太宰が愛した鰻「若松屋」 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

こんばんわ。

セレモニーの類が大キライで、二十歳の時はとくに会いたい同級生もいなかったので

成人式には参加しなかったけど、あとになってちょっと後悔したケンです。

今夜もよろしくお付き合いお願い致しまする。


さてと、

祝日だから、たまにはそれっぽい記事でも書くか。


昨日は初代と二代目の愛犬の墓参りに行ってきて、帰りに前から行ってみたかった

店があったので、そこで夕食。


いやー、地元でもね、まだまだ有名な場所とか店ってけっこうあるのね。

中学生くらいまでは東京都民なのに「区民」でなく「市民」というのがなんかダサいという

ような自虐感覚があったんだけど、やっぱ市という分子で構成された多摩地区っていうのは

隠れた名所が多くて、大人になってから素晴らしいエリアだと実感する。


今回行った店は実家からも、今の部屋からも近くで、通ってた大学からも近くて

そのうえ、小さい時はその近くのスイミングスクールにも通ってて、人生で何回も店の前を

通っていたのに、そんな名店だなんてずっと知らなかった店。

知らずに通り過ぎていた今までの時間がもったいないと思った。


国分寺駅から、府中駅に向かう途中にある


『若松屋』

東京都国分寺市東元町2-13-19


詳細はコチラ


若松屋外観


行ってみたかった理由は、単純に太宰が愛した料理と同じモンを食べてみたいということが

ひとつ。


あともうひとつは、太宰と同じものを食べることによって、先日応募した「太宰治賞」で予選突破

できればいいという根拠のないゲン担ぎである(笑)。


この店はもともと三鷹にあって、その頃に太宰が通っていたらしい。

のちに国分寺に移転して、この場所にきた。



太宰看板


三鷹時代、先代と太宰はとても親交が深く、当時の店の前でとった2ショット写真も。


看板アップ


また、入口横では「うなぎ」が水槽にてお出迎え。


水槽 鰻

1人で入るには、ちょっと度胸がいる感じの店構えだが、ピース又吉が訪問した時に

とっても人柄のいいご主人とご家族が対応してくれて涙が出そうだったとコラムで書いていたので

深呼吸して中に入る。

ウイーン(自動ドアの開く音)

ご主人と娘さん(奥さんではないかと?)がとても感じ良く迎えてくれた。

このご主人のお父さんが太宰と仲が良かった先代である。看板の写真で太宰に横に

いた人。


正直、店内の写真も撮りたかったのだが、先客が数人いらしてたのと、オレのガラケーだと

思い切り「パシャ!」と音が響くので、撮影不可ではないが、一応ここではまだ自粛しておいた。

うなぎが来たら、そこで数回パシャパシャ鳴らすから、その時までは静かにしようと(汗)


基本は鮨屋なんで、つくりはやはりカウンターとテーブルだった。

かなりイイ雰囲気。


ひとりなんでカウンターに座り、注文する。

「鰻重」が来るまでしばし待つ。


店の奥の棚には「太宰の本」とか、先代が太宰と一緒に撮った写真が飾られている。

(写真とりたかった……。しかもその近くにお客さんもいたから近くで見ることも遠慮した)


でも、オレが座ったカウンターの横でも太宰関連の記事がファイルされたものがあったんで

それを読んで過ごす。


ちなみに、これは訪問前に仕入れた情報なのだが、衝撃的な事実がひとつ。


さっきも書いたとおり、太宰は三鷹時代のこの店の味を愛し、夕方には店にきて酒を飲んでいた

という。そして先代(ご主人のお父さん)とはとても親しかった。


ある日、仕掛けた鰻を捕まえに出掛けた先代が、川のくぼみに引っ掛かって絶命していた太宰を

最初に発見し、腰上あたりまで水につかり、その遺体を引き揚げたのだ。


これを知った時、その事実にホントにおどろいた。

目の前にいるご主人のお父さんがその人なのだ。

これは実はすごいことだとオレは思う。


太宰の自殺を嗅ぎつけたマスコミがあつまってきて、カメラマンはこれぞスクープと言わんばかりに

引き揚げられた太宰の遺体に向け、容赦なくシャッターを切りまくった。

親友だった先代は、太宰の遺体に集まる蠅のようなカメラマンに対し、竹をふりまわして追い払ったという。

涙が出るほどの友情だよ、こりゃ。


でも太宰も仲が良かった先代に最初に発見されて、ある意味幸せだったのかもしれない。


さて、店と先代のすごさを語る豆知識はこのくらいにしよう。


数分待って、うなぎ到着。


今回、注文したのは

『鰻重(中串)』 2600円

である。


うな重全体

お吸い物と漬物がついている。


鰻重単体アップはこちら。


うな重四分の三


ハッキリいってしまうと、居酒屋とかでの飲み会でなく、ひとりでの純粋な外食として

一品(一食)にこの値段のものを食べるのは人生初めてかもしれない。


正直、経済的に決して裕福ではないが、それでもこの鰻は是非一度食べてみたかった。

ゲン担ぎという事でも。

またこれから長い一年を乗り切る栄養をつけるための、たまにの贅沢としても。

そして太宰と同じものを食べるということにしてもだ。


そう考えると、清水の舞台からロープなしのバンジージャンプするくらいの気持ちで

財布に負担を強いる価値はある。


情報によると鰻は浜名湖産らしい。


さあ、太宰が愛したのと同じ鰻を頂いてみよう。


言うまでもなく食べてみると美味い。

もう、それ以上言う事は無い。

書くのが面倒くさいわけじゃない。


あきらかにそのヘンの安い鰻と違うにはわかるけど、オレは料理や高級食材のスぺシャリスト

ではないんで、偉そうにわかったような事書くと、逆に安っぽく聞こえる危険性があるから

あえて「本当に美味い」とだけ言っておいて、このコラム的には「太宰ゆかり」という紹介に

重点を置かせておいただく。


料理や味に詳しい方は、たくさんいらして、既にそういうレビューも書いてるからね、

そっちはそういう人たちにまかせます(笑)


さて、

美味しく完食させて頂いたところで、オレは太宰のフォースを見につけることが出来ただろうか。

賞、せめて予選は突破したいなあ。一次予選突破は決定し次第発表とのこと。




今回紹介した若松屋さん、興味ある人は是非一度ご訪問を。

短編の「メリイクリスマス」の中で終盤に登場する屋台の鰻屋は、三鷹時代の「若松屋」です。