Dr・スランプっす | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。



いきなりだが、読者の皆さまは夕食を堪能している真っ最中に点けていたテレビの
画面に、どーん!と「ウンチ」が出てきたら、どう思うだろうか?

当然多くの人が不快に思い、そのうちの何割かの人はテレビ局にクレームの電話を入れて
局の視聴者センターはいうまでもパ二くるのが目に見えてくる。

バカ殿のハレンチなゲームが正月三が日で放送されていた時代でもかなりのクレームは
逃れられないのに、さらに(自主)規制という縄のしめつけがきつくなった現代ではとても
想像できないことである。

簡単に言えばテレビのタブー、そしてマナー的なものでいえば食事時というタイミングの
タブーである存在、そして言葉……
それが学会用語で言うところの「ウンチ」である。

健康状態を知るうえでのバロメーターでもあり、生きてゆく限り誰もが出すことがあたりまえで
あるのに、世間では嫌われモノとされ、テレビ画面さらに食事の時間帯にはタブーとされた悲しき存在「ウンチ」。

たが、オレがモノゴコロついたあたりに知ることとなったある天才漫画家は、その食事時に
公共に電波にのることを許されなかった「ウンチ」をゴールデンの時間に堂々を家庭のお茶の間にあるブラウン管の中へ送り出し、その夜の家族の間や、翌日の学校での友人たちとの会話の中に笑いを提供したのである。
それが鳥山明。


ここ30年から40年くらいでこそ擬人化して手足が生えたりにっこり笑っている「ウンチ」の
キャラが定着しているが、描写することが世間から避けられる存在にあった「ウンチ」を
ここまでポップに違和感なく(人によるけどね)世間に浸透させたひとりは間違いなく鳥山
明である。
あと、もうひとりオレが生まれる前か生まれたばかりあたりに「トイレット博士」とかいう
漫画を書いてた人がいたかもしれない。


「ウンチ」というものは一言でいってしまえば「排泄物」である。
生きた人間から出されたカスのようなものであり、当然そこに生命反応などはない。

だけど、その生きた人間から排泄されたカスに、さらにまた生命を吹き込み、言葉をしゃべらす
だけではなく、場合によっては手足も生えさせて、ペンギン村という長閑な村の中をピョンピョンと跳ねさせるという発想力は神の域に踏み込んでいるといっても過言ではない。
そしてその姿が汚いどころか、なんともまた愛苦しいのである。

「ウンチ」だけではなく、太陽や山、そして動物たちにも感情や表情があり、いつも村人とかかわりあっている。そしてそれらのやりとりは決してどちらかが相手を見下すことはなく、絶えず
平等であるのだ。

鳥山明がアラレちゃんなどの中で描く「ウンチ」は違和感なく受け入れられる。
なによりそれがスゴイ。
正直、レイザーラモンHGも好きでも嫌いでもないけれど、あのフレコミ(ハードゲイ」)で
ゴールデンのお茶の間に受け入れられたということには多少の違和感を感じずにもいられなかったし、同じく嫌いじゃないけど今流行っている日本エレキテル連合の「ダメよ~ダメダメ!」に
関しても幼稚園児とかがマネをしていてそれが普通になっているということにもオレは違和感を感じている。
エレキテル連合のセリフに関してはなかなか印象的であると思うし、嫌いではない。
ただ小さい子供が普通にマネしている風景には怒りはないが違和感はやはりある)

だって、あの「朱美チャン」ていうのは……
まあ、いいか……。

とにかく鳥山明のデッサン力というにはほぼ万人共通で魅力的だと思う。
かのドラゴンクエストもモンスターデザイン担当が鳥山明でなかったら、あそこまでは
ヒットしていなかったのではないだろうか。

ウンチや山だけではない。
他の漫画のキャラや映画はもちろん、架空のヒ―ローまでもが自分なりのデザインに
デフォルメして登場させてしまう。ゴジラやガメラやミスタースポックやターザンに
スーパーマンまで。さすがに著作権にちょっとひっかかちゃったキャラもあったみたいだけれど
(笑)

ちなみに最近知ったのだが、アラレちゃんが通う学校のクラスメートにいるキツネのお面を被った少年……。時々、作品中に登場する鳥山明本人が同じお面を被っていたり、ドラゴンボールの
中では孫悟空のオジイチャンである孫悟飯が被っていたりしたキツネのお面を被っていたあの
少年……
「ねじ式くん」という名がついていたそうだ。
元ネタはもちろん、有名漫画家つげ義春の「ねじ式」で、その中に登場したキツネのお面を
被った機関車の運転手である。

そういえばジョージ・ルーカスのスターウォーズに登場した帝国軍の兵士(白いマスクの)
……、あれも最初に知ったのはアラレちゃんでだった。
あとから友人の家でスターウォーズのビデオの戦闘シーンみて、
「あ! あの白いヘンな表情のマスク被った兵士、アラレちゃんに出てたやつだ!」と
気付いた。

鳥山明は漫画で人を楽しませるだけでなく、他の漫画家やクリエイターの宣伝者のような
功績があるんだなあとこの年齢になったしみじみ思う。