下川裕治さんの旅本。何冊も読んでいる。最初に読んだのは、ユーラシア大陸を旅するエッセイだった。それまで書店で下川さんの本を棚でみたことはあるけど、基本、バックパッカー的な人だと思い込んでいた。
自分はバックパッカー・スタイルには興味がないので、参考にはならないなと手に取ることがなかった「ユーラシア」を読んだのは、列車で大陸を横断するコンセプトが面白そうだったから。
読んでみて、この人の旅本がたくさん出版される意味がわかった。旅の描写が的確というだけでなく、洞察が深い。「ユーラシア」では中国の奥地の話で、いかに役人が尊大な存在かを事細かく記述していた。
この人、徹底した庶民の人なのだ。ゆえに街で暮らす市井の人への目線はあたたかい。列車で働くおばちゃん、切符売り場のおじさんなどには優しい。(でも、いい加減な人には冷淡)
今回の本のコンセプトは普段、旅行者が使わない陸路の国境を越えてアジアを周遊すること。これがかなり大変。国境を越えるのは主にバス。時には国境までバスがなくて、歩いてわたることもある。
旅の始まりはタイからだったけど、すぐに隣国カンボジアに入る。今でも国境の一部では争いの絶えないタイーカンボジア国境。このやりとりが面白かった。やはり、東南アジア。国境を越えるには、役人に「袖の下」がいるのだ。
下川さん、潔白というか、それがポリシーなのだろうけど、その「袖の下」を使わない。それを使えば、もっと簡単に国境をわたることができるのに、それをしない。
読みものとしては、それで緊張感が生まれ、ドラマのあるエンタ的な旅物語になっている。自分なら、ちょっとムリな旅を下川さんがしてくれるのだ。
