僕が最初に買った「第 九」のレコードは、1962年、ダーレムのイエス・キリスト協会で録音された、カラヤンとベルリン・フィルの物だった。合唱はウィーン楽友協会合唱団だ。今思うにこれは、運命的な出会いだった。何故なら、ソロをとっているテノールのヴァルデマール・クメントとバリトンのヴァルター・ベリーの声が素晴らしいのだ。これほどの歌手は、普段なかなか聞くことはできない。喉から声が出ているのではなく、体全体と共鳴して腹の底から声が出ているという感じで、金管楽器にたとえるなら、こもった音ではなく、抜けた音なのだ。ヨーロッパの数々のオペラ劇場で腕を磨いたカラヤンが厳選した歌手だということか。