僕が最初に買った「第九」のレコードは、1962年、ダーレムのイエス・キリスト協会で録音された、カラヤンとベルリン・フィルの物だった。合唱はウィーン楽友協会合唱団だ。今思うにこれは、運命的な出会いだった。何故なら、ソロをとっているテノールのヴァルデマール・クメントとバリトンのヴァルター・ベリーの声が素晴らしいのだ。これほどの歌手は、普段なかなか聞くことはできない。喉から声が出ているのではなく、体全体と共鳴して腹の底から声が出ているという感じで、金管楽器にたとえるなら、こもった音ではなく、抜けた音なのだ。ヨーロッパの数々のオペラ劇場で腕を磨いたカラヤンが厳選した歌手だということか。

母が合唱が好きなので、NHK全国学校音楽コンクールのブロックコンクールをよく聞きに行く。10代の合唱を聞いていると、ういういしさや素朴さが感じられる。2008年の中学校の部の課題曲は、アンジェラ・アキが作詞・作曲した「手紙」だった。その年、実際に「手紙」を練習している中学校の合唱部を彼女が訪問して、生徒達と交流しているところがテレビで放映されていた。「手紙」は中学校の卒業式などでも歌われて、話題になったのではないだらろうか。この頃は、アンジェラ・アキというシンガーソングライターが身近に感じられた。アンジェラ・アキは、自分流にかってに解釈すれば、ピアノで弾き語りをするフォーク歌手だと思うのだ。ジョーン・バエズ系の歌唱をしている。アメリカでの生活が長かったと聞くが、当然アメリカの音楽から多くの影響を受けているのだろう。
以前深夜にテレビを見ていたら、「初音ミク」のライブの映像が飛び込んできた。「初音ミク」のしなやかな体型、彼女のの躍動感溢れるパラパラのような(?)ダンス、周りの乗りの良いバンドなどについつい感心せられて、かなりの時間見入っていた。そして最近、たまたまテレビをつけていたら、「冨田勲」が作曲したフルオーケストラによる「イーハトーヴ交響曲」についてのドキュメンタリーをやっていた。コンサートに、この交響曲に必須のキャラクターとして「初音ミク」を登場させるということで、色々試行錯誤を重ねていた。これには少々驚いた。「冨田勲」といえば、僕たちの年代は、NHKの番組だった「新日本紀行」のオープニングテーマの作曲者だということが思いだされる。本当に名曲であり名アレンジだった。その後シンセサイザー音楽作家として活躍しているのは知っていた。そのような、最先端の音楽活動をしていた人だからこそ、「初音ミク」を登場させることは、何か必然性があったのかもしれない。