コクトーの世界 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

梅雨に入っただけあって三日連続で雨である。


雨天に関しては洗濯ができなかったり、出掛けるにしても靴や服がぬれたりというふうに

実用的にはうっとおしいが、雰囲気的には好きとはいわないまでもそんなに嫌いではない。

前にもちょっと書いた気もするが。


ただ先日の土曜日だけは大変お世話になった人のおめでたい式だったので、

オレ個人としてもご結婚されたお二人のためにも、なんとか晴れてほしかった気持ちは強い。

でも天気は雨だったけど式はとても素晴らしい場になったからよかったと思う。感動した。


ところで、今回参加させて頂いた式の件とはまた別としても

ドラマやコントなどで雨の日に結婚式があった場合、司会の人がスピーチで

「本日は生憎の天気ですが――」とかいうのを昔よく聞いた。


オレはセレモニー系におけるマニュアルとかスピーチの常識とかはよく知らないので

間違いはあるかもしれないが、今はその「生憎の天気」というのをあまり聞かない。

かわりに「お足もとの悪い中――」という言い方をいろんな会の場で司会者などの口から

出るのを耳にする。


気のせいか、それとも「生憎」が表現的に相応しくないという声が出始めたからかの

どちらかだろうか。


オレがここでいう「ふさわしくない」という表現については、決して「生‘憎’(あいにく)」というように

オメデタイ場所に出るべきでない文字というか言葉が入っているからとかいうような

縁起的な問題ではなくて、それこそ現実的でもあり哲学的な問題で「ふさわしくない」と言っているのだ。


参加者全員に向かって、「生憎の雨」と言ってしまうと、それは今そこにいるすべての人間が

雨天を憂えているような前提となる。


だが……

人の価値観というものは十人十色であり感性は違う。


もしかしたら、新郎と新婦のどちらか、心から雨の景色を愛している可能性もないとはいえない。

もし、雨の景色を好んでいるのなら、それは最高のシチュエーションではないだろうか。


だからと言って、もしどちらかが雨を好きだとしてその日の状況を喜んでいるということが

その場の全員にはっきりしていたとしても、そこで「素晴らしい雨の日で――」と言ってしまうにも

問題はある。

当然、好きな人もいれば嫌いな人もいるから、雨天について前置きする件で「生憎」も「素晴らしい」もどっちもふさわしくないという結果になる。


だけど「お足もとが悪い」と言う表現に関しては、雨が好きな人にとっても嫌いな人にとっても

共通であるには違いないから、もっとも適切な言い方かなあとか考えたりする。


そう、天気の好みも人それぞれ。日本人、地球人全員がカラッカラの快晴が好きだとは限らない。

ちなみにオレは普通の晴れは好きだが、あまりにもいきすぎた快晴は爽やかさの押しつけみたいであまり好きじゃない(笑) 空に松岡修造が10人くらい浮かんでいるような「アツさ」を感じると

でも言えば伝わるだろうか。


そう言えば、オレは今まで詩集とかってあまり読まないタイプだったんだけど最近ちらちらと

たしなみだした、あくまでホントに少しだが。


この前は初めてまともに「コクトー」の詩集を読んだかな(哲学好きにしては遅い)


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その中で、もう有名な詩なんだろうけど、

「空は万人の所有物だよ」

というのがある。


これに関しては当然であり、哲学的でもある反面で他のどんな論よりもある意味で

現実的で正当な意見だと感じる。


先程の天候の話にもつながるが、空には区切りや枠がなく、あらゆる国のすべてに人の頭上に

平等に存在するわけだ。


だから、晴れが好きな人の頭上だけではなく、嵐や台風や雨や雪の女王が好きな人のうえに

だって広がっているという当然の理論。


運動会や遠足の日、天気が晴れだった場合、校長先生がみんなの前で、

「今日はいい天気ですね」といったりする。


でもそれはそこにいる全員にその日の天気を喜んでいるかどうかの確認をとったわけではない。

全員とかいわないまでも、おそらくそこにいる多くの人間が晴れを喜んでいるとか、また運動会や

遠足の日に雨が降って喜ぶ人間なんていないという勝手なきめつけでの発言ともいえるのでは

ないだろうか。

雨が好きで、遠足などの行事が嫌いな人間もしるかもしれない。

イベントがある日に「今日はいい天気で良かったですね」という言葉はある意味で

いるかもしれない少数派の心境を無視した多数派よりの発言ではないだろうか。


もし、そこで生徒のテンションをさげない発言をするのであれば

「‘いい天気’でよかったですね」 ではなく

「‘運動するには適した天気’で良かったですね」というほうがふさわしいのではないだろうか。

ちなみにオレは運動会とかが嫌いだったんで、雨で中止になると喜んだ。


(改めて言っておきますが、このコラムは少数派エンターテイメントなんで多少の大袈裟表現は

ありますが、ヒネクレ意見を言ってナンボだという覚悟で書いております。あしからず)


でもね、マジな話……


たしかに「空」は万人の所有物であるから、そういった「いい天気」発言をする校長先生とかの

言葉っていうのは言い換えれば

「空は私たちみたいな晴れが好きな多数派のものだ!」と言っているのに等しいのではないか」


雨や嵐が好きな人に対して「空はお前たちのような悪天候好きのものではない」と言っている

ようにとれないでもない(笑)


空が万人の所有物であると同時に、人間もいろんな価値観をもった人がいることを考えると

「晴れ」や「雨」や「台風」という天気は存在するし、「外出に適した天気」「運動するにふさわしい

天気」というものも存在するが、「いい天気」なんてものは存在しないとオレは思う。

「いい天気」とは人によって違う。

何年も前に雨が全然フラなくてダムに底が見えてきて家庭における節水指令が出た時

あれだけ快晴が続いたのに、後半になるとい誰も朝起きて「あー今日もいい天気だ!」とか

笑顔で言わなかったでしょう。やっと雨降ったときは皆喜んでたじゃん。


境や枠がなくて、あらゆる人も周りに平等にあるものといえば空だけではない。

空気だって同じである。


空気が読めないという表現があるが、では、その場にふさわしい空気の基準というのは

なんだろうか。

スムーズに流れていたその場の空気をとめてしまったり、雰囲気を壊すような発言をしたら

それは空気を読めないということになるのだろうか。

悪天候が好きか嫌いかの問題同様、その場にふさわしい空気も結局多数派のほうが

正当としてとらえられ、少数派の発言をした者がいわゆる「空気を読めない」ということに

なるのだろうか。


その場の空気もなにも、空気だって万人のもので、誰が自由に使っても問題ないのではないか。


1つ極論をあげたい。そして疑問。


例えばある部屋で、オレと、その他4人くらいの人間で酒を飲んで楽しく語りあっていたとする。

その時にオレ意外の4人が楽しそうにしながらこんな会話で意気投合していたとする。

冗談だか本気だかは個人の想像に任せる。


A 「人なんてさ、簡単に殺しちゃっていいと思わね?」

B 「全然オッケーでしょ? てかバンバン殺しちゃっていいんじゃね」

C 「そうだよ、性別とか、国籍とか年齢とか性格なんてカンケ―なくさ!」

D 「そうだよ! そういう法律作っちゃえ! わははははは!」


こんな会話をしながら笑っていて、本気はどうかわからないが4人とも楽しそうである。


そこに来て、そんなテーマでもり上がるような空気に賛同できないオレが真剣な顏で

「いや、そういうコト言うのって冗談でもあまり良くないよ」って言って、その場が固まったとする。


発言内容が正しいかどうかは別として、そこでの「空気」に関してはオレが

「空気を読めない男」ということになるのだろうか。

オレが自分の考えを素直に言っただけだとしても「空気が読めるか読めないか」のどちらか

だけで言うならばオレは「空気が読めない男」になるのだろうか。

それでも「空気を読める人」のほうが世の中には大事なのだろうか。

そこだけ疑問。


空も空気も、そしてこの世の中もすべてが万人の所有物であって、決して多数派や良識者や

精神論者の支配する世界ではないとオレは訴えたい。



所有物の話ばかりになってしまったが、コクトーの詩において他では

ミロのヴィーナスの詩が印象的だったな。


「ある百姓が自分の畑を耕していたら、ミロのヴィーナスの腕を発見しました。

さて、この両腕はヴィーナスのものでしょうか。それとも百姓のものでしょうか?」


うむむ、これは難題である。


キーポイントは、ミロのヴィーナスにはもともと両腕が存在しなかったということ。

例えば、もともと像には両腕があって、それが紛失や強奪されたあと畑でみつかったなら

それは明らかにヴィーナスのモノである。

だか、この文章は、もともと存在していないはずの所有物が、所有者じゃない者の所持する

場所でみつかったというところ。


我々を悩ますほど罪深く、また奥も深い素晴らしき「コクトー」の世界……

みなさまもぜひご堪能あれ。


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