ある日の店長と副店長の話
今日は「パンダ初来日の日」だそうです。
そうなんですか。
確か、上野動物園で飼育されたパンダですよね?
その通りです。
1972年の今日、日中国交回復を記念して中国からオスの「カンカン」とメスの「ランラン」が贈られました。
そういえばそんな名前でしたね。
初来日ということと、つがいの子どものパンダということもあって上野動物園にはたくさんの見物客が押し寄せて、たった数秒見るためだけに2時間半待ちの長蛇の列ができたそうですよ。
そんなに待たされたんですか!
アイドル級の大人気だったんですね。
あの丸っこい体型でのんびりと自由に動き回る姿、漢字で「熊猫」と表現される通り、猫のような愛らしさで見る者を魅了する動物界のアイドルと言っても過言ではありません。
しかしながら、そんなアイドルの陰で不遇の扱いを受けている動物がいるのを忘れてはいけません。
えっ?
一体何の動物のことですか?
それは「レッサーパンダ」です。
レッサーパンダですか?
パンダよりも小柄ですけど、あの姿や動きは可愛くて人気の動物じゃないですか?
そうです。
2本足で立ち上がって周囲を見つめる姿が一大ブームを起こした「風太くん」で有名なレッサーパンダです。
風太くんが大人気になっているのに、どんな扱いを受けているっていうんですか?
そもそも、レッサーパンダは19世紀初頭にヒマラヤで確認され、現地の言葉で「竹を食べる」という意味で「パンダ」と呼ばれるようになりました。
レッサーパンダも最初はパンダと呼ばれていたってことですか?
むしろ、元祖パンダは現在のレッサーパンダで、いわゆるジャイアントパンダの方が後なんですよ。
あ、そういうことですか!
じゃあ現在のジャイアントパンダはいつから呼ばれるようになったんですか?
ジャイアントパンダは19世紀後半になってようやくその存在が確認されて、毛の色等は違えど、竹を食べる生態や姿や動き等が似ていることから、当時の研究者たちはレッサーパンダが成長するとジャイアントパンダになると信じていたそうです
そうだったんですか!?
残念ながら当時はそのように考えられていて、これらの動物は全然違う種の哺乳類だと判明するのはかなり後になってからでした。
当時の技術や研究方法では分からなかったんですね。
話を戻すと、当時は同じ種だと考えられていたため、それぞれに呼称を変える必要に迫られました。
そこで先に確認された方のパンダに「小さい方・少ない方」という意味の「lesser」を付けてレッサーパンダ、後に確認された方が大きかったということからジャイアントパンダと呼ぶように決められてしまったそうです。
それは…もしレッサーパンダがこの経緯を理解できたとしたら理不尽な扱いだと暴動を起こしそうですね。
ささやかな抵抗として、少しでも身体を大きく見せようと二本足で立ち上がっているのかも知れませんね。
いや、あれは習性によるもので普段からしているって聞いたことがあるんですが…
これは「黒ひげ危機一髪」に似ていると思いませんか?
いきなり何の話ですか?
というかどこが似ているんですか?
黒ひげ危機一髪は発売当初、剣を刺して樽から黒ひげを外に飛び出させることができたら勝ち、というのがメーカーの公式ルールでした。
そうなんですか!?
しかしそのルールはいまいち分かりにくかったらしく、世間では「飛び出させた人が負け」というルールで遊ばれることが多かったそうです。
僕もそのルールで遊んでましたよ。
その結果メーカーがそれを受け入れ、現在のように飛び出させた人が負け、が公式ルールとして記載されるようになったんです。
そんな経緯があったんですか。
…って、その例えってパンダの件とは少し違うんじゃないですか?