利休七則の続きを書くのを忘れていました(笑
申し訳ない…
と言うわけで、利休七則の第六回目、いちおうこれが最終回になります。
1回目「茶は服の良きように点て」
2回目「炭は湯の沸くように置き」
3回目「花は野にあるように」
4回目「夏涼しく冬は暖かに」
5回目「降らずとも雨の用意」
そして第六回目は、二つ一気にいきます。
「刻限は早めに」
「相客に心せよ」
この二つです。
なぜ二つかと言うと、「刻限は早めに」については結構アッサリいっちゃうからです。
では、そのアッサリな「刻限は早めに」から。
利休が生きた、450年ぐらい前の日本には、渡来人により時計が持ち込まれ始めていました。
有名どころでは、織田信長が時計を愛用していたなんて話もありますね。
でも、一般の人々はどうでしょう?
通常であれば、信長のような絶対権力者ならともかく、普通の大名にそのような代物が
手に入れられるはずもありません。
しかも当時の交通手段といえば、徒歩か馬、もしくは駕籠。
つまり、今の時代のように時間ピッタリに合せて行く事など困難の極みだったんですね。
だから、利休は敢えて「刻限は早めに」と言い出したのです。
亭主が頑張って考え抜いたもてなしの限りを味わい尽くすには、
やはり客人もすこし早めに現地についておく必要があったんです。
時間が早すぎれば亭主を焦らせる事になってしまい、もてなしに乱れが生まれます。
時間が遅すぎれば料理は鮮度や味が落ちてしまいますし、茶も美味しくなくなります。
だから、少し早いぐらいのほうが良い。
今の茶の湯では、だいたい15分前行動が目安とされています。
現代では5分前行動などは当たり前に言われていますが、
そもそもこの発想に至ったのは、利休の「客人の亭主に対する気配り」が元だったんです。
むしろ時間丁度に来ない人を「ルールを守れない人だ」とあざけるのは、あまり良い風潮とは言えません。
なぜなら、相手にも都合と言うものがあるのですから。
携帯電話があるから連絡ぐらい取れるだろう、と言うのが今の人の常識ですが
もし携帯電話が壊れていて、しかも電車が遅れていたらどうでしょう?
相手が遅れようが何だろうが、快く迎えて差し上げる事は、亭主の役目です。
客人も客人で、遅れないように努力するのが、客人の役目です。
ですが、それが形骸化してしまい、「時間にルーズな人は駄目だ」と言うのは
余りにもヒドイ話。
互いにもてなし合うのが本来の「刻限は早めに」と言う考え方ですから、
それが出来ないと言うだけで相手に対する見方を変えるのは、
本来あるべきではない姿でしょう。
刻限は早めに、とは、単に早めに着けばよいと言うだけでなく、
亭主が客人を、客人もまた亭主を、互いにもてなし合う考え方なのです。
利休百首には次のような句があります。
「釜一つ あれば茶の湯は 成るものを 数の道具を 持つは愚かな」
お釜一つあれば茶の湯は成立するのに、
色々な道具をひけらかさんが如く持ちまくるのは愚かなことだ、と諭しています。
つまり、「もてなしに無理があってはいけない」のです。
亭主と客人が互いにもてなし合うのが「刻限は早めに」と言う言葉ですから、
そこに無理を加えてはいけません。
もし相手が遅れた時は、「何か事情があるのだろう」と察してあげて、
来られた時に優しく迎えてあげる気持ちを大切にしてください。
さて、アッサリと言ったわりにはコッテリ書いてしまいましたが、
最後の一つ、「相客に心せよ」です。
相客とは、一緒にいらっしゃるお客さんのこと。
茶の湯では、その日招待したお客さんのことを「正客(しょうきゃく)」と呼び、
それに着いて来られたお客さんのことを「相客(あいきゃく)」と呼びます。
この「相客」に心配りが出来ないようではいけない、と言うのが「相客に心せよ」と言う言葉です。
どの業界でもそうですが、店員が1人でお客さんが複数の時、
1人の店員は店全体を見わたさなくてはいけません。
いつかの記事で書いたと思うのですが、葬式帰りで涙涙のお客さんが飲食店に入り、
無神経な飲食店の店員達は、隣の席のお客さんのために突如明かりを消して
大音量で「ハッピーバースデー」などと言い、バースデーケーキを持って行く。
そんな事が現実に起こっています。
相客に対する心配りが全く出来ていません。
たしかにお誕生日をお祝いして差し上げる事は大事ですし、
お店のマーケティングとしてもとても大切な事ですが
他のお客さんに対する心配りが出来ていない事は良くありません。
葬式帰りだけでなく、たとえば失恋の相談を友人しているお客さんがいたとして、
その隣の席でハッピーバースデーなんて言われてしまった日には…
失恋したばかりのお客さんは、「あの人は良いよね、幸せそうで」なんて感情になってしまいます。
物販の世界でも同じ事。
目の前のお客さんに気を取られすぎてしまい、他のお客さんが見えなくなると言うシーンをよく見かけます。
そのせいで、売れたはずのアイテムが売れなかったり、もしくは万引きが発生したり。
つい先日も、あるアパレルショップでそういったシーンを見かけました。
急いでいたのか、いくつかの商品を手に持ってレジ前でやきもきしているお客さん。
そのお店の店員さんは接客中のお客さんに気を取られてしまい、
レジ前のお客さんにまったく気付きません。
結果、レジ前のお客さんは3分ほど待ち焦がれた挙げ句、
商品をその辺に放って他の店にいってしまいました。
こっそりそれらの単価を見たところ、合計額8000円程度。
8000円のチャンスロス発生です。
ホテルサービスでも、然りです。
エレベーターに急いで乗りたがっているお客さんを見かけました。
ですが、その日そのホテルでは何かのパーティーがあったらしく、エレベーターは満員。
ホテルの従業員は、そこには1人もいませんでした。
目の前にはパーティーのお客さんばかりに映ったのでしょうが、
他にもいくらでもお客さんはいるのです。
もしホテルの従業員さんが1人でもその場に居合わせて、
パーティー帰りのお客さんを上手に誘導していれば、どうだったでしょう?
私は急いでいなかったので横でその光景を眺めていました(ちなみにパーティー客ではありませんでした)。
急いでいるお客さんは、結局5分ぐらいエレベーター待ちをするハメに。
相当イライラされていたのか、1人で重そうな鞄を持って右往左往。
結構高級なホテルだったので、そのお客さんはきっと
「心配りが成っていない」
と怒り心頭だったでしょう。
相客に心すると言う事は、いついかなる状況でも周りに気を配ること。
そして、自分自身の所作にも気を配り、どの角度から見られても決して恥ずかしい事のない
そういった動作を心掛ける事です。
笑顔で接客をする事は、誰でも出来る事です。
ですが、プロの接客者は笑顔だけでなく、あらゆる状況に柔軟に対応し、
周りの全てのお客さんに気を配ることが出来ます。
相客に心せよ、これをみなさんも常に心掛けて、日頃の接客にいそしんで下さい。
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