの彼女の名前が。
そしてメッセージには
「上を見て」
と一言だけ添えられていた。
なんだろう? と不思議に思った男は一拍おいてから顔を上に向けた。
すると、すぐ目の前に屋上から投身自殺をはかって飛び降りてきた彼女の顔が
あり、目が合った。
彼女の目は笑っているように見えた……。
おっと、これはまた失礼。
「ホッ」とする話ではなくて、「ゾッ」とする話の間違いだった(爆)
まあ、これはたしか都市伝説短編のおける名手である平山夢明氏の作品のひとつだったと思うけど、やはり短い文章の中でもインパクトが強いエピソードだった。
オレみたいな人間になると、どうもありきたりのハッピーエンドのストーリーや、キラキラ安っぽく
輝くサクセスストーリーよりも、こういうゾクゾクするようなエピソードに惹かれてしまうのでイケマせんな(笑)
都市伝説っていうと大まかに2種類あって、簡単に言うとユーレイものと、こういう実際にあっても
おかしくないモノ。
ピアスの穴開けたら白い糸が出てきたという噂とかは、ユーレイというよりも実際に
身近に感じるありそうなテイストだ。
オレのように人間の狂気を浮きぼりにしたような都市伝説が好きな人間には平山夢明作品が
あっているかもしれないが、ちょっと軽めな怪談テイストが好きだったり、あるいは「世にも奇妙な
物語」で、たまーにやっているメルヘンチックなテイストが好きな人にはこの作品はあっているかもしれない。
奇妙系や、もしも系などのドラマや小説でよく見られる「もしも時間を戻すことが出来たら」といった
話もしっかりある。
さすがに今さら斬新な展開というのはなかなか創造出来ないとは見れるが、それでも時間を操り、過去と未来を行き来できるという設定はテッパンなのだろうな。
そして、過去にさかのぼる目的というのも、だいたいは事故死した友人や恋人を助けるという
こと。これもお決まり。
どちらかというと希望やメルヘンを感じさせる都市伝説が好きな人には読める作品かもしれない。
希望よりも絶望を読みたい! 綺麗事はもうたくさんだ!!
隣人や偽善者が隠している狂気をもっと見たいという人にはこちらのシリーズをおススメします(笑)
ブログ開始の頃に一度紹介したけど改めて。
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