池井戸潤、初期の「仮想通貨」。地方の企業城下町を舞台にした金融サスペンス。ラストまでハラハラ。 | con-satoのブログ

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 池井戸潤が2000年に発表して、吉川英治文学新人賞の候補になった「仮想通貨」を読んだ。


 舞台になるのは地方の企業城下町。ここに君臨する企業が発行した社債や社札をめぐる物語。 



 

 主人公は高校教師。夏休みのある日、教え子が夜に彼を訪ねて来るところから物語は始まる。といっても教師と生徒の恋愛には発展せず、金融絡みの話になる。

 

 彼女は中小企業の経営者の娘。しかし、父親の事業は破綻寸前。父親が取引先の多額の社債を抱えていることを知り、これを発行した会社に払い戻してもらえないかと考える。

 

 社会の教師なら、その知識があるのではないかと相談に来たのだ。まして、彼はプロパーの教師ではなく、前職は商社マン。

 

 二人はその社債を発行した木曽川上流にある企業を訪れる。その亜鉛を扱った企業は、この小さな街を支配していた。社債どころか、怪しげな企業通貨まで、街では出回っている。

 

 何の根拠もない企業通貨。街の人は嫌々ながらも、この怪しい通貨を受け入れている。しかし、何の担保さえない通貨。この企業の業績が怪しくなれば紙切れになる。

 

 さて、社債の行方は?という展開。

 

 池井戸潤、デビュー間近の作品。ここでは金融を扱っているけど、主人公は銀行マンではない。商社出身の教師。しかし、彼は商社時代に企業調査を専門にしていたので、企業経営の実態に詳しい、というのが、この小説のミソ。

 

 果たして、こんな悪徳な企業が、地方の街を支配しているなんてことがあるのか?モデルらしきものはあったのだろうか?


 普通に考えると、いくら地方でも一企業が仮装通貨を流通させるほどの影響力があるなんて考えられない。

 

 しかし、エンタメ金融小説としては、サスペンス仕立てで、最後までハラハラさせられる。


 池井戸潤はデビュー間もない時期から、完成されていた作家である、を実感した。