早いものでもう少しで今年も半分が終わってしまいますが、ふと気がつけばブログを書き始めてから10年が経っていました(飽きっぽい私にしては驚きです…)
今までも何回か書いていますが、私が舞台を観に行き出したのが2007年で、観劇の感想を書き始めたのが2014年からですが、ブログ開設10周年を記念して(?)この間に心を揺さぶられた10作品について書いてみたいと思います。
ブログを始める前は自分でも記録をとっていないので、観た作品を正確に覚えてはいませんが、映像で観たものも含めて、理屈抜きで心に残っているものを直感的に選んでみました。
以下、上演年順に書き出してみます。
記事にしたものは再掲しました。
2007年 アルベール・カミュ作 蜷川幸雄演出 『カリギュラ』
多分、今まで観劇した中では蜷川幸雄さん演出の作品が一番多いのではないかしら。
“パンクじじい”を自称していた蜷川さんの、パンクなカリギュラ。
暴力と狂気をはらんだカリギュラを演じた小栗旬さんの危険な美しさ。
長谷川博己さん、勝地涼さん、若村麻由美さんもキャスティングがぴったりで。
そして、玉ねぎをかじっていた優しいエリコン。
エリコンを演じた横田栄司さんの、「月を探しに」という台詞の詩的な響きを聞いて、私は横田さんに墜ちました
東日本大震災の後、横田さん主催のチャリティー朗読会が横田さん行きつけの居酒屋さんで催されたんですが、お店に入ってすぐ店員に扮した横田さんに注文を聞かれてビックリ、ドキドキそして横田さんからビールを運んでもらうという稀有な体験をしたのもいい思い出です(笑)
2007年 野田秀樹作・演出 『THE BEE』
(WOWOWで鑑賞)
私は夢の遊眠社も観ておらず、野田さんの作品を観たのは2007年に上演された妻夫木聡さん、深津絵里さん出演の『キル』が始めてだったと思います。
以来、野田MAPの作品はほとんど観ていると思いますが、WOWOWで放送された、2007年版の『THE BEE』を観た時の衝撃が忘れられません。
野田秀樹さん、秋山菜津子さん、浅野和之さん、近藤良平さんという座組でしたが、観客の想像力を呼び込む演劇的手法の自由さに感嘆するとともに、暴力が日常になっていく表現の容赦なさに怯えながらも心をつかまれて、
「ああ!野田秀樹は天才だわ!」と胸のうちで叫んだのを覚えています。
2008年 寺山修司、岸田理生作 蜷川幸雄演出 『身毒丸復活』
蜷川幸雄さん演出の作品でカリギュラに続いて浮かんだのがこれ。
藤原竜也さん、白石加代子さん演じる母と息子の狂おしくも切ない禁断の愛憎。
舞台美術も印象的で、深紅の夕暮れの光景が絵画のように今も頭の中に広がります。
2009年 ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・蜷川幸雄演出 さいたまゴールドシアター
『アンドゥ家の一夜』
ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作品を始めて観たのは、確か『犯さん哉』だったと思いますが、以来バラエティに富んだ作品を色々観てきた中で浮かんだのはこれ。
さいたまゴールドシアターの42名の高齢者が出演する3時間越えの群像劇。
さいたまゴールドシアターもとても好きで追いかけていましたが、ケラさんとさいたまゴールドシアターという組み合わせだからこそ実現した、アイロニーとユーモア、リアリティと非リアリティが融合した隠れた名作だと思っています。
2011年 『オペラ座の怪人25周年記念コンサートINロンドン』
(WOWOWで鑑賞)
アンドリュー・ロイド・ウエーバー作曲のミュージカル『オペラ座の怪人』25周年を記念してロンドンのロイヤルアルバートホールで開催されたコンサートが映画になったもの。
その後WOWOWで放映されたのを観て、映画館で観なかったのを大・後悔
ファントムを演じたラミン・カリムルーにどハマリして、マウスをクリックしすぎて腱鞘炎になるくらいYouTubeで検索しまくり。
ラミンの声は、波動砲のように力強く胸を射抜いてきて、かつエロティックで優しい。
やばい。
ミュージカルとしての楽曲やストーリー自体も好き。
20015年 野木萌葱作・演出 パラドックス定数 『東京裁判』
今はなきpit/北区域という劇場で、はじめてパラドックス定数の『東京裁判』を観た時、たった5人のキャストで構築される脚本と演出の凄さ、そして緻密な演技に衝撃を受けました。
以来、新型コロナ感染症の蔓延で観劇を自粛せざるを得なかった時を除いてほぼ全作品を観に行き、脚本を買って読む楽しみを味わっています。
最近、劇団員お二人が退団されるというニュースに非常に残念な気持ちになりましたが、これからもパラ定の作品を観続けたいと思います。
2015年 冨坂友作・演出 アガリスクエンターテイメント 『紅白旗合戦』
アガリスクエンターテイメントといえば『ナイゲン』が有名どころですが、私的には、初・アガリスクの『紅白旗合戦』をあげたい。
ロジカルでエッジの効いた脚本に、「こんなコメディがあるんだ!」と興奮したのを覚えています。
以来、ずっと追い続けてはや9年。
最近は、大きな劇場での上演や、より広い観客層にも作品を観てもらえるようになってきていてシンプルに嬉しい。
7月5日から上演される、鈴木保奈美さん演じる県知事が主人公の政治コメディ『逃奔政走』も楽しみです。
一方で、彼らの「国府台高校魂」は不滅なのだろうな、と思っています
2017年 タニノクロウ作・演出 庭劇団ペニノ 『地獄谷温泉 無明ノ宿』
何といっても、もう二度と観ることのできないあの美術。
神奈川芸術劇場大スタジオに忽然と出現した温泉宿。
そこで繰り広げられた哀切で狂おしい物語は、今も思い出すと胸が締め付けられます。
2022年 倉持裕作・演出 『歌妖曲~中川大志之丞変化~』
つい最近まで、地球ゴージャスの『儚き光のラプソディ』で美しい歌声を響かせ、明るく繊細に活き活きと舞台に立っていた姿が記憶に新しいですが、
中川大志くんの記念すべき初舞台だったこの作品。
初舞台とは思えない堂々とした主演ぶりに、「演劇界へようこそ!」と胸が高鳴ったのを覚えています。
心身共に負担の大きい難役で、演じる苦しさはいかばかりだったかと思いますが、
醜い肢体と憎悪にまみれた表情の中に、清らかな魂が垣間見えたのは中川くんならでは。
満身創痍で歌うラストのシーンには、燃え盛る業火の中で私も焼かれました。
2023年 ヒュー・ホワイトモア作・稲葉賀恵演出 『ブレイキング・ザ・コード』
派手な作品ではありませんが、とても誠実で丁寧な演出と演技が強く心に残っています。
コンピューターの祖と言われたアラン・チューリングを演じた亀田佳明さんが素晴らしかった。
1985年に書かれた脚本も全く色褪せず現代への示唆に富み、AIと人類の今後について考えさせられるものでした。
と、思いつくままに10作品あげてみましたが、もちろんこれ以外にも大好きな劇団やユニット、感銘を受けた作品はたくさんあるし、数年後に思い返してみたらまた違う結果になるかもしれませんね。
さて、これから先、あと何作品観ることができるでしょうか。
ひとつひとつの作品との出会いを大切に、ブログもできる限りは続けていきたいと思っています。
これからも、またお寄り頂ければ嬉しいです