本谷有希子「あの子の考えることは変」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

あの子の考えることは変 (講談社文庫)/本谷 有希子
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かつて一世を風靡したスクール☆ウォーズというドラマをご存じだろうか。


その中で大木大介とイソップ(渾名)というふたりの人物が登場する。

松村雄基演じる大木は、その市で一番の不良で、しょっちゅう喧嘩ばかりしている。

相手に殴りかかる前に、歌いながらガクランを脱ぐというなんともシブい不良である。


一方でイソップという学生は細身で小柄で病弱である。


2人はキャラ的には全く対極の位置にいるのだが、昔からだいの仲良しであり

一緒のいることが多い。


フツウにはたから見たら接点も共通点もなく、どちらかといえば互いに近づこうとも

しないような関係に思えるが、仲が良く互いに友人思いなのだ。


実際の生活や、多くの不良ドラマとかでは、クラスの中の優等生や地味タイプ、あるいは

オタクなどはヤンキーからパシリに任命されていたり、あるいはまったく眼中に入れられてなかったりする。

ヤンキーは変に自分の人間関係ポジションに対するプライドが高いのか、クラスの中で地味な

やつやオタクっぽいやつが話しかけてくるのをすごく嫌う傾向がみられる。

「あんなやつと話しているところを見られたくない」みたいなプライドがあるのだ。


だから、貧弱でおとなしいイソップを友人として大事にする大木大介という不良は当時

すごく硬派で人情味があってかっこよく見えて憧れた。


VTRがもう擦り切れるんじゃないかというくらい繰り返された再放送を何度も見ながら

育って高校生になったオレは、そんな松村雄基にちょっと憧れ、小遣い数千円を握りしめ、

いきつけの床屋に行って、校則違反も承知で「(松村雄基みたいな)パーマかけてください!」

と床屋さんにお願いした。


が……


大木大介みたいなパーマにするには髪の毛の長さがまったく足りずに、お約束の表現である

「大阪のオバチャンパーマ」が完成してしまい、その姿を見て愕然とし、その日におとしてしまった

という苦い思い出がある。実話だ( 一一)


ま、パーマの話はどうでもいいけど、学校でも会社でも、はたから見ると意外に思える組み合わせ

というものはけっこう多い。


オレも高校の時、一番仲良かった友人がパーマに茶髪でボクシングもやっているゴツイやつだったから、比較的地味な外見のオレがそいつといつもつるんでいるのが意外だとよく言われた。

ちなみにその友人は喧嘩とかもしたり走り屋とかにも属していたが、友人としては純粋に面白くて

いいやつで一緒にいて楽しかったからつるんでいた。決してヤンキーポジションの友人を置こうと

して近づいたわけじゃない。


今回とりあげた本谷有希子の「あの子の考えることは変」に出てくるふたりもある意味で

‘対極’かもしれない。

知らなかったが、芥川賞候補にもなった作品のようだ。


――

Gカップ「おっぱい」をアイデンティティとする23歳フリーター・巡谷(めぐりや)。アパートの同居人は「自分は臭い」と信じる23歳処女・日田(にった)。日田は外見に一切気を遣わぬ変人だが

巡谷は彼女だけが自分の理解者だとも感じている。情けなくどうしようもなく孤独な毎日も

二人が一緒ならなんとかやっていけるかもしれない。

(裏表紙解説より引用)


今、世間やバラエティ番組の中ではよく「残念な人」といったワードを耳にすることが多い。

作品中に出てくるふたりはベクトルは違うがある意味で両方とも「残念ガール」である。


でも自分の周囲とかを見たり、今まであった人を思い出すとわかるのだけれど

「残念な人」っていうのは「イヤな人」ではないのだ。


生まれもって○○に恵まれなかったとか、必死になっているんだけどなんかズレてたり

結果をだせなかったり。

だから「残念な人」なのではないかと。

オレはこれは今の時代でいえばすごく「落ちつかせてくれたり笑わせてくれる人」だと思う。


巡谷の言う事に対して日田はまったく見当違いのことや、わけのわからない言い訳をして

巡谷もたまーにイライラするが、それでもそういった表面上の言葉のやりとりとか、趣味の違いとかいうものよりももっと深いところにあるものを互いに感じているからこそ一緒にいられるという

ようなことを感じさせる。


互いにイライラしたり、おどおどしたりしながらも、そういう自分にない部分に憧れてもいる

というのは誰にでもあるような気がする。


オレはオトコだから、ここに書かれている女子の世界が比較的リアルなのか、それともまったくの

エンタメの世界なのかはわからないが、なんとなく女子の友情の世界を垣間見せてもらったような

気がするのう。


評価は割れているようだけど、今まで読んだ本谷の本の中ではこれが一番よかったというのが

個人的な感想。




今回のもう一冊。


どこにでもある場所とどこにもいない私/村上 龍
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街にあらゆる場所にいる人達のドラマ。

短編連作で、章により「コンビニ」とか「カラオケ」とか場所が切り替わる。


――

気力がゼロになると何か支えてくれるものが欲しくなる。


――

やっとわかったんだけど、本当の支えになるものは自分自身の考え方しかない。


この2つの文章のリンクは印象深かった。まったくそのとおりだ。