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映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 1933年ウォルター・ヒューストンが主演した「獨裁大統領」。就任したばかりの大統領が瀕死になる。そこに天から天使が降臨して大統領に憑依する。天使に操られた大統領が「正しい」と思うことを実行する。しかし、手法は独裁的でという展開。


 天使の憑依という設定はともかく(それが実にハリウッド的だけど)結構、リアルな話だった。「米国第一主義」「他国への軍事的な介入拒否」などなど。今に通じる話。それを推し進めるには独裁的な手法が必要というのも、なかなかリアル。

 こういう政治映画をしらっと作れるのがハリウッドの強み。もっとも、それに目がつけられて、ヘイズ・コードの誕生になり、戦後はレッドパージになった。それでも、映画でも政治を正面から描けるのはアメリカという国の基本に民主主義がキチンと根付いているから。


 作家ジョン・ル・カレ。映像化作品も多い人気作家。65年「寒い国から来たスパイ」(マーチン・リット監督)から、66年「恐怖との遭遇」(シドニー・ルメット監督)84年「リトル・ドラマー・ガール」(ジョージ・ロイ・ヒル監督)90年「ロシアハウス」(フレッド・スピーゲル監督)2001年「テイラー・オブ・パナマ」(ジョン・ブアマン監督)05年「ナイロビの蜂」(フェルナンド・メイレレス監督)11年「裏切りのサーカス」(トーマス・アルフレッドソン監督)などなど。

 「ナイロビ」「パナマ」「ドラマー・ガール」などでは共同脚本も担当している。


 そんな人なので、ハリウッドには距離を感じていながらも、映画人とは結構な付き合いをしていた。

 キューブリックやコッポラなどの名前も登場する。もちろん、彼らとは一緒に映画を作ろうという話で会っている。

 しかし、コッポラの場合など、ナパで脚本の共同作業などまでしたのに、企画が頓挫すると、まったく連絡がつかなくなる。ああ、これが映画の世界なのだと大人の対応するのが大物作家の余裕。

 キューブリックとは、のちにトム・クルーズ&ニッコール・ギッドマン共演の「アイズ・ワイド・シャット」の映画化の話を聞かされるが、結局、共同作業は行われれなかったそうだ。

 

 渋谷シネマヴェーラで現在特集上映されているのは「プレコード・ハリウッド」。30年代ハリウッドの興隆と共に、その倫理観のなさが問題になった。善良な市民に「悪影響」があるというのだ。

 そこで登場したのがヘイズ・コード。ヘイズ議員が表現の規制を打ち出した。ハリウッドのお偉方が仕方なく、それに従った。そのコードでは夫婦でも同一のベッドに入ってはいないというような厳格な規則が設けられた。

 今回の特集は、そのヘイズ・コードが敷かれる前の「プレ」コードの時代に作られた、奔放に表現されたハリウッド映画の特集。

 最初に観たのは伝説のグラマー女優ジーン・ハーロウ主演の「赤毛の女」。もちろんタイトルの赤毛の女とはハーロウのこと。この女性が次々にターゲットを決めた男を落としていくという悪女の話。


 まさに倫理感など、どこへ?という話。映画としては、女に翻弄される男の情けなさが笑いを誘う。そして、女のしたたかさ。ただし、伝説のセクシー女優は、あまり魅力的ではなかった。モンローのような儚い可愛さもない。美人でもない。30年代では、あれがセクシーだったのだなと時代の落差を感じた。

 ただし、パリに移ったラストのオチは笑える。したたかな女は国境をこえる!

 自民党の総裁選。小泉、高市、石破の3人に絞られてきたようだ。総裁選が始まってから、一段と注目度が高くなったのが、高市早苗。日本では女性首相など当分先なのかと思っていたけど、来る時は来るのだと思う。日本の政界については、女性議員の数が少ないと批判の的になっていた。しかし、これで女性首相誕生となれば、女性の社会進出のシンボルにもなるのではないか。

 アメリカでも、現役バイデンが離脱、思わぬ形でハリスが大統領候補になった。トランプとは支持率では拮抗しているので、結果は見えないけど、可能性は大きい。

 ヒラリー・クリントンは用意周到に初の女性大統領になるべく準備を進めていた。しかし、2004年には民主党の候補選びの段階で、思わぬ伏兵、経験のないオバマに敗れ、さらに12年の選挙では、勝利確実と言われながらもトランプに敗れた。

 その時出てきたのが「ガラスの天井」というフレーズ。見えない障害が女性の社会進出を阻んでいるのだというヒラリーの嘆き。しかし、ヒラリーのように戦略的ではないのに、ハリスは「初」に近づいている。


 安倍、岸田が現役だったときに次期首相として高市と考えた人がどれほどいたか。自民党の裏金事件がなければ、女性首相に、という流れも見えなかったと思う。高市早苗も「いつかは」と思っていたはず、でも、こんなに早くと思っていたかどうか。

 時代が変わる時はそんなものだと思う。そして、それでいいと思う、男だから、女だからは関係ない。その能力があるか、ないのかが大切なのだ。

 ただ、日本の場合は制度では遅れているけど、実社会では女性の地位は高い。レディファーストと、一見、女性に優しいそうに見えるアメリカ社会では、家庭に入ると女性の決定権が限定的。日本では家庭では女性が主導権を握っているのが実態ではないか。その意味で制度化する必要がなかった。

 かつて働いていた出版界では1980年代までは男性優先人事だった。女性ファッション誌でも男性編集長が当たり前。女性は「副編」どまりだった。しかし、それが10年程度で様変わりして、90年代後半には女性誌の編集長が女性が当たり前になった。

 誰が音頭を取ったわけではなく、自然とそういう流れになった。元々、編集という仕事は女性向き。自分の働いていた出版社でも、雑誌創刊時には数人しかいなかった女性編集者が10年も経った時には大勢を占めていた。男の子の比率を少しは高めようとしたけど、優秀なのは女性ばかり。世の中って、そういう形で変わっていくのではないか。

 グレン・パウエル、今年3本目の主演作「ヒットマン」が公開。大学教授でありながら、暗殺を請負っていた実在の人物がモデル。実話ベースと知らされなければ、こんな人いないだろと思うような奇想天外な話。

 オフビートさが売りのリチャード・リンクレーターが監督。リンクレーターが暗殺者のアクション映画?と訝る気持ちで観た。


「ヒットマン」★★★☆☆

 脚本はリンクレーターとパウエルが担当。パウエルには、それほど思い入れがある話なのだろう。

 今やハリウッドで一番の売れ筋といわれるパウエル。大きいバジェットのアクションだけでなく、こんな作品にも出ます、というアピールも、俳優としてはしたい。

 しかし、軽さが魅力のリンクレーターと、押しの強いパウエルの相性は良くない。リンクレーターとは、美形なのに、それが嫌いなイーサン・ホークとのコンビが最強。

 この役もホークがやれば、あんまりやる気のないアサシンが似合ったのではないか。それに、イマイチ冴えない大学教授も。


 作家ジョン・ル・カレの自伝。元スパイという経歴。自伝の前半はスパイ活動にまつわる話が中心。そして、後半は作家としての活動、それも、たくさん映像化されている人気作家らしく、大物映画人との交流が描かれている。

 最初にル・カレが映画界に関わったのは「寒い国から来たスパイ」の映画化から。この時の監督は社会派マーチン・リット。リットは出版前に原作権を獲得していたと聞き、映画との関わりがなかったル・カレは驚いたそうだ。


 もっと驚いたのは、映画の現場だったらしい。リットに主役が誰がいい?と聞かれ、彼はピーター・フィンチ、トレバー・ハワードと答えたそうだ。彼らの渋さが、ル・カレのイメージするスパイだったそうだ。

 しかし、それでは渋すぎるので、映画にならないと伝えられる。結局、主役を演じたのはリチャード・バートン。

 当時、バートンの妻はエリザベス・テイラー。しかも、彼らの結婚は暗礁の乗り上げていた。それゆえに頻繁にテイラーが撮影所に視察に来る。その度に混乱する現場が描かれている。

 映画の世界はこんなものなのかとル・カレは驚く。さらに、そんな状況で精神的に不安になったバートンは現場にル・カレの同行を求める。

 なんで僕が?と思いながらも、バートンや監督のリットの要請を受けロケ先の撮影現場へ。

 そしてクランクアップ。それまでにはバートンと監督のリットの関係は最悪になる。最後はリットがバートンに思い切り皮肉をいうシーンで終わる。 

 作家にとっては、摩訶不思議な映画の世界だったそうだ。しかし、その不思議な関係が、彼の作品が映画化されるたびに続くことになる。

 柳楽優弥と黒島結菜が共演している「夏目アラタの結婚」。柳楽が演じているのは児童保護士。黒島は連続殺人の犯人。

 死体をバラバラにする猟奇的な連続殺人。犯人は若い女。父親を彼女に殺された男の子が、まだ見つかっていない父親の「頭」の場所を知りたくて、彼女に手紙を書く。その時に使ったのは、保護士である柳楽演じる夏目アラタの名前。彼女から「会いたい」との連絡が入り、夏目は彼女に会いに行く。しかし、彼女の態度は頑なで、それを崩すために「結婚しよう」と罠をかける。


「夏目アラタの結婚」★★★★☆

 監督は堤幸彦なので、期待はしないで観た。この人の作品、個人的な査定では半分はダメな作品。器用にまとめているけど、心は打たない映画作家というのが、自分の監督観。

 監督への期待値が低かったので、意外なほど楽しめた。それは柳楽優弥と黒島結菜など俳優の魅力。

 特に黒島はよくぞ、この役を受けたなと思うような役。柳楽の不良ぽさもいいアクセント。観た後の感想では、柳楽と中川大志が入れ替わっても面白かったではないかと思った。あり得ない設定なのだけど、物語として見せる内容。

 

 映画化作品も多い人気作家ジョン・ル・カレ。「寒い国から来たスパイ」「リトル・ドラマー・ガール」など。

 この人が若かりし頃はスパイだったことは有名。イギリスはスパイ王国なので、サマセット・モーム、グレアム・グリーンなどスパイだった経歴が明らかになっている作家がいる。

 そのル・カレの自伝「地下道の鳩」を読んだ。前半は彼がスパイだった頃の記述や、その前歴を活かし、取材を兼ねて世界中の指導者などに会った話などが記述されている。登場するのはアラファトやサッチャーなど、世界を動かした要人。


 それしてもイギリスって、やっぱりジェームス・ボンドの国だなと思う。スパイがスパイであることが日常。まるで警官が当たり前に、そこにいるようにスパイがいることを公にしている。

 もっとも、もちろん彼らには守秘義務があって、ル・カレやグリーンなどが、小説という形で、スパイ活動を世に知らしめることを組織からは非難されているようだ。

 ル・カレのグリーン評もモーム評も辛辣。どちらもスパイとして能力は高くないそう。まして、モームが同性愛だったので、その問題もあったと書いている。

 

 三谷幸喜の脚本・監督の「スオミの話をしよう」。主役のスオミを演じたのは長澤まさみ。スオミには5人の夫がいて、スオミの失踪を機会に5人が顔を合わせる。しかし、彼らが知るスオミがまったく違う個性の持ち主。果たしてスオミはどんな女なのか?


「スオミの話をしよう」★☆☆☆☆

 世間では評価、人気の高い三谷幸喜だけど、個人的には、あまり好きな人ではない。確かに大河の「真田丸」「鎌倉殿」は面白かった。映画も初期の「ラヂオの時間」などは良いなと思っていたけど、近作がそんなに面白いと思ったことはない。

 長澤まさみは大好きな女優で、2003年の「ロボコン」で観た以降「深呼吸の必要」「涙そうそう」などの初期から現在まで、ほとんどの出演作を観ている。最近は「マザー」や「すばらしき世界」「ロストケア」など問題作でも見事な演技を見せて、成熟ささえ感じていた。 

 正直、三谷映画には期待できないけど、長澤まさみにハズレがあるとは思っていなかった。しかし、そんな淡い期待は見事に、無惨に裏切られた。20年以上、彼女の出演作を観てきたが、間違いなく、これは長澤まさみの最低作。

 西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一など男性陣も主役級を揃えているのに深みのない役柄。まあ、三谷幸喜らしいといえば、らしい世界。間違っても、ビリー・ワイルダーを尊敬しているなんて、言わないで欲しい。

 小室哲哉とか、成宮寛貴とか、スキャンダルが起こったときに、逃げるように「芸能界引退」を表明した人。その人たちが何事もないように、さらっと復帰しているようすを見ると世間は心が広いなと思ってしまう。

 特に小室に関してはNHKがお気に入りのようで、小室ネタをロングインタビューとか、ニュース枠ですら見かける。たしか、奥さんがくも膜下出血で倒れて、彼女を介護していた、介護士と関係があったとか。そんなことはどうでもいいけど、その時に奥さんの状況を「幼児のようだ」と表現したと記憶している。しかし、実際は奥さんはそれほどでもなく、小室の発言は不倫への抗弁だったみたい。

 成宮寛貴のスキャンダルはクスリがらみだったと思うけど、本人が「引退」したことでフェードアウト。しかし、本人は「元・成宮寛貴」として頻繁にネットに登場。いよいよ俳優として復帰するそうだ。


 芸能人で外に出ることで収入を得ている。ある意味公的な存在。それを承知で彼らは芸能人を生業としている。都合が悪くなると、一般人になり、ほとぼりが冷めると芸能人に逆戻りって、そんな勝手が許されるのだろうか。

 彼ら(伊藤健太郎などという人もいた)のことを好きでも嫌いでもないけど、そんな自己都合優先の人が、いい仕事をできるとは思えない。復帰していけないというのとではなくて、復帰するなら、記者会見でもして、それなりにケジメをつけるべきなのはないか?