役所体質の会社のシステム開発が問題作であったというのは、顧客の情報システム部の立場からは自分たちで進めたプロジェクトが失敗したという事になるので禁句になっていると思います。顧客の情報システム部に私は1年半も派遣社員としてお世話になった手前もあり、厳しくは書きたくはないのですが、現実を直視し仕事を進めるうえでベンダー依存するだけの仕事の進め方を改革する意気込みを持って欲しいと思っています。
システム開発が時間だけ経過して完了した筈になるころに、顧客のプロジェクトマネージャーはシステムの出来栄えが如何なるものかという事には無頓着で、すっかり出来上がっているように思っていたらしいのは、はた目から見ていて心配になったものでした。自身でシステムの完成度を確認するすべを思いつかないので、システム開発を受託した事業部から報告された事を鵜呑みにして、出来ている筈と思い込むしかなかったのかも知れません。
そうなるとシステムの出来栄えを確認すべを持っていない事で、自然と形を作ることに思いが行くのは当然だったかも知れません。プロジェクトのお披露目を社内に対して実施しようというのでテープカットという儀式に熱心に取り組んでいました。形を作るのは役所体質だけに普通の会社よりは念の入ったもので、私は過去に多数のシステム開発の経験をしてきましたが、システム開発の本番日にテープカットをしたというのは初めての経験でした。
私の経験では、システム本番当日に向けて念入りにシステム動作確認を情報システム部の担当者が行うのは当然として、場合によってはエンドユーザーの一部を巻き込んで念入りを通り越してやりすぎだろうと思える程に何度もテストを繰り返して本番の日を迎えていました。
普通、旧システムから新システムへの本番切替という作業は障害が発生すると業務影響が大きいので、障害が発生しても対応が最小限で済みそうな業務量の少ない日を選んで慎重になるのが普通でしたが、この役所体質の会社ではシステム開発をした事業部に全幅の信頼を置いているので、障害などは起きる筈は無いというのが前提になっていると思えました。
システム開発の途中から派遣社員として、発注者側に立ってシステム開発を担当するメンバーの裏方として、システム開発をしている事業部は信用ならんという証拠を見つけてはアドバイスをしたつもりですが、そういうアドバイスは全く感知されなかったように思いました。尤も、感知しても、どう対応すればよいか分からなかったということもあったかも知れません。
本番当日は顧客社長以下とシステム開発を受託した事業部幹部がテープカットや画面の操作を行って、その後関係者で顧客主催の慰労会が行われました。私はシステム開発をした事業部のメンバーには悪い印象しか持っていなかったし、システムそのものが未完成だというのは気づいていた事もあり出席はしたくなかったのですが、課長から促されて嫌々ながら会場となった食堂に行きました。
今でも会場の様子は覚えていますが、システム開発を受託した事業部の面々が三々五々会場に来るのですが、その様子は恐る恐るというような表情に見えました。想像するところ、システム開発を受託した事業部では本番後に顧客から慰労会などというものを経験したのは初めではないかという事でした。
システムの本番後の先行きを全く心配していないような、あっけからんとした会場の雰囲気に違和感があって、私はウーロン茶を飲んだだけでさっさと自席に戻りました。当然のように、本番開始翌日からインターネットに繋がらないとか、台帳データが無いとか、システムとして基本機能が無い事が発覚して情報システム部員が振り回されるのを横目で見るしかないという状況でした。
普通に考えると、システム本番後に障害も無く稼働しているのを確認してから社内へシステム開発プロジェクト完了の発表をすべきだと思われるので、後先が逆になっているのではないかということが行われたと思いますが、そうせざるを得ない程に経験が無かったことを明らかにしたことでもあったのかなと思います。
こういう経験は貴重というのを通り越して、絶句に及びべしというような事実ではなかったのかと思っています。