今野敏「スクープ」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

なんだか今日は小説読むのが苦手な人へ向けた短編集紹介のような気がしてなりませぬ。


スクープ (1) (集英社文庫)/今野 敏
¥630
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「報道」とか「スクープ」のあり方ってプロのテレビ屋さんやブン屋さんじゃない限り、

タブーとの線引きがわからんよね。


芸能人とかの取材の仕方も、ずっと昔よりもほんの少しだけ緩和したキッカケは

ビートたけしのフライデー襲撃事件だろうか。

元宮崎県知事が最後にエレベーター乗って、フライデー編集部の階に着いてドアが

開いた時に、一番先頭になってて「先陣きる」とか書かれ、事件後にゴトーダさんていう

政治家が「ビートくんの気持ちもわかる」という有名なコメント残したあの事件。


また、有名人のプライベートの激写写真とかも、撮られた側は発売日に初めて写真が

載るということを知るのが基本だったけど、伊丹十三監督の事件のちょっと前あたりに

出版社側がちゃんと「こういう写真載せます」という連絡を相手側に伝えないといけない

ルールが出来た。と、思った。間違ってたらスマン。


赤坂にある某テレビ局、仮に「大きな帽子」と言ってくが、その「大きな帽子」が

S弁護士家族が写っている資料VTRをオウム真理教に見せたということを、

お隣さん……仮に「汐留くん(当時)」と「目玉印くん」としておく。が鬼の首を取ったごとく

特ダネとしてバンバン報道してたこともあった。雑誌は雑誌で、殺人テレビ局とか言って。


たしかにTBS(あ、言ってもうたっ!)がやったことは違反であるし、メディアでなくても

企業としてそういう情報漏洩は許されないが、ただ、もしTBSがビデオを渡さなくても

オウムはオウムで独自に調べてS弁護士一家を殺しに行ってたのは間違いない。


TBSも完全に悪いが、それを自分たちは全く関係ない業界だというような対応するゴシップ誌も

どうだかと思ったし、オレの周りでも、もし日テレ(あ!また言ってもうた!)にオウムが来て

資料渡せと言っていたら、日テレも同じことやっていただろうと言う人間は多かった。


メディアは同志のてのひら返し合いや、貶しあいは野党と与党の争いに似ている。

世の中で起きた真実を平等に世間に伝えるのが仕事とか言ってるが、他局のアナウンサーが

事件とか起こしたら、ワイドショーでとりあげるくせに、自分の局のアナウンサーが事件起こしたら

1秒もやらん。事件は事件だろ。

それに比べて大新聞は、下のほうに本当に小さくだが、

「自社記者が○○容疑で逮捕」とか載せるぶんだけエライ。


芸能カンケ―で言えば、マスコミがさんざん田原のトシちゃんを結婚の噂で追い回して

おいて、トシちゃんがキレて「ぼくはビッグ」と言ったら、急に掌かえして、「勘違い発言」て

言ったのはマスコミに対して疑問を思った。とくにトシちゃんのファンではないが、あの騒動に

関してはトシちゃん派だ。


歌とか演技とかに関して言えばオレはド素人なんでウマいのかヘタなのかわからんが

存在的にはトシちゃんはたしかにBIGだと思う。でもあの時は、自惚れとかでなく、単純に

ムカつくマスコミに対して、挑発する意味で「ぼくはBIG」と言ってしまったんだろう。


実際、少なくともマスコミにとってはトシちゃんはBIGだったハズだと思う。

だからあそこまでしつこく追いかけていたんじゃないの?

どうでもいい小物なんて追っかけないでしょ?ムキになって。

さんざんつけまわしておいて、向こうが自分でBIGって言ってきたら、急に「勘違い野郎」扱い

するマスコミのほうが都合良すぎる気がしたわ。


あ、カンケ―ないけど、今騒がれてる、大きいのと小さい2人も、そんな話題引っ張るほどの

モンか、おい? 失礼だけど。


まあねえ、有名税って言葉も好きじゃあないけど、でも、やっぱそれなりに売れたら稼げる

商売やってるなら、良い噂の時だけ対応するってのはたしかに都合いいかも。

でも、いくら追っかけ取材っていっても「夜中おしかけ」や「家族に強引に取材」は共感出来ん。

あとは「全くのウソ」を書くことも。本当のことなら、ある程度はしょうがない。そういう世界。


報道とかスクープって難しいのね。仕事にしてる人達も大変だとは思うけど。


あ、まだ本題入ってないや……


今回紹介する本は、タイトルの通り、そうい業界で活躍する主人公の行動を描く短編集。

「スクープ」


主人公はTBNテレビ報道局社会部という部署に勤務していて、看板番組「ニュースイレブン」

の遊軍記者。


なんとなく態度もチャラチャラしていて、行動もフラフラしているフザけたタイプに見えるが

特ダネがありそうな妖しい場所には、なぜか毎回いる。

男性アイドルの覚せい剤パーティー現場や、政治家が密談してそうな場所。


最後のほうではいつも、見つかったり拉致られたりして危機一髪になるのだが、

シリーズ物にて許されるパターンのマンネリで、最後の最後で、ある人物の登場により

救われるというケース。


よくある流れといえばよくある流れだが、読み手としてはイイ具合のドキドキ感はあるかも

しれない。いろんな事件現場が出てくるうえに、1つの話はそれほど長くないので、

長編が苦手な人は通勤電車内や旅の車内で読むにはべストなジャンル。


ひとつ、作品の中でオレが気に入った登場人物のヤリトリがある。

ある流れがあって、それを踏まえうえでの〆のやりとり。

以下引用

「間島さん、いくつになる?」

「ああ?今年で三十五だが……」

「いい生き方してたんだね」

「何だ?」

「その年になっても隠し事出来ない」


かっこいい……

歳とっても嘘付けないほうも、それに気付き褒めるほうも。

嘘つきの大人ばかりの中で、そういうふうに言ったり言われたりするオッサンになりたい。


感動したところで、今回のもう一冊。あまりないんだよな。とりあえず読んだということでコレ。



共喰い/田中 慎弥
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ちょっと色々理由があって、芥川賞作品は出来るだけ読んでいる。

うーん…… 田中サンは好きで、この前、情熱大陸で特集されてた時も観てたんだけど

この作品は正直、オレ、ちょっと合わなかったかなあ。

この後に書かれた「実験」は好きだったけど。


田中サンに関しては作品よりも人間に目がいってしまう(笑)


いかんな。芥川賞受賞者に関して、どうも西村賢太~田中慎弥ラインが出来てから

受賞者にキャラクターのほうの期待を持ってしまう。コマッタモンダ。