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特に洋画より邦画が好き、というわけでもないのですが、このところ立て続けに劇場で観ているのは、いずれも邦画です。ちなみに是枝裕和監督の最新作『歩いても歩いても 』は、まだ公開していません。試写会が当たったのです。久しぶりの渋谷。C.C.Lemonホール で上映と書いてあります。どこでしょう?地図を見ると、NHKの前あたりです。こんなところにそんなのあったっけ?渋谷公会堂の場所じゃない?
…って、渋谷公会堂の名前が変わってリニューアルしていたのですね。従って、やたら広い。映画を観る広さではありません。監督はじめ、主演の阿部寛さん、夏川結衣さん、YOUさん、樹木希林さんと監督が舞台挨拶をしていましたが、妙に凝った演出もあいまって、あまり見えませんでした。
でも映画は十分に堪能。素晴らしい内容でした。
実は是枝監督より、彼の助手をしていたという、西川美和監督の大ファンです。『ゆれる 』の監督と言えば、知っている人もいるでしょう。今回の作品は彼女の作品に通じるものがありました(普通、逆でしょうが)。さすが師匠だけあって、西川作品よりある意味巧みな脚本で、でも西川作品ほどのドラマ性はなく、物足らないと思う人もいるかもしれません。とりたてて事件が起こるわけでもない、息子・良多(阿部寛)の1泊2日の帰省を描いています。良多の兄・純平は15年前に水難事故で亡くなっており、町医者である父(原田芳雄)は明らかに跡継ぎだった(実はあまりその辺ははっきりしませんが、もしかしたら部屋のシーンとかしっかり観ていたらわかったのかも)純平に期待をしていました。母は親より息子が先に亡くなったという事実の重さを抱えて生きています。そんな中、良多は失業中で、最近結婚した妻は再婚で子連れ。しかも妻は前の夫と死に別れです。
連れ子の息子(アツシ)も含めて、みんな身近な家族を若くして亡くしているわけです。みんな痛みをもっている。だからといって、相対している人の心を他の人以上に思いやれるわけではありません。でもそれが現実でしょう。悲しみを知っているからといって、同じ痛みを持っている人を完璧に理解できるわけではありません。自分の痛みは自分の痛み、人の痛みは人の痛みです。だから思いもかけないほど、残酷なことをそれぞれが相手に対して口にします。再婚の息子の妻に、子どもは作らない方がいいという姑。医者がそんなに偉いのかという息子。死んだ兄が親をみるわけではないという娘。お父さんが死んだら、一緒に住もうと息子にいう母。でも少しずつみんな、それぞれを気遣ってもいます。特にアツシは子どもながら、ある意味義理の祖父母を気遣います。明らかに汚いと思っている、祖父母が口をつけた夕食を嫌な顔をしながらも食べ、将来何になりたいのか聞く祖父に、音楽の先生が好きだからピアノの調律師になりたいと言います。本当は亡き父の職業なのに。そして彼は調律師になれなければ医者になりたいと思うようになります。最初はお小遣いをもらったから、気遣っているのか、と思ったのですが、触れ合ううちに祖父と心を通わせたのかもしれません。
老いも重いテーマです。既に引退した医者である父は、向かいの奥さんが倒れても何もできない無念。受け入れざるを得ない衰えと向き合う父を、多分息子は少しだけ理解したのではないでしょうか。切なく思いやったような気がします。
とにかく良い脚本です。素晴らしい演技です。まじめ一辺倒ではなく、笑いもあります。おすすめです。
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