保守の一有権者の立場から、今回の参院選がどんな風に見えていたか、維新の「はいおか」に流れ損なった票を中心に、思いつくまま書いてみる。
今回の選挙は広島の保守にとっては実質、「負け」である。
広島選挙区では、自民党が、取れる議席を放棄するかのように、一人しか候補を立てなかった。これがすべてだった。2議席目を左翼にやってしまう現実の危険と隣り合わせで、民主と、維新の新人と、小沢の側近の3人が争うという信じがたい選挙にしてしまった。
案の定、民主党が議席を獲得、改憲を掲げた候補が惜敗するという最悪の事態を招いた。春に、広島市本通りで行われた街頭の調査で、改憲を求める声が護憲を圧倒しながらこの結果である。最大の戦犯は自民党である。
維新の新人灰岡は善戦したが、改憲を望む人たちの票を集めきれなかった。もともと保守と灰岡とは改憲以外では、政策的にあまり近くない。平沼、中山といった総理が務まる旧たちあがれの応援が入ったが、及ばなかった。
敗因は候補の力不足が最も大きく、周囲に力のあるブレインを配置できなかった上、二人の党首の迷走が尾を引き、保守の票を溝手へ一極集中させる結果になった。溝手は改憲に消極的なので、改憲の票はほぼ死んでしまったことになる。
立候補表明がやや遅れ、立候補の時点で政策がほとんど文字になっておらず、公式ホームページにおいてさえわずかに表明されているだけだった。まずいことに投票日に至るまでこれを放置した。掲げる政策を文字にして詳しく読める状態にしなかったことは立候補者としては致命的である。残る実質2候補が左すぎるため、改憲がかかる今回の選挙では他の政策で多少の考えの違いがあっても、保守層の支持を灰岡に集めるチャンスはあった。
また、自己紹介に終始する街頭演説が多く、それに伴い政策が語られることが少なく、全体の印象としては「やりたいことが伝わらない」というよりも「やりたいことがないのではないか?」という不信を抱かれたのではないだろうか。「最年少の挑戦」も政策を十分伝えてこそであり、これなくしては逆効果だ。
灰岡には、有権者の一人として、7月4日にアメブロのメッセージを使って、政策を文字で発信するようお願いした。外交、国防、経済について言及するよう、また改憲を地方分権以外の観点からも説明するよう、さらに改憲の効果、支那公船の領海侵犯、東アジアの外交、消費税増税の時期と規模、TPPの是非、など国会議員として語れるはずのトピックを挙げ、候補の考えをホームページで発信するようお願いした。
合わせて、中国総領事館の広島誘致に、国防の観点から反対を表明してくださるようお願いしたが、残念ながら聞き入れてはいただけなかった。代わりに?彼女はブログの中で政策を小出しに表明していく。このこと自体は悪くなかったのだが、公式ホームページで説明されているということに代えられるものではない。政策以前の見識、常識が問われたと言っても良い。
民主党政権下で国民が高い授業料を払って学んだこと、それは「何をやるかわからない人に投票できない」。「説明し、わからせる」ことが重視された選挙だったのではないだろうか。
端から見た感想にすぎないが、自信を持って政策を丁寧に説明する努力を怠ったことが良くなかった。
話は変わるが、6年前にやはり30歳で参議院選挙に立候補した女性を知っている。彼女とは、1年間だが同じ大学に在籍し、たびたび話をした。「学生保険部会」という日本最古の、一種の学生保険組合を運営するサークルに所属した。ぼくがお邪魔したとき、彼女はそこの部長だった。朝、運送会社で働いてから登校していた。議論において少し偏屈なところがなかったわけではないが、人の話をよく聞き、団体交渉に向かう姿勢は一貫しており、女性にしては言葉数が少なく、部員から信頼され、サークルの運営は盤石だった。
この年、幸運にも倍率の高い、箱キャン(同志社大学函館キャンプ)の参加者に同時に選ばれ、ここでも同じグループで活動することになった。華やかさはないが存在感があり、感じの良い人だった。当時の栞を見ると、好きな言葉は「ありがとう」、将来の欄には「大きくなる」。
彼女は文学部でありながら、関西で行われることになった松下政経塾の分校の1期生に選抜された。「受かったでー」と喜んで部室に入ってきたときのことが思い出される。
6年前の選挙は、風にも乗って大勝し、今年は逆風のもと、不人気な党で、とんでもない極左思想を掲げ、極左本流の支持を手堅く集めて、今日、再選を果たした。
現在動画サイトに残る国会での彼女の演説は、こんなに左だったかと思うほどぼくの考えからは遠いし(もちろん、6年前も支持していない)、声のトーンが高く、言葉数も多く、かつての姿は微塵もないが、今でも人としては、悪くないだろうと信じている。
彼女には、もっと勉強して左翼はやめろと、エールを送りたい。
実はこの年、神学部の同級生で、前述の学生保険部会でご一緒させていただいた聡明な女性がもう一人いる。頭が良いというだけでなく、素直で、性格の良い女の子だった。今回の選挙で当選を果たした自民党の衛藤晟一と瓜二つである。しかし、似ているのは顔だけではない。この人の弱者の立場に立ち穏やかだが率直に発言する姿勢が、やはりよく似ている。
衛藤晟一さんは、昨年5月、ラビア・カーディルさんが来日した際、懇親会でお見かけした。先月、広島へ来られ、お顔を間近に拝見した時にもこの感慨を新たにした。
こちらは不思議なほど近い。
国政選挙は意外に身近だと思った。