予定の通り23コース目の治療を実施した。

Bevacizumab(ベバシズマブ)商品名:アバスチン
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を阻害して癌腫の血管新生を抑えることで
がん細胞そのものの増殖を抑制する薬剤。2003年頃から臨床試験が行われ
日本では2007年治癒切除不能大腸癌の治療薬として承認を得た。
オレの場合おそらく,この薬が奏効したため縮小・消失が起き,維持できている。

主な副作用は,消化管出血などでこれは,正常な微小血管の新生が阻害されるため
だと説明されている。つまり血管が脆くなってしまうわけだ。
これらは比較的軽い物が多く可逆性変化であるため,多くの場合休薬や減薬・対症療法で
改善されるらしい。
他に重篤な副作用として「高血圧」がある。高血圧症の発現機序には2通りあり
1つはVEGFを阻害することにより,血管弛緩物質の産生が抑制され高血圧をもたらす。
もう1つは,上にある微小血管新生阻害からくるもので,血管床が不足し抹消血管抵抗が増大し
高血圧をもたらす。血管の弾性が失われ高血圧を引き起こす動脈硬化などと同じ仕組みだが
まずいことにさらに血管が脆い。重くなると脳溢血や心血管の出血を起こすらしい。
これらが理由で,脳血管疾患や心疾患・高血圧症などの既往がある患者には慎重投与なわけだ。

その高血圧症が現れていた。
この夏,起き上がるだけで体温が上がり,全身から汗が出て次第に脂汗に変わり
暑かったはずなのに寒気がして頭痛がし,だるくなる。
検査のたびに「軽い貧血があるくらいで心配はない」と言われてきたが
実際はこのとき既に高血圧症を来していたんだ。
血圧測定を怠っていたことで発見が遅れたが,これで全て合理的に説明が付く。
変な話だが安心できる。

今回の治療から降圧剤が処方に加わり,血圧管理をすることになった。
降圧剤未投与,安静時の血圧は収縮期:167mmHg,拡張期:122mmHgだ。
アバスチン投与開始前(2012.04)の検査ではそれぞれ,110/75mHg程度で血管の柔軟性も良好だった。
今年の春頃までは血圧を測っていたのだが,その時点でも離床後で130/90mmHg程度だった。

アバスチンの長期投与によりオレの脳の血管は脆いうえ,1年前には放射線照射までしている。
猛暑のなか活動していれば,収縮期の血圧は180mmHgを超えていることもあったのではないだろうか。
頭が酷く痛む事もあったが検査の結果,出血の痕はない。良くもったもんだ。

今後,降圧剤が効果を見せなかった場合には,アバスチンを止めることになるかもしれない。
そうなるといよいよ,終わりの始まりだろうが,血圧は安定すると予想している。
心配はしていない。

今週,予定されていたとおり,22コース目が開始された。

治療前の血液検査の結果は,WBCが5000弱といくらか低めなほか
C反応性タンパクが0.3と正常値上限の数値だった。近い過去,身体のどこかで
軽い炎症が起きていたという事だろう。
この場合,現在WBCが低いことはむしろ好ましい。
その他、肝・腎機能にも問題はなく,治療可能ということになった。

各腫瘍マーカーについては,ずっと正常値の上限付近を推移している。
これまでの画像診断の結果でも,消失を維持・新たな転移の指摘なしということだ。

考えていたとおり,ひと月おきの治療サイクルに切り替えた。
医師には反対されたが「一月おきの治療が駄目だというならいっさいの治療を中止する」と
考えを伝えたら,再発・転移が確認されたら再考するという条件付きで,了承してもらえた。

これが吉とでるか凶とでるかと言えば,凶に出ると決まっているにしても
副作用は軽減されQOLは向上するに違いない。

商売柄、どんな時も費用対効果に考えがゆく。職業病だろうか。
命に優先するモノなど存在しない、という価値観もあるだろうが
今、手に残ったもの全てのバランスを保とうとすれば、オレの場合こうなる。
これでいいんだ。
化学療法は21コース目にして,副作用の増悪により休薬している。
ずいぶんと更新の間隔が空いたが,この間にも癌そのものの再発などはなく
検査の結果はすこぶる良好。が,この夏の暑さのせいか,薬そのものに対する反応か
倦怠感と食欲不振が酷くなり,医師との相談の結果,一ヶ月の休薬をしている。

PFSは,とうとう365日を迎え,MSTのまさに中央を通過している。
治療効果が十分にあったと判断するには,まだ12ヶ月あると言うことだ。
これまでの転帰から考え,オレの場合やはりMST付近で死亡するのでは無いかと
そう考えている。あと1年しか無いと考えるのか,まだ1年あると考えるのか。
来年の早い時期に再発し,治療法が無く秋頃に絶命するとすれば,自由に行動できるのは
せいぜい来年の初夏くらいまでか。

この先の経済的なことを考慮して,一ヶ月おきの治療に切り替えていこうかと考えている。
肝・肺,脳に転移しながらも,来年の7月には診断時から5年生存をクリアする。
十分に頑張ったのではないだろうか。
少し弱気すぎるだろうか。
先月の14日と22日の画像診断の診断レポートが出た。

まず,脳MR。(2/25の画像との比較)
右小脳転移巣は周囲浮腫ともに消失を維持。新病変・髄膜播種の所見は認めず。

次に,体幹CT。(3/18の画像との比較)
胸部:両側肺野に術後変化あり。腫瘍性病変を疑う所見なし。
   縦隔に有意なリンパ腫脹の指摘なし。胸水貯留なし。
腹部:肝・膵ともに異常なし。内外腸骨動脈領域に有意なリンパ節腫大の指摘なし。
   腹水貯留なし。骨盤骨に転移を疑う所見なし。

最終診断は,頭部・胸腹部骨盤ともに転移巣の消失を維持,新たな転移を認めず。
とのこと。予想通りの結果とは言え嬉しい。

当日の血液検査にも異常は無いため,無事17コース目が開始された。
血液検査に結果については,WBCが8000と良好な上
リンパ球が実数で2150,相対で27.1%。
まだまだいけそうだ。

陽気のせいか,少しだるさが強くなった気はするが
手掌・足底の痺れなどは薄れ,副作用らしいものは
手足の過角化くらいなもの。
これらも,冬場に比べれば格段に改善されている。

これが,最終ライン化学療法1年の成果。
今週,16コース目が開始された。

治療前の検査の成績はいつもの通り問題は無く
腫瘍マーカーについてはむしろ,これまでで最も低い値だった。

治療のあと,会計処理に時間がかかりそうだったので
昼食を済ませてしまおうと食堂へ行く途中の廊下で
消化器外科のN先生(主治医)と出会った。
職員食堂から出てくるなり,口をまだモグモグさせて早歩き。
かき込むように食べて,急ぎ外来へ戻る途中だったようだ。

オレ「先生こんにちは」
先生「おーおー!どお?」
オレ「おかげさまで無増悪で治療継続中です」
先生「こっちに薬は届いてる様子?」(自分の頭を指さし)
オレ「再発もなく,定位照射の前後で縮小が見られたようなので効いているようです」
先生「おーそれは良かった。今日も治療か,頑張ってね!」
オレ「ありがとうございます」
15秒位の会話が終わると,ダッシュで階段を上っていってしまった。
先生方の外来のある日のスケジュールは,相当詰まってるんだろうな。

一年を52週間とすると,17コースでおよそ1年間。
大型連休のたびに治療間隔にずれが出るので,オレの場合
計算上,今回で2年目に入ったことになる。
原発の手術から3年10ヶ月
再発転移し手術不能に陥ってから1年
脳転移の治療から9ヶ月
画像診断では癌腫を発見できなくなって8ヶ月

脳転移を来してからの生存期間は
多くの場合およそ10ヶ月だと聞いたが
オレは,もう少し長く生きそうだ。
来週,脳神経外科のサーベイランスがあるが
今回も新たな転移は見つからないのではないかと
考えている。