西加奈子の「きりこについて」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

中学校の時に隣の女子が友達と今で言う‘ガールズトーク’

(アンガールズとラバーガールとポイズンガールバンドの雑談ではない)

をしてるのをコッソリ耳に入れてるような気分になる本。


こういう時、席にいる男子は別に盗み聞きするつもりはなくても聞こえてるからには

聞いてしまうものなのだ。聞こえてないフリして顏は前方や机の上を観ているが

耳はマギー審司が東急ハンズで買ってきた耳のごとくデッカク音声収集機と変化している。


そんなコロの女子のキモチもなんとなくわかるようなキモチになれる本


西加奈子の「きりこについて」

きりこについて (角川文庫)/西 加奈子
¥540
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この西サンていう女性の作家サンは名前は知っていたんで少し前に試しに借りて読んでみたら

これがけっこーオモシロイではないか。


ストーリーは「きりこ」という女の子が体育館裏で見つけた黒猫ラムセス2世との生活をメインに

進行する。正直、最初はこの件を聞いた時によくある女性向けのメルヘンチックなモノ程度に

思ってしまった。申し訳ないが。だがそれは浅はかな推測であった。反省。


まあ、この「きりこ」の学園生活にメインをおき、そこにラムセス2世を絡めてゆくのだが

詳細はさておき、この物語、

作品中に「ぶす」というワードが頻繁に出てくる。


今でこそ半ば放送禁止ワード的な存在に指定されているが文学作品で、

しかも女性が著者だと違和感ないからlet's try try try 摩訶不思議☆

しかもカタカナで「ブス」って書くと悪意を感じるけどひらがなで「ぶす」だとなんか

愛嬌あるように感じるのも不思議である。


大人になってから「ブス」という言葉を使うと「差別」やら「セクハラ」やら騒がれるが

小中学校のころはまだ学級会で「○○クンにブスって言われました!」とかいうくらいの

騒ぎだから、そのころの時代背景はリアルに感じられるかもしれない。

それほどストーリーの中でたっくさんブスって出てくる。

言われたことを気にするコ、気にしないコ、自覚が無いコの情景も浮かぶ。

こういう表現て漫画とかであったら俗悪存在っぽくされそうだけど小説だと平気ってのは

まったくボーダーがわからん。教えて石原慎太郎。


ちなみにこの西加奈子と比較的年齢が近くて同じく女性作家の豊島ミホ作品も前後して

読んだ。

檸檬のころ (幻冬舎文庫)/豊島 ミホ
¥560
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この2冊は連続で読んだんだけど吃驚したのは2冊ともそろって「ぶす」って言葉と要素が

入ってるのね・・・。この年代の女の子は自分が当てはまるかどうかは別にして、

そのワードに敏感になってた年代なのかなと感じた。

女性作家が書く少女期小説やエッセイとかはだいたい決まって登場するワードがある。

前に読んだ川上未映子とかから遡って。


あともひとつ、この3者に共通して良く出てたなと思ったワードが

(まじめなハナシです)

「生理」


こればかりは男性作家の作品内ではほとんど見たコトない。当然かもしれんが。

逆に女性作家のほうが実体験に基づき、それに関する思いとか辛さを文章の中で

表現出来るんでしょうね。西サンはじめ女性作家作品によく登場し驚いた。


男子はですね、そういう性とか体に関する仕組みを中学生くらいの時に入荷しても

なんとなく雰囲気で笑ったり話題にしたりするけど、実際そんな詳しく知らんのですよ。

だって経験できないから。


言葉や状況は知ってて、痛みがあるってこともわかってても、オレだって当時は

どんな痛みも当然知らなかった。重い痛みなのかズキズキする痛みなのか。

当時は女子に聞くのも出来ないからずっと知らないままだったけど、大きくなってから

サバサバした女性の知人にやっと聞けて教えてもらったけど、なんて言ってたか忘れた・・

スンマセン・・・。

男が書いてたらなんとなくイヤラシ感が出るかもしれんが女性が書いてるだけに同姓から

共感が得られるんでしょうな。


そんな青春記や思春期の男子、女子学生の情景がよくちりばめられている。

作者さんとかまだ若いもんなー。まだ彼女たちにとってはまだ「最近」の時代なんでしょうな。

そんな懐かしい頃に戻ったような気分になれる本。


男性でも楽しめるから女性にはかなり楽しめるんではないだろうか。


西サンの本に関してはそういう軽く懐かしい雰囲気の文章表現でなく、ところどころ知的な

風刺や現代流行のオマージュも存在している。


現代社会において

「資本主義を発展させてきた競争意識を皆に植え付けることに成功」

とか、

「一番汚いのは人間。そのうち神が地球を『人間禁止』にするだろう」

とかなかなか知的は批判である。


また途中で、通称「カニィちゃん」と呼ばれる蟹塚恵美という人気モデルが登場するのだが

ニックネームといい職業といい、モチーフは当然あのヒトだろうww


ピースの又吉も才能を大絶賛してたが、この西加奈子さんて人はホントに表現が豊かであると

思う。