生! 黒田夏子×川上未映子W芥川賞作家公開トーク。その後まさか…… | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

1年くらい前にピース又吉&町田康の読書についての講義に行ってきたが

今回も少し前に大学主催の文学関連イベントを見つけたので先日早稲田大学まで行ってきた。


今回登壇する作家は「乳と卵」で芥川賞受賞した川上未映子サンと、

つい最近「abさんご」で同じく芥川賞を受賞した黒田夏子サンのふたり。


川上さんはまだ若い女性作家で、忘れた人も顏見れば思いだすだろうと思う。キレイ系だし。

小説は「へヴン」「わたくし率 イン歯ー、または世界」しか読んでいないが

エッセイ集は最新本以外は全部読んでいる。

独特の世界観と言い回しがある好きな女性作家である。


黒田さんに関しては過去記事にも書いた通り「abさんご」は申し訳ないが途中で挫折したが

同じく独特の世界を築きあげている人であるし、最高齢での受賞ということで人間的な魅力を

感じた。


その2人の公開トークが無料で見れるなら、これは行かないとイカンだろうと思い出向いた次第。


会場は先に書いた通り、早稲田大学の戸山キャンパス36号館。


昭和80年代クロニクル-早稲田

会場内撮影オーケーかわからなかったけど、撮影してる人いないから今回の画像は

これだけ。大学入口の看板。


無料で予約不要だが、会場となる教室は300名ほどのキャパであり、入れるのは

先着順。あとになって立ち見とかはないことがわかったので、埋まったらもう後の人はアウト。

早めにいっておいたおかげで、数十列ある席の中で、前から2列目までは関係者席だったが

その4つ後ろくらいのべストな席をとれた。

もう数m前には、2人の座る席がある。やっぱ討論は近くで見るのが醍醐味。


結局、席は全て埋まっていた。さすが人気作家の公開トークということもあるし

主催と場所が文学部ということはある。


予定より10分遅れて

川上未映子センセイ & 黒田夏子センセイ 登壇!


やはり生で見ると川上センセイのほうは花があり綺麗である。

やっぱ顏が見える席とっておいてよかったわ(笑)


黒田センセイも会見で見た通り、あのグレーの髪と風貌にオーラがある。


川上センセイは会場には入って来た時から、ノリが軽く、悪い意味ではなくて女子ってた(笑)

テレビでも話してるところはあまり見たことなかったから、ちょっと意外な印象だったが

すぐに慣れた。とにかく明るくて関係者にも客にもフレンドリー。


「abさんご」を図書館で借りた時(黒田さん、買ってなくてスイマセン)に本に掛かったオビを

見て、川上未映子さんの推薦文が書いてあったから、だいたいどんなことを話すのか想像は

出来ていたが、川上さんが黒田さんの「abさんご」がすごい好きで、それについて、とにかく

良く喋っていた(笑)

聞き手の司会者の人もいたのだが、ほとんど中央にいた川上さんがしゃべって、その場を

回していた。よく、しゃべるなーって思いながら聞いてたわ。批判ではない。


川上エッセイは基本、とても哲学的で精神的なガールズトークっぽいところがあるとオレは

思っていて、今回のトークでもその片鱗のようなものが垣間見れたと思う。


独特の発想力や着眼点、何でもないものを何かに変換するセンスはやはり芥川賞作家。


黒田さんの作品はどちらかというと人間より「モノ」が主役のようなニュアンスになっており

そのヘンの世界観を川上さんが聞いたりしていた。

黒田さんの落ちついた答え方と笑顔から人生の年季と貫録が漂っている。


また文章を本格的に書き始めたということもあり、今回の参加はオレにとって勉強会という

意味合いもあった。


中編や長編を書き始めて、感じたり分かってきたことを、2人が「作家あるある」みたいな

感じで言っていて、それがオレに当てはまっていた時はちょっと嬉しい。


例えば川上さんの場合、物語を執筆していて同じ描写が何度も出てきてしまうという。

見直してみると、蝉が鳴いているシーンと、汗を書いているシーンが多いとか。

これはまさに、オレもある。


また、作家はまず文章をたくさん書いてそれから削るのが大事ということ。

黒田さんのように、世界観によってはひらがなと多くつかうということ。


この2つに関しては、前に紹介した中谷彰宏の本にも書いてあった。

作家は書くことよりも、書き終わったあとにそれを削ってシャープにするほうに力を使うと。


またヘタに文学ぶって漢字を多用すると、押しつけがましくみえたり偉そうに見えるということも

書いていた。それは確かにそう思う。三島作品くらいまでゆけばもう別格だが。


時々ひらがなもおりまぜて書いたほうが、読み当たりもよくなるし緩急がつくように思える。

漢字ばっかだと、偉そうに見えるし、固くて読み手も疲れるのだ。ひらがなにすると文章も

読者もイイ具合に脱力出来る。


オレなりの表現で例えさせてもらうと、漢字をひらがなに変換して書くということは

まるで、呪いをかけられ石像にされた人間の呪いが解かれて、動けるようになり

身軽になって喜んで、ピョンピョンと楽しそうに跳ね回っているような感じで、文字が

いきいきとしだしたといったところだろうか。あんま巧くないか……。


「モノ」を物語のメインにおくことについて、川上さんが黒田さんに質問したところ

黒田さんが笑いながら

「たぶん、人間があまり好きじゃないのかもしれないですね」と言った。

そこで聴衆のほとんどが笑った。

その理由はわかる。オレも笑ったから。

みんな、自分と同じだと思って共感と安心したのだと思う。


作家や文学好きな人なんて、みんなそんなもんだ。

オレもとても安心した。


約2時間の公開トークだったが、川上さんはもっとしゃべりたかった様子。

これだけの時間話していて、一番嬉しかったのは、最初から最後まで講演というもので

お約束のように飛び出す「努力」とかそういう言葉が一度も出なかったことだ。

これぞ作家のトークという感じであり、すごく深い話が出たということもないが聞けて

よかったと思う。



さて、夜9時前になり公開トークは無事終了。

川上さん&黒田さんも退場。

帰路につくことにした。



言うまでもないが、オレはひとりで行ったので、行きも帰りも当然ひとりである。

会場からの最寄りはおそらく早稲田駅だと思うのだが、オレは例により運動と節約のために

早稲田大学の門を出て、明治通り経由で30分くらい歩いて、JR大久保駅まで行き、そこで

総武線にのって、中野で中央線に乗り換えて、国分寺方面まで帰る事にした。


こう書けばわかると思うが、フツウの人は選ばない徒歩と各駅停車から快速への乗り換えを

組み合わせたとてもメンドくさいルートである。

近隣の客以外は、おそらく大学出てすぐ電車に乗って帰るか、高田馬場まで歩くくらいだと

思う。

でも、オレは足がいたくなりながらも大久保まで歩き電車に乗った。


中野駅についたら、中央線に乗り換えるべく下車して階段を下り、中央線高尾方面のホーム

へと上がった。ひとつ前の電車が行ってしまったばかりなのか、ホームはガラガラ。

適当にホーム中ごろまで歩いて、乗り場の先頭にたって電車を待つ。


数分たつごとに、だんだん乗客が階段から上がってきて、オレのうしろにも、隣の乗り場にも

列が出来てきた。


「ああ、こんできちゃったなあ」とかぼんやりと思いながら、隣の列を何気なくみると

列の一番うしろに、つい少し前に見たようなグレーの髪の高齢の女性がいらっしゃる。


……


……(-_-)?



黒田夏子さんではないかっ!(  ゚ ▽ ゚ ;)



たしかにオレと黒田さんは1時間ほど前まで同じイベント会場にいた……

でも、むこうは講師でオレは単なる聴衆のひとりと、立場が違う


とはいえ、あたりまえだが、講義が終わったあと途中まで一緒に帰ったわけでもないし

当然オレが後をつけたり、黒田さんのルートを調べて、ペースや帰路を調整したわけでもない。


オレは偶然という現象を超越して、運命というものを(勝手に)感じた。


それぞれ違う立場で、早稲田の大学の1教室という同じ空間にいたモノ同志が

一時間後の同じ時間に、中野駅の同じホームで、しかも隣の列に並ぶなんて……

そんな偶然あるだろうか。


数分後、電車が到着。快速なのに何故か激混み。


前の扉から載った後に、ひとつ横の扉周辺を観ていたら黒田さんも乗ってきた。


「うわ~~! ここまで混んでなかったら近くいって、周りに聞こえないように『さっき講義きかせて

頂いてました』とか軽く囁くようにお声かけさせてもらいたかったのに」とか思った。


だって、芥川賞作家だぞ! 一つ前のシーズンでは日本でナンバーワンの作家だぞ!


自分も今、各文学賞に応募してるだけあるから、大変恐れ入るが一言声掛けさせてもらって

応援の言葉頂ければ、これは作家としての運が頂けるかと思ったのだ。マジで。

この中野でまた逢って同じ車両に乗る偶然も、何か目に見えないパワーが働いたのかと。


お近づきになりたいが、なんで今日に限って車内が身動きできないほどに混んでいるんだ。

黒田さんの周りにも若者から中年サラリーマンまでたくさんいるが、目の前にいるのが

芥川賞作家だということに誰も気づいている様子がない。

気付いているけど話しかけて周りが気付いたら迷惑だからとかいう雰囲気ではなく

純粋に気付いていない。ただのグレーの髪の小柄なおばあさんだと思っているのだろう。

もったいない。


とりあえずオレは思った。


もし、オレが降りる駅まで黒田さんも乗っていて、それまでに周りの乗客も降りて車内が空いてきて、話しかけても周りが気付かないくらいになったら、一言小さく声かけさせてもらおうか……と。


しばらく黒田サンは降りなかったが、周りの客もあまり少ししか降りてゆかなかった。

その間スペースが出来るたびに徐々に黒田さんのほうへ寄っていっておいたが、間にいる3人くらいはそこから動かず降りる気配もない。


2人挟んで、もう、オレの1m横に芥川賞作家がいるんだよ!


しかし、近くて遠いこの1m……手が届かない(触ろうと思っているワケではない)。


そう思っているうちに、間にいる3人は降りないまま、オレが降りる駅の3つ前で

黒田さんはお降りになられた。おそらくここにお住まいなのだろう。

駅間隔にしたら近所だったみたい。


その駅は降りる人も少なくホームも混雑していなかった。


電車の本数もまだ十分あることもあり、ここで迷った。


「ホームも駅構内も空いているから、帰宅をおくらせてここで降りて追いかけて

声かけさせてもらおうか」と。


早く決断しないとドアが閉まって出発してしまう……


どうする? 芥川賞作家から握手してもらうか、一言応援の言葉頂くだけで

そうとうな運がまわってくるかもしれんぞ。

しかも文章書き始めたこのタイミングでの再会という奇跡のような偶然。



さあ、どっちだ!?


「降りて声かけさせてもらう」 OR 「電車乗ったまま帰る」



……



……



……




諦めてそのまま帰りました(._.)


小心者なんで、やっぱ失礼だし、ずうずうしいかなあと。



あー、中野駅でもうちょっとオレのほうが遅くホームについていれば、気付いてすぐ近くに

行けたのに残念。



ま、とりあえず、ある意味で「芥川賞に近づいた」っていうふうに、いい意味にとるか(笑)

いや、逃したってことのほうが当てはまるのかな……(._.)




とりあえず、川上さん、黒田さん、いろんなオハナシありがとうございました。