山谷崖っぷち日記 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

池袋を舞台とした不良群像劇でお馴染みの某作家に関して、作品も数点読んでみたこともあるし

たまにテレビを付けるとコメンテーターとして見かけるが、正直あまり好きにはなれない。


でも、先日利用した駅にて構内ラックにフリーペーパーのR25がまだ残っていたので

久々に手にとって読んでみたら、その作家の石○氏が巻末コラムで、ちょっとらしくない(失礼)

ようなイイことを言っていた。


日本国内における大衆の「口撃」の標的が明らかにおかしくなってきていると。

書いてたことのひとつが「ヘイトスピーチ」

これに関しては言うまでもなく、自分も反対であり、石田氏(あ!言ってもうた)に同感だ。


中国なら中国、韓国なら韓国で、それぞれ自国で日本の旗を燃やしているような輩のことは

批判していいし、批判するべきだろう。また、その行為を日本でやろうものなら、どんなひどい目に

合わされてもしょうがないと思う(そんな無謀なことする外国人はいないと思うが)

ただ、それを海の外に向けてではなく、日本でおとなしく住んでいる外国の人に対し、

口撃をむけるのはちょっとスジが違う。

まあ、ヘイトスピーチに関しては世間というよりも、ごく一部だが。


あと、石田氏がもうひとつ例に挙げてたのが「生活保護」の問題。

コレに関しても、すべてにおいて同意した。

標的になるのは受給者ばかり。

生活保護に関しては、今、右を見ても左を見ても、耳に入ってくるのはバッシングばかりだ。


誤解しないでいただきたいが、弱者側味方意見だからといって、不正受給が良いとか

しょうがないなんてことは誰も思っていない。不正受給はいけないことだ。


だが、何かとあれば不正受給発覚した時のバッシングばかり。

別にそれを責めるななんて言ってない。そこはそこで責めるべきだ。

ただ、不正発覚の時だけムキになり批判するのに、受給するべき人が受給できなかったり、

やむをえずそういう状況になった人達のことを心配したり、考えたりする発言の量が明らかに

批判する量に比べて低い。


突っ込むなら、受給者でなく、役所の人間の管理の杜撰さや、そういうドロップアウトした人達を

生み出した『天』のほうにいる人間たちの在り方を疑うほうが先だろう。

その風潮を見ると人間て、自分より弱い立場の人間に対して必要以上に責め、権力に関しては

ちっぽけな風穴を開けようとすることすら放棄したんだなと寂しくなる。


ちょっと前にまた図書館でリサイクル図書を見つけ、持ち帰った。

前から一回借りようとしてた本だったので、今回借りるどころか貰えたのは嬉しい。

『山谷崖っぷち日記』


山谷崖っぷち日記/大山 史朗
¥1,365
Amazon.co.jp

開高健賞受賞した本である。

「山谷」とは日雇い労働者や生活保護受給者の人があつまるドヤ街、簡易旅館街。

この本の著者は、評論家目線で上から語るわけでもなく、また外から教訓的に訴えるワケ

でもなく、あくまで内部の住民からの視点でこの本を書いている。

つまり、そこにあるのはヘタな社会論や、前向きに生きてゆくことについてとかのお説教では

なくて、まさしく「リアル」である。

そして、ここにも生活保護を受けながら職を探している人や、扱いのヒドイ職場で労働している

人も多い。

悪人でもなければ犯罪者でもない、とくに人から嫌われているわけでもない。

でも、不器用なゆえ「世の中に向いていない人間」である著者が流れ着いたのは「山谷」だった。


世の中の偏見では「山谷」は社会で『下』のほうに位置づけされている。

でも、今までいた上流企業とかから、山谷の日雇いの世界に編入したとはいえ、

その山谷でも厳しいルールや環境があるのが伝わってくる。


名前の通りに簡易旅館なので、そこにはしっかりとした部屋の仕切りなどなく簡単な

カーテンとかだけ。おまけに、ひとりぶんのスペースもとても狭いので、すぐ隣に他人が

寝ていたりする。

肉体労働後の臭いに気づかないふりをしたり、、出来るだけ臭わせないように気をつけたり

気づいても我慢するというような暗黙のルールがたくさんある。


「音」なんてもっとも気を付けないといけないジャンルだ。

足音とか、くしゃみの声なんてのはもちろん、どんな小さい音もスペースが狭いから、隣の人間に

すれば騒音となる。


出来るだけ音を出さず周りに迷惑をかけないようにと思い、あまり動かずにすむようにと

夜に文庫本を読んでいたが、それでも隣の人間がなんか怒っているようなので、不思議に

思っていたら、文庫のページをめくる音がうるさいということだったらしい。


トミー・リー・ジョーンズが調査にきたこのスバラしき惑星の社会は、上に行っても下に行っても

厳しいのだなあと改めて感じた。

どこか落ちつける場所ってないものかねえ?


本の中では、こんな山谷だけど、どこかの職場に潜りこんで、若い経営者に追い回されながら

飼い殺しの生活おくるよりは、多少窮屈だけど、こういうところで日雇いしながら、好きな時に

図書館とかで本を読める生活のほうがもしかしたら幸せなのかもしれないということに気付いた

とか。

価値観は人それぞれだが、その世界に入って、はじめて分かる厳しさや、ありがたさっていうのは

あるんだと改めて認識出来た。


山谷の中でも、先程書いたような住民同士のトラブルや、露骨な仕事の奪い合い、また仲間はずれとかも存在する。


とどのつまりは、世界的一流企業にいようが、山谷にいようが、どこにいても人間が存在する

限りは、しがらみもあるし、蹴落とし合い、騙し合いもあるのだな。

どこに逃げてもお釈迦さまの手の上。


ちょっと論点ずれるが、要するに下に行っても、重圧がなくなるとかいうわけではない。

山谷に行ったとしても、それなりにずるがしこく、そして忍耐力がないと、そこでも生き残れない。


山谷ですら、そうなのだから、天上界にあたる一流大企業なんて、まさに見えない内部での

ドロドロがもりだくさんだろう。

天上界から蹴落とされた人が、落下して、いきなり山谷に着地することだって珍しくはない。


やはり、上下どこで生きようが、それなりに強く対抗心を持たんとやっていけないのだろうな。

そういう人間が最後に篩(ふるい)の中に残る。


そういえば、ドラマとか全く見ていないんだけど、オレの周りでみんな「半沢直樹」が面白い

っていってる。あらすじとか聞いてると、たしかに面白そうだ。

見てみたいんだけど、ドラマって一回見ると、ずっと見逃さず見ないといけないから、

どうも見れないんだよね……


でも、あのドラマが支持される理由はよく理解できる。

それこそ、こういう社会や組織のヒエラルキーに対するアンチテーゼなんでしょ。たぶん。

うん、わかるわ。


実際の組織の中や取引先でも、上の立場を悪用したヤツって絶対いるもんね。

でも、現実的にはなかなか仕返しどころか、口で反抗することも難しい。

そのイライラを代行してくれるスッキリ感とかでしょう?

見てないから違ってたら、申し訳ないけど。


生き残るためには、やはり多少の強さと、悪に対しては「目には目を」の精神くらい

もたないとダメってことかな。

今の時代にとって、うまい設定のドラマ企画されたと思います。東京放送さんは。

誰もがやって欲しいと思ってたけど、なかなか誰もやらなかった物語みたいなところか?


ドラマみてなくても、あのフレーズは脳ミソと鼓膜に浸み込むもんなあ。


よし。

大企業だろうが山谷だろうが、これからどんな環境に移ることがあるにしても

生き残って酷い目にあわせたヤツには仕返しできるように、今日でへタレ返上だぜ。

ギラギラした攻撃的な男に生まれ変わるぜ、オレは。




やられたら、やりかえす……

1.3倍返しだ!!  しょぼい。ぺヤングの増量(当社比)かよ……



おしまい


※明日は作者取材のため、休載いたします。