キネマの屋根裏 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。




やはり、どうしても好きになれないし、面白いとも思わない。
最近はテレビやラジオの中からだけでもなく、街中を歩いている人の口からも
よく聞こえてきたりするあのリズムと歌にだ。

それが全部で「3つ」ほどあるな。つまり、それぞれひと組ずつで合計3組。

世間的には流行っているとされているようだけど。オレは何度聞いてもダメ。
名誉のため、実名はあえて出さないけど(笑)
まあ、ひと組は基盤のネタがあってそのツールとして使っていて、一度だけネタそのものを
見た時はそれなりの企画だったことでちょっと笑ったからいいとしても、
あとの2組はダメだ、オレは。
(その2組は、歌ひと組とリズムひと組だが、どの組だかは想像にお任せする)

演じる側も、それを見聞きする側も感性はそれぞれで正解なんてないのだから
批判でもなんでもなく、個人の感想だからはっきり言うけどワラエナイ。

もともとオレはお笑いが好きで、ハガキ職人とかもやっていたことがあるのだが
お笑いの中でも、流れというかちゃんとボケやオチやストーリーがある漫才やコントが好きで
あって、とくに上手いオチもないのに、お決まりのセリフやテンションや踊りなどありき、
というか、それだけで意味のない芸は好きじゃない。

流れやオチが巧みな正統派のネタをやる芸人サンが好きだ。
とくにファンというわけではないけれど、サンドウィッチマンのコントなどはキャラや決まり
セリフで押すことなく、しっかりとしたボケツッコミで進行されるから文句ナシの正統実力派だと思っている。
たまーに「だってだってだって!伊達チャンです!」というネタは言っているけど、あれは
漫才師としての基本テクニックもネタもしっかりと持ったうえでのプラスアルファとして漫才とは別にフリートークなどで言っているので問題ナイ。

またブレイクした当時の藤井隆もダンスをウリにしていたが、あれはあれでそれなりに自身の
キャラにうまくハマっていたことと、また藤井隆の人柄が後押ししたこともあって不快感は
なかった。オレにはね。

また特定のフレーズとかがあるにしても、メインとなるネタやボケは存在して、ボケたあとに
締めるワードとしての決まりフレーズはアリだと思う。スギちゃんの「ワイルドだろう~」とか。
「ワイルドだろう~」自体がボケなのではなくて、それを言う前にネタはネタでしゃべっている。

だけど、今話題とされているリズムや歌のネタって、基盤となるネタがあって、それを言ったあとに意味のわからないリズムの締めとして飾り付けるのではなくて、意味もわからないリズム
そのものが、基盤になっているように見えてならない。つまりそこに運ぶフリはあったとしても
ネタにオチはないのだ。
最初から最後までずっと意味のわからないリズムや歌や、あるいはテンションで貫き通そうと
しているようにしか見えない。
でも、それなりに多くの人からウケテてるようだ。


リズムのほうの話ばかりしたが、歌のほうも個人的にはダメ。
とても上手いのは認める。でも巧さだけが際立って、お笑いはどこへ消えた?
猿岩石がヒッチハイクの旅から帰国して、ネタを披露した時イマイチで、それかマジメな歌を歌うほうへと方向転換した時、かなり歌唱力があると評価されCDもすごく売れたが、それと同時に「お笑いをやらないお笑い芸人」と叩かれたことが頭をよぎる。

今流行っているその芸人も、歌手としてはなかなか評価されてるようで。
まあ、いいんだけど。

とにかく本業でない場所やテクニックで勝負する芸能人はけっこう多い。
最近減ってきたものの、昔はグラビアアイドルでさえよく曲を出していた。
細川ふみえの「スキスキスー」とか。そして、売れない(笑)

俳優や芸人がCDを出すとたいていロクでもないものか、もしくはプロデュースした大物の
ネームバリュー&作風で売れる程度である。

でも、そんな「俳優が出したCDアルバム」の中で、オレが唯一大絶賛するものがある。
もう20年くらい前にリリースされたアルバム……
永瀬正敏の「CONEY ISLAND JELLYFISH」だ。

もともと永瀬正敏は男のオレから見てもかっこいいなとは思っていたが、別に関連する商品を
買いたいとまでは思っていなかった。

だけど当時、本人出演のサントリーCMで流れていた「For the boys……」の
が好きで、発売されたアルバムの中にそれが収録されていると知って勢いで購入した。





今は休刊になった、ある硬派なカルチャー誌のCDアルバム紹介記事の中で
「俳優がまた曲を出した。なんて思ってはいけない!」と評価されていたが、それはまさに
その通りだった。

作詞もほぼ本人自ら行い、内容も硬派だったりして、永瀬が敬愛するミュージシャン
(忌野清志郎など)も曲を提供したりと製作にかかわっている。それだけ聞くと大物の力に頼っていると感じる人間もいるかもしれないが、聞く限りは偏りが感じられず、ホントに五分のコラボ
と言った感じだ。

アルバムの説明としては、ジャケットに
「誌という脚本を書き、敬愛するバンドマン達と共演しながら、短編映画を撮るように
音楽を創ってみた」
とあるが、まさに様々なストーリーをもった映画の詰め合わせのような
素晴らしさである。

実際にそんな良い曲でもないのにネームバリューによって結果的に売れた大物歌手の曲
なんかよりも、クオリティはずっと高いとオレは思う。
20年くらい経った今でも、あの時買っておいてよかったと思っているし今でも良く聴く。

目的の収録曲は「For the boys……」だったのだが、ダウンロードと違って
アルバム購入の良いところが隠れた名曲(アルバム収録曲)との出逢い。

結果的に一番好きな収録曲は最初に貼りつけた「キネマの屋根裏」

崩壊寸前の孤独な男と、生き別れ?になった妹の人生を、すごくカッコいいメロディが
飾っている。

先日、歌舞伎町から「どん底」に向かって歩いている途中で曲の一部が頭の中に流れた。

―― 街に溢れる 不良少女(チックス) 老人 ピエロ 
ストリップ小屋から微笑む母親

(歌詞から引用)


そして、まるで屋根裏部屋のような雰囲気の「どん底」についてからも曲の一部が頭に。

―― 1人ぼっちは 慣れっこだけど キネマの屋根裏で待ってる
(歌詞から引用)


崩れゆく男の姿が目に浮かぶ、そんな中最後に待つ妹との再会。

―― 幼子のお前の姿 アルツハイマーになっても忘れない
(歌詞から引用)


見事としかいいようのない平成の1枚。
今はもう売っていないのだろうか。